世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州日本語専門家の業務

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(バリ州地域中等教育機関)
吉岡ちさと

 みなさんは、バリについてどんなことを知っていますか。わたしはバリに来る前まで、バリについて何も知りませんでした。恥ずかしながら、インドネシアにあるということも知りませんでした。しかし、そんな私も今ではもうバリに来て2年経ち、やっとここでの業務、そしてバリのことがわかってきたかな、という気がします。

日本語教育事情

 バリ州では、ここ1年で日本語を教える高校は十数校増え、現在は175校近くとなっています。また、インドネシア人高校日本語教師の数は去年に比べて約60名も増えました。というのも、バリにある教育大学の日本語教育課程から第一期生がたくさん卒業したからです。

日本語専門家の業務

 日本語専門家の業務には、配属校勤務、高校日本語教師会支援、学校訪問などいろいろありますが、それについては2009年度のほうで紹介していますので、そちらを参照してください。今回は、前回紹介しなかった、またしきれなかった、小研修、定期学校訪問、日本人会とのネットワークについて簡単に紹介したいと思います。

小研修

 インドネシアは2学期制で、1学期(前期)はだいたい7月中旬から12月初旬まで、そして2学期(後期)は1月初旬~6月初旬となっています。そして、6月~7月にかけて、一番長い学期休みがあります。だいたい毎年その時期になると、バリ州教師会では若手教師を対象にした3日間程度の研修(小研修)を行っています。去年行った小研修では、教授法の授業、そして模擬授業を行いました。若手教師の多くは、大学で日本語/日本文学を専攻しているので、高校で教えるのには十分な日本語能力はありますが、教授法に関する知識はあまりありません。そのため、このような研修を通して、若手教師には教授法について学んでもらいます。

定期学校訪問

生徒たちが課題で作った五十音表の写真
生徒たちが課題で作った五十音表

 バリ島は隣にあるジャワ島と比べると小さく見えますが、東京の約2倍もあります。なので、バリ島を端から端まで移動すると3時間ほどかかります。そのため、毎週通う高校である配属校を選ぶ際、東のカランアッサム県、西のジュンブラナ県にある高校を選ぶことはできません。そこで考えたのが、それぞれの県の高校で教えている先生の学校に、せめて1カ月に1回でも訪問をし、それを5回継続して行い、日本語や教授法について指導するというものです。1カ月に1回とはいえども、ヒンズー教の祝祭日があったり、定期試験や学校の行事などがあったりと、なかなか難しいのですが、定期的に遠方地域に訪問することで、継続して指導できるだけではなく、県の教師会の活性化にもつながっています。 写真は、定期学校訪問している高校の生徒が課題で作った50音表です。すごいでしょう?!!

日本人会とのネットワーク

テレビ会議システムつかった交流会の写真
テレビ会議システムつかった交流会

 ここ数年、バリのウブド在住の日本人会の方が、バリで日本語を勉強している高校生や先生たちのために何かできることはないかということで、バリの高校生と歌の交流会を企画してくださったり、テレビ会議システムを使って日本の高校と交流するプログラムなど、いろいろなプロジェクトを進めてくださっています。

 写真にあるのは、日本語を勉強している高校生が日本の高校生とテレビ会議システムを通じて、料理や日本の文化について話しているところです。日本語でコミュニケーションするのはなかなか難しいのですが、準備してきた質問をしたり、絵を見せながらバリ料理であるバビグリンやラワールについて一生懸命説明したりしていました。

バリには外国人観光客が多いというイメージがあるかもしれませんが、観光地を離れれば、外国人が珍しいのが普通です。そのため、バリの高校生が、日本人と日本語でコミュニケーションする機会はなかなかありません。しかし、このテレビ会議システムを使えば、バリの高校生が同年代の日本人とコミュニケーションするチャンスもできます。そして、わたしの願いとしては、このような経験を通して、生徒たちの日本語学習へのモチベーションもあがれば、と思います。

これから

 今後、今よりももっと若手教師が増えて行くことが予想されますが、基礎研修や継続研修といった教育省が主催する研修に参加できる機会がある教師は非常に限られてくると思います。そのため、地域の教師会が中心となって、若手教師を対象とした研修を行っていかなければなりません。

 2010年4月にインストラクターレベルの先生たちのための中級研修が行われました。バリからは3名の先生が参加しました。中級研修では、教授法だけではなく、「リーダーとは」ということについて考えたり、ディスカッションをうまく進めるためのファシリテートについても考えたりしました。また、ワークショップの一つとして、教師会の活動を企画・立案するというものもありました。バリの先生たちは、このワークショップで若手教師のために、教授法とICT研修を組み合わせた小研修を考えました。今年度は、教師会活動の自立化を目標の一つとしているので、この先生たちが考えた企画を、自分たちの力だけで、実際に実行してもらえたら…と強く思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
担当地域であるバリ州では、普通高校・職業高校併せて、約175校の高校で日本語が教えられており、日本語教師も約210名いる(2010年5月現在)。日本語専門家の業務は、(1)配属校における日本語教育・教授法指導、(2)教師会活動支援、(3)高校日本語教師研修への出講、(4)バリ州の日本語教育に関する情報収集となっており、インドネシア全体では現在4地域へ4名が派遣されている。
所在地 Summitmas I, Lantai2-3, Jl. Jend Sudirman Kav.61-62, Jakarta
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1996年

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