世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) インドネシア中学校・高等学校日本語教師会 ―地域間ネットワークの形成―

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(ジャカルタ首都圏中等教育機関)
秋山 佳世

 インドネシアは「赤道にかかるエメラルドの首飾り」と呼ばれることもある、世界最大の群島国家です。面積は日本の約5倍。西のアチェから東のパプアまで、東西約5,000キロにわたって長く広がっています。国のなかに3つの時間帯があることからも、その広さを想像していただけることと思います。2006年の日本語教育機関調査によれば、インドネシアの日本語学習者は約27万人で世界第4位。そのうち約24万人が主に高校で日本語を学んでいる生徒たちで、高校で日本語を教えている先生方は約1,300人に上ります。その先生方および先生方が所属する日本語教師会がインドネシアの中等教育支援を担当する日本語専門家4名のパートナーです。そこで、今回は、国際交流基金(以下、JF)の「JFにほんごネットワーク(通称「さくらネットワーク」)」の中核メンバーである「インドネシア中学校・高等学校日本語教師会(インドネシア語名称Asosiasi Guru Bahasa Jepang Indonesia)」(以下、AGBJI)の活動についてご紹介します。

1.「インドネシア中学校・高等学校日本語教師会」設立

 インドネシアでは、2006年のカリキュラム改訂以降、中等教育(主に高校)における日本語学習者数が飛躍的に増加し、日本語教育が大きな都市だけでなく、地方へと広がっていきました。学習者の増加に伴って教師数も増加したのですが、一方で、教師の教授能力、日本語や日本語教育に関する情報量や知識、研修の機会などに差が生まれ、地域間の日本語教育の格差が広がることを懸念する声が挙がっていました。いくつかの地域では既に日本語教師会ができていましたが、今でも教師会がない地域や、活動が活発ではない地域もあるからです。

 そして、2007年10月にAGBJIが設立されました。設立の目的は、全国的なネットワークを構築し、インドネシアの中等教育機関の日本語教師に対して日本語教授力や日本語力を向上させるための機会を提供したり、日本語教師にとって有益な知識や情報を共有したりすることです。それにより、インドネシアにおける日本語教育の地域間格差を小さくすること、日本語教師の学び続ける意欲を高めること、そしてインドネシア全国の日本語教育を発展させることなどが期待されています。

2.眠りから覚めて・・・

 このようにインドネシア全国の期待を背負って設立されたAGBJIですが、実は2007~2009年は休眠状態でした。活動資金の獲得がうまくいかなかったからです。また、AGBJIの役員は全国にいるため、次の活動に向けて話し合いをすることも容易ではありません。しかし、そんなAGBJIを目覚めさせるきっかけとなったのが、2009年にJFのさくらネットワークの中核機関として認定を受けたことです。AGBJIは、今後の活動の第一歩として、「地域間ネットワーク形成研究シンポジウム(以下、シンポジウム)」の2010年開催を目指して進み始めました。これは、全国的なネットワークを構築することにより各地域の中等教育機関の日本語教師のニーズを把握し、今後の活動内容を計画したいと考えたからです。

3.「地域間ネットワーク形成研究シンポジウム」開催!

パネルディスカッションの写真
パネルディスカッション

 その後、約8カ月の準備期間を経て、2010年6月18日・19日の2日間、インドネシアの教育省語学教員研修所にて、AGBJIとJF共催のシンポジウムが行われました。インドネシア各地から高校日本語教師会の代表者(17地域、19名)と一般参加の日本語教師44名、実行委員13名が参加し、5つのテーマ(a.教授歴が長い教師の日本語力向上、b.教師のためのリソースの収集と作成、c.教授歴が短い教師の日本語教授力向上、d.教師のためのコンテスト、e.教科書準拠の問題集作成)についてグループディスカッションやパネルディスカッションなどを行いました。その結果、2011年以降、AGBJIは、1.教科書準拠の問題集作成、2.教授法研修、3.副教材作成などに取り組んでいくことになりました。地域別の日本語教師会では解決するのが難しい課題に対しても、全国組織のAGBJIならこんなことができる!と皆で確認できたことも、今回のシンポジウムの大きな成果です。

4.課題と展望

シンポジウムの発表者と実行委員の写真
シンポジウムの発表者と実行委員

 シンポジウムが終わった今、先生方は「AGBJIは全国の日本語教師のために!すべての教師は生徒のために!」という気持ちを新たにしています。さらに、将来的にはAGBJIが海を超えたネットワークになることも期待しています。大きなネットワークであるということは、AGBJIの強みである反面、弱みでもあります。国内だけを考えても、この広いインドネシアで大勢が協力して一緒に何かをするというのは、想像以上に大変なことだからです。情報の伝達・共有をするだけでもすんなりとはいきませんし、顔を見て相談したいと思っても移動にかかる費用や時間が問題になります。また、活動資金の獲得などこれから乗り越えていかなければならない課題も残されています。しかし、そんな厳しい状況でも、AGBJIのために自分の時間を割いて無償で働いている役員や実行委員の先生方には本当に頭が下がります。今後も先生方の意志が保たれるように、そして意欲のある先生が一人でも増えていくように、陰ながら力になれたらと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
2010年5月現在、ジャカルタ首都圏の高校では、405校で日本語が学ばれ(普通/宗教高校262校、職業高校143校)、290名の教師が日本語を教えている。日本語教育専門家は、ジャカルタ首都圏全域を担当し、インドネシア人高校日本語教師の日本語教授力および日本語力向上の支援を目的とした業務を行っている。具体的な業務としては、配属校勤務、高校日本語教師会・地域勉強会への協力、教師研修、教材の改訂等を行っている。また、ジャカルタ首都圏の業務だけではなく、ジャカルタ日本文化センターの業務(ニュースレターの発行、教師研修等)も一部担当している。
所在地 Lantai 2-3, Summitmas I, Jl.Jend.Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1995年

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