世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バリ州日本語専門家の業務 ~最後の1年~

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(バリ州地域中等教育機関)
吉岡 千里

 バリ州に初めて青年日本語教師が派遣されたのが1996年。そして、ついに2011年の今年がバリ州への専門家派遣、最後の年となりました。

 本サイト「世界の日本語教育の現場から」は2002年度から始まっていますが、それを古いものから順に読んで行くと、当時のバリの日本語教育の現状や現在に至るまでの変遷、そしてバリに派遣された青年日本語教師、ジュニア専門家の先輩方の奮闘ぶりを見ることができます。

 例えば、バリの日本語教育について言うと、2002年ごろに日本語が教えられていた高校(※1)は約90校であったのが、現在は2倍近くの175校となっています(バリ州全体の高校数は約330校)。また、日本語教師数も100名弱であったのが、今では240名と2.5倍近くに増えています。

 数だけの問題ではなく日本語教師の質も大きく変わっています。以前は、大学で他教科(生物、地理など)を専攻したり、民間日本語学校で数カ月~1年日本語を学習したり、または独学!で日本語を勉強したり、といった教師が多く、日本語能力が高校で日本語を教えるには十分ではありませんでした。

 しかし、2006年にバリ州の国立大学や外国語大学で日本文学専攻の4年制コース(S1)や、3年制コース(D3)から4年制コース(S1)への編入課程(2年課程)が開設されたり、教育大学でも日本語教育専攻の3年制コース(D3)が開設されました。そして、2009年以降、それぞれの専攻や課程を終え、多くの先生たちが教壇に立つようになったため、日本語教師が急激に増加しました。若い教師達は、大学で日本語または日本語教育を学んでいるため、以前とは違い、高校で日本語を教えられるだけの日本語能力は兼ね備えていました。しかし、教授法の知識についてはまだまだ不足していました。また、そのような教師達を指導するのに単発でその場限りの指導になってしまいがちな学校訪問では回らなくなってきました。

小研修の風景1(モデル模擬授業)の写真
小研修の風景①
(モデル模擬授業)

小研修の風景2(模擬授業の教案を書く研修生)の写真
小研修の風景②
(模擬授業の教案を書く研修生)

 そのため、今回最後の仕事として、ジャカルタでの中級研修を終えたインストラクター教師達と共に小研修を実施することにしました。昨年、バリからは3名の先生たちが中級研修に参加し、教師会活動企画・立案ワークショップで、若手教師を対象とした教授法とICTスキルを組み合わせた3日間の小研修の実施を考えていました。しかし、今回対象となる教師(まだ小研修を受けていない教授歴1~3年程度の教師)が80名近くにもなるので、バリを5地域に分け、1回2日間(週末)で教授法に焦点を当てた小研修を実施することにしました。

 インストラクター教師達は月曜日から金曜日まで自分たちの学校で日本語を教え、土曜日と日曜日は小研修に出講するという非常にハードなスケジュールになっています。しかし、ジャカルタで学んだことを還元したい、また若手教師育成のために貢献したいという気持ちで頑張ってくれています。

 現在までに3地域での小研修が終了しました。小研修に参加した教師達からは、非常に有意義であったという声が数多く聞かれています。また、インストラクター教師にとっても、ジャカルタでの研修を実践に移せる場となっているのではないかと思います。

 今後専門家が撤退した後も、若手教師はまだまだ増え続けて行くと思いますが、経験ある教師達が若い教師達を育てて行ってくれることと思います。

※1 普通高校及び職業高校

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
担当地域であるバリ州では、約175校の高校で日本語が教えられており、日本語教師は約240名いる(2011年5月現在)。2009年にバリ州にある教育大学の日本語教育課程から第一期卒業生が出て以来、日本語教師数が増えてきており、2年前と比べると教師数が100名近く増加した。また今後も増加していくと思われる。専門家の業務は、(1)配属校における教授法指導、(2)教師会活動支援、(3)高校日本語教師研修への出講、(4)日本語教育に関する情報収集である。インドネシア全体では現在3地域へ3名が派遣されている。
所在地 Summitmas I, Lantai2-3, Jl. Jend Sudirman Kav.61-62, Jakarta
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1996年

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