世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 私たちのレッスン・スタディ -全国教師会のワークショップに向けて-
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター
(中部ジャワ州地域中等教育機関)
東田 明希子
AGBJI(インドネシア中学校高等学校日本語教師会)では、年に1回教師を対象としたワークショップを開催しています。今年は先生たちから希望が多かった「レッスン・スタディ」に関するワークショップを開催することになりました。インドネシアにおけるレッスン・スタディは中学校の理数科教育を中心にインドネシア政府とJICA(国際協力機構)の協働によって広がり、現在では高校の理数科以外の教科にも広がりをみせています。
モデル授業の様子
中部ジャワ州、ジョグジャカルタ特別州の教師会は、レッスン・スタディチームを結成し、月に1回レッスン・スタディを行っています。これまで教師会で行ってきた模擬授業には、モデル教師だけに負担がかかり批判されるだけでつらいとの声も多かったため、今回行うレッスン・スタディでは「生徒も教師も楽しいと感じられる活動」「質の高い日本語の授業を生徒みんなに保障するための第一歩」「生徒の学びから私たちの日本語の授業の型を振り返る」ことを目指すことにしました。現在私たちが進めるレッスン・スタディは、教師の教え方を評価するのではなく、生徒1人1人に注目し、生徒の行動を通して深く考え、自分の授業を振り返っていく活動です。教師同士が同じ立場で意見を出すこと、教師目線でなく生徒の目線にたって考えること、授業の責任は参加者全員でもつということを常に意識しながら、先生たちと共に行ってきました。
現在も手探りで進めている状況ですが、先生の様子に変化が見られる様になってきました。ある先生は自信がないとモデル教師をするのを嫌がっていましたが、実際にやってみて「いつも教師の頭で授業を行っていたが、生徒の頭で考えていつもの授業にちょっと工夫を加えたら、学生の反応がいつもと全く違った。生徒の生き生きとした楽しそうな表情をみることができて、何より自分が楽しかった」と感想を述べてくれました。これをきっかけに、この先生の日々の授業が大きく変わっていきました。
活動を行う学生
つまらなさそうにしている生徒がいたら、どうしてつまらないのかを生徒の様子をよく見ながら考えます。分からないからつまらない、簡単すぎてつまらない、先生が説明ばかりしていてつまらない、それを考えることで自分自身の授業を振り返ることが可能になります。また、参加するメンバーの目を通して、モデル教師が気付かなかったことを新たに知る機会にもなっています。1人1人の生徒をよく見ることで、授業で行った練習や活動の問題や改善点が見え、それを次の授業につなげていこうと先生たちは日々努力をしています。回を重ねるごとにメンバーの先生たちに仲間意識が芽生え、モデル教師を評価するのではなく、どうしたら生徒ができるようになるか、楽しく感じられるかを考える機会となり、学びの場となっています。私自身も先生や生徒たちから学ぶことはとても多く、とてもいい機会になっています。
ワークショップに向け、これから発表の準備を始めます。学生から、モデル教師から、メンバーから何を学んだかを話し合い、さらにこれからの授業に役立てていってほしいと願っています。
派遣先機関名称 | 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(中部ジャワ州地域中等教育機関) |
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The Japan Foundation, Jakarta | |
派遣先機関の位置付け 及び業務内容 |
担当地域である中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州における中等教育機関において
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所在地 | Summitmas 1 Lt.2/3 Jl.Jend.Sudirman, Kav 61-62 Jakarta Selatan |
国際交流基金からの派遣者数 | 専門家:1名 |
国際交流基金からの派遣開始年 | 2001年 |