世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 活動的、革新的、創造的、効果的、そして楽しい授業を目指して

スラバヤ国立大学
松本 剛次

皆さん、こんにちは。インドネシアはスラバヤ国立大学に派遣されています松本剛次です。今回は2013年3月からスラバヤで開始された「Pendidikan Profesi Guru(教師養成特別課程:以下「PPG」)という教師養成プログラムと、現在、インドネシアでその実施が強く唱えられているPAIKEM(パイクム)という授業スタイルについてお話しします。 

PPG校舎外観の写真
PPG校舎外観

現在、インドネシアではより質の高い教育の実現を目指して、様々な教育制度改革が進行中です。PPGもその一環で、大学新卒者及び2005年8月以降に学校教師になったものはこの1年間の教員養成課程を受け、その後の試験に合格しなければ、教師にはなれないこととなりました。日本語の教師ももちろん例外ではなく、その第一弾が2013年の3月からスラバヤ国立大学ではじまっています。このプログラムのために新しい現代的な校舎も建設され(写真1)、大学側も非常に力を入れています。

このプログラムでは、前期はマイクロ・ティーチングを中心とした授業訓練が行われ、後期は学生達が高校等に教育実習生として赴き、そこで実際に授業を行いながらのアクション・リサーチが行われます。このようにPPGは理論や知識よりも、より実践的な側面を重視した教師研修と言えます。私は国際交流基金の派遣専門家として、このPPGでは日本語の授業と模擬授業を見ての助言、アドバイスを担当しています。日本語の授業も単に日本語を教えるだけでなく、その授業が学生達が自分で教える際のモデルとなるようなものに工夫しています。今後、このPPGで育った世代の教師がインドネシア全土に広がり、インドネシアの日本語教育(世界第3位の学習者数ですが、その95%は中等教育で日本語を学んでいる学生です)の質をより高めることを期待しています。

次にPAIKEMですが、これは「Pembelajaran Aktif, Inovatif, Kreatif, Efektif, dan Menyenangkan」の頭文字を取ったもので、直訳すると「活動的、革新的、創造的、効果的、そして楽しい授業」となります。どんな授業が望ましいか、それをキャッチフレーズ的に示したものと言えるでしょう。しかし、このPAIKEMは単なるキャッチフレーズや合い言葉ではなく、そのような授業を実現するためには何が大切か、ということも同時に提案されています。それは次の図のようにExpression(表現)、Interaction(相互作用)、Communication(コミュニケーション)、Reflection(内省)の4つ授業の中に取り入れそれらを組み合わせたり重ね合わせたりしよう、というものです。こうすることで生徒の「学習」がより深いものになる、単なる知識の習得に終わらず、生徒の「考える力」を高めて行くことができる、と考えられています。

Expression(表現)、Interaction(相互作用)、Communication(コミュニケーション)、Reflection(内省)の4つの組み合わせによるPAIKEMを解説した図

セミナーでの様子の写真
セミナーでの様子

私も今、大学や大学院での授業、そして現地の日本語の先生方を対象に行っているセミナー、勉強会を通して、このPAIKEMについて先生方や学生達と一緒に考えることに力を入れています。大学院の授業では『エリンが挑戦!日本語できます』のDVDを使いながらこのPAIKEM型の授業を考え、その授業のアイデアを国際交流基金ジャカルタ日本文化センターがインドネシアの日本語の先生方に向けて発行しているニュースレターである『EGAO』に投稿しました。また、東ジャワ州の大学の日本語の先生の集まりであるインドネシア日本語教育学会東ジャワ支部では、このPAIKEMの考え方を取り入れた漢字学習のビデオ教材を支部あげてのプロジェクトとして開発しています。その一環として2012年12月には漢字教育をテーマとして行われたセミナーの中で、ワークショップも行われました(写真2)。

このように東ジャワ州がインドネシアにおける新しい教員養成、新しい日本語の授業スタイルの発信地となるべく、現地の先生達といっしょに、私自身が楽しみながら活動しているところです。すぐには成果が出るタイプのものではありませんが、10年後、20年後に振り返った時に、「あのときのスラバヤでやっていたことが、今のインドネシアの日本語教育につながっているんだ」、と言われるようなものになれば、と期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 国立スラバヤ大学
The State University of Surabaya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
1981年国立スラバヤ大学(以下、「UNESA」)の前身スラバヤ教育大学に東部ジャワで初めて日本語プログラムが設けられた。1999年に総合大学へ改組。しかし現在でも教員養成的な性格は強い。2011年には、日本語教育・文学教育の修士課程も開講。2013年には1年間の教員養成特別課程も開講した。日本語上級専門家の業務は大学院での指導、コースデザインのアドバイスと、教員養成特別課程への支援が中心。また、地域業務として、域内の高等教育機関、中等教育の教師会へのサポートも行う。
所在地 Lidah Wetan, Surabaya, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語芸術学部外国語外国文学科日本語プログラム
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1981年
国際交流基金からの派遣開始年 1981年
コース種別
主専攻
現地教授スタッフ
常勤17名(うち邦人0名、3名留学中)
学生の履修状況
履修者の内訳   1年生は90名。2~4年生は各学年80名前後。
学習の主な動機 「日本文化への興味」、「日系企業への就職」、「日本語教師志望」等
卒業後の主な進路 中等教育の日本語教育機関、一般企業(日系企業を含む)
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
N3~N2
日本への留学人数 毎年数名

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