世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) インドネシアを代表する教育系日本語コースへ

スマラン国立大学
成田 高宏

派遣先機関の業務の概要

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校舎

スマラン国立大学の4年制日本語教育プログラムは、2005年に始まったばかりです。それまでは少数の教員が、3年制の観光プログラムを担当していました。2005年以降、科目数が大幅に増えたことにともなって教員も増員され、今では2けたを越えています。このように急激に成長したプログラムですから、全体を見渡して足りない部分を補っていく視点が、日本語専門家(以下、専門家)には求められます。教員は若い人が多く、専門家の意見を積極的に取り入れてくれるため、非常にやりがいのある職場だと感じています。

プログラム内の科目は、大きく分けて日本語科目と教授法関連科目があります。スマラン国立大学への国際交流基金からの派遣はまだ4年目ですが、教授法関連科目については、前任者が大枠を作りました。私の仕事は、その大枠に肉付けすることと、一方で未整備とされてきた日本語科目全体を見直すこと、そしてもちろん個々の教員の支援です。

教授法関連科目

弁論大会の写真
弁論大会

今学期は、学生による「模擬授業」が行われています。和気あいあいとした雰囲気の中、皆これまでに勉強してきたことを、生き生きと表現しています。日本語の先生になりたいと思って入学してきた学生がほとんどですから、前に立って話すことが得意な学生が多いようですが、中には落ち着いた感じで授業をする学生もいます。それぞれの個性を大切にしながら、専門家や教員の方々のコメントを参考にして、知識の引き出しを増やしていってほしいと願っています。

昨年度からは、スマラン在住の中等教育担当の専門家にも来てもらえることになり、貴重なコメントをもらえるようになりました。模擬授業が終わった次の学期には、学生たちは教育実習のために高校へ行くのですが、来年度からは大学の教員と高校教諭、専門家とが会合し、実習生の指導方法について検討することになっています。こういった良い連携を伝統に変えていけるようにと、試行錯誤しています。

日本語科目

赴任しておよそ3年、カリキュラムを改善し、新しい教科書を導入し、それらが機能するよう先生方を支援してきました。それが前回の日本語能力試験の結果などにも表れてきたことを、何より嬉しく感じている今日この頃です。実際、セメスター5でのN3の合格率は、インドネシアを代表する他の教育系大学と肩を並べるところまで来ました。

カリキュラムは、どこかを変えると他のどこかも玉突きのように影響を受けるもので、全体のバランスを取りながら変更を加えていく難しさを感じます。

たとえば、これまで『みんなの日本語』を学んでいる初級の期間は、「文法」「会話」の両科目で『みんなの日本語』だけを使用していました。今はコミュニケーション力を身につけることを目的として、「会話」科目ではクラス活動を中心とした授業を行っています。しかし、時間がないこともあり、そうすることで『みんなの日本語』内にある会話文や、会話で用いられる決まり文句などを学習する機会が失われます。そこで、『みんなの日本語』が終わった次の学期の会話科目では、ロールプレイを中心とした初級の別の教科書を使って、補うようにしています。

場合によっては単位数を増やしたり、今まで必修科目だったものを選択科目としたり、別々の科目だったものを統合して1つの科目としたりなど、コースの方針にも関わる提案をしていくわけですから、教員の皆さんの理解と信頼を得られるよう、日々の積み重ねが大切だと感じています。

カリキュラムと教科書は整備できてきました。あとはそれを機能させるためにも、新しい教え方を先生方にさらに磨いていってもらえるよう、サポートを続けたいと思っています。特に今学期は新しい教員を2名迎えました。彼女たちが独り立ちするための手助けが、今は大きな仕事となっています。

地域業務

月に一度、現地教員のみなさんを対象とした、教授法や研究方法などをテーマとした勉強会を開いています。赴任前は、専門家の講義が多かったのですが、今年からは地域の自立化を目差し、教員の方々の発表を増やすようにしています。参加者は市内の日本語主専攻が設置された大学の教員が主ですが、中部ジャワの別の都市にある大学から、はるばる参加してくださることもあります。

また、日本語能力向上のための勉強会も、配属先機関で週3回と、市内に2つある日本語主専攻のある大学でそれぞれ月2回と月1回、開講しています。配布プリントは日本語指導助手と2人で作り、もっといい授業にするためにはどうしたらいいか、授業後に話し合っています。

今年の7月には後任者にバトンタッチします。日本語指導助手も8月に新しい人と交代します。良い部分はさらに伸ばし、私たちが見落としていた部分は補っていただければと思っています。これまでスマラン国立大学と中部ジャワの日本語教育の発展のために知恵を絞ってきたつもりですが、それも、そうしたいと思わせてくれる環境があったからこそです。仕事の内容は変わるかもしれませんが、後任者のお二人もきっと同じように感じてくれることと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Semarang State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
スマラン国立大学は旧教育大学で、2005年に中部ジャワ・ジョグジャカルタ特別州地区で唯一の日本語教員養成プログラムを開講した。学生の意欲は高く、ほとんどが卒業後日本語教師になることを志望している。2009年からは資格不足の高校日本語教師のための2年制日本語教育プログラムを開始した。専門家は当大学教員と協働して、教授法関係科目および日本語科目の改善を行っている。また地域活動では、勉強会出講などの支援を行っている。
所在地 Kampus Sekaran Gunungpati Semarang 50229, Indonesia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語芸術学部外国語外国文学科日本語教育プログラム
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年 2005年9月
4年制日本語教育プログラム開始
国際交流基金からの派遣開始年 2009年
コース種別
4年制日本語教育専攻 2年制現職高校教師対象日本語教育専攻
現地教授スタッフ
常勤12名(留学中2名 実働10名)
契約講師2名
非常勤邦人1名
学生の履修状況
履修者の内訳   4年制1年生62名 2年生70名
3年生62名 4年生75名
学習の主な動機 高校の日本語教師を志望
卒業後の主な進路 高校日本語教師
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3程度
日本への留学人数 1名

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