世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本とインドネシアの文化をよく知ろう~にっぽんクエストの実施~

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(ジャボデタベック地区(ジャカルタ首都圏)中等教育機関)
古内綾子

インドネシアの日本語教育の特徴は、なんといっても、高校生の日本語学習者が非常に多いことで、それは、日本語学習者数872,411人のうち約95%が高校生を占めるほどです(国際交流基金2012年度日本語教育機関調査参照)。高校で日本語を教える先生は約3,000人いて、そのうち98%がインドネシア人教師ですので、それを見ると、高校生が日本語を勉強するとき、日本人と接する機会は少ない状況にあることがわかります。しかし、今、そのような高校の教育現場に日本語パートナーズ(以下、NP)と呼ばれる日本人のアシスタントが派遣されています。私が担当しているジャボデタベック地区(ジャカルタ首都圏)にも、2014年度に48人、2015年度に27人のNPが派遣され、日本語授業でアシスタントをしたり、日本文化を紹介したり、高校生と話したり、よさこいソーラン節を踊ったり、様々な活動をしました。今は、NPの派遣により、高校生や教師は以前に比べ日本をより近く感じることができるようになっています。

私の主な業務は、ジャボデタベック地区のインドネシア人日本語教師の支援で、先生を対象にした日本語や日本文化の教え方の研修などを行っています。今年は、NPが派遣され、日本文化の学習が活発になっていることから、体験や振り返りを通じて学ぶ文化の教え方をテーマにしたワークショップを実施しました。ここでは、その体験型文化学習のワークショップ「にっぽんクエスト」を紹介します。

新しい学習プロセスを取り入れた「にっぽんクエスト」

インドネシアでは、2013年に新しいカリキュラムが発表され、課題解決型の学習方法が授業に取り入れられるようになりました。知識を積み重ねるだけでなく、体験したり、分析したり、話し合ったり、生徒が積極的に学習に関わることが期待されています。このような課題解決型・体験型の学習プロセスを日本語の授業だけでなく日本文化の学習に取り入れたものが「にっぽんクエスト」です。

「にっぽんクエスト」に参加するのはインドネシア人教師ですが、そこで教師役となるのは、専門家の私ではなく、ワークショップ実行委員の教師(以下、実行委員教師)とNPです。「にっぽんクエスト」実施前に、2回の事前準備会議を行い、そこで、実行委員教師とNPは、私が行う模擬授業を体験し、教え方を学んだ後で、授業準備や練習を行いました。日々の学校業務がある中、2回の準備会議に片道2時間かけて参加する実行委員教師やNPを見ると、真剣に教え方を学ぼうとしている気持ちを感じました。

「にっぽんクエスト」実施 ~考える活動を通じて理解するお互いの文化~

当日は「おにぎりを作ろう」「防災」の二つのテーマの日本文化を体験しました。「おにぎりを作ろう」では、おにぎりの具は何か、なぜしょっぱいものが選ばれるのかをグループでディスカッションしたり、おにぎりを握って食べたり、おにぎりに似ているインドネシアの食べ物について考えたりしました。NPは「母が握ってくれるおにぎりから感じる愛情」について、自分の思い出を語ってくれました。

「インドネシアの食べ物で、おにぎりに似ている食べ物はありますか」と問いかけると「lemper」という答えが直ぐに返ってきます。しかし、両者の共通点をグループで話し合うと・・・「lemperとおにぎりは持ち歩いて食べる所が似ているけど、lemperは手間がかかるから自分では作らず買うことが多い。」「おにぎりはお米だけど、lemperはもち米を使う。」「食べ物の保存のためには、辛いものを使っている」など、違うところもあるという発見がありました。このように、両方の文化を比較し相違点や共通点を話し合う活動を通して、お互いの文化についてより深く理解することができます。これまでは、「おにぎりを握って食べる」という体験中心の文化紹介はよく行われていましたが、おにぎりづくりから、インドネシアと日本の習慣や考え方の比較まで行う学習はあまり行われませんでした。ワークショップに参加した教師は考える活動を通して、文化の違いに気づくおもしろさを感じていました。

インドネシアと日本。お互いの文化を丁寧に見て、違いや共通点など背景にあるものを考えることで深まる文化理解。NPが高校の教育現場にいることで、高校生や教師が日本を近く感じられる今、お互いの文化をより深く理解していくためにも、体験型の文化学習「にっぽんクエスト」を今後も実施していきたいと思います。

おにぎりの具についてディスカッションの様子の画像
おにぎりの具についてディスカッション

上手に握れた様子の画像
上手に握れました!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ジャボデタベック地区(ジャカルタ首都圏地域)の中等教育段階における日本語教育支援を担当。「学校巡回指導」「高校日本語教師会の支援(運営や勉強会・研修のサポート)」「高校教師向け日本語・教授法研修の実施」「教材開発」「情報誌執筆」が主な業務である。
所在地 Summitmas Ⅰ, Lantai 2-3, Jl. Jend Sudirman Kav. 61-62, Jakarta
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1995年

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