世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ゆく川の流れは絶えずして

インドネシア教育大学
太原ゆか

第43回日本語日本文化祭 習字コンテストの画像
第43回日本語日本文化祭 習字コンテスト

2017年5月、西ジャワ州スメダン県にあるパジャジャラン大学において、第43回日本語日本文化祭が行われました。西ジャワ州の日本語主専攻課程をもつ大学8機関が協力して運営しています。年1回ですから、43年前から行われていることになります。文化祭という名前ですが、スピーチ、作文、習字などさまざまなコンテストがあり、各大学から選りすぐりの精鋭が参加して、競い合います。

国際交流基金が2015年に行った海外日本語教育機関調査によると、インドネシアで日本語を勉強している人は745,125人で世界第2位でした。そして、そのうちの209,995人が西ジャワ州です。また、94.9%にあたる199,249人が高校生です。この人数、もちろんインドネシアで一番です。

こうした地域特性もあり、西ジャワ州には国際交流基金の専門家が30年以上派遣されています。具体的な仕事の内容はその時々によって、さまざまですが、「西ジャワ州の日本語教育を支援する」という基本姿勢は変わりません。2016年度からは「地域専門家」という立場で、西ジャワ州にある日本語教育機関全体を視野に入れた活動が求められています。

所属先であるインドネシア教育大学には、インドネシアで唯一、日本語教育学修士を取得できる大学院があります。教育学部を卒業すれば、高校までの教員になる資格が得られますが、修士号があれば、有利になります。また、大学で日本語を教えるためには修士以上でなければなりません。そのため、西ジャワ州近郊だけでなく、インドネシア全土から、学生が集まってきます。インドネシアの日本語教育の未来のために、質の高い日本語教員を育成することが最重要課題です。

もう一つ、大切な仕事があります。それは、現役の日本語教員の質を高めることです。

日本語教授法コンテストの画像
日本語教授法コンテスト

2017年3月、インドネシア教育大学で、日本語教授法コンテストが行われました。西ジャワ州内の高校教員が考えた『革新的な』日本語の教え方を競うものです。もちろん、「効果的」であることは必須条件です。スマホなどでインターネットを使った勉強方法や新しいカリキュラムに沿った教え方など、いろいろなアイディアが紹介されました。

このコンテストには、大学で新しい理論を勉強したばかりの若い先生だけでなく、教授歴●十年のベテラン教員まで幅広い世代の参加がありました。一度「先生」の立場になると、日々の雑務に追われ、教え方を工夫するのはなかなか難しいものですが、西ジャワ州では向上心あふれるベテランの先生方にけん引され、若手の教員も積極的に情報交換し、日々、努力を続けています。

教育の成果は一朝一夕に生まれるものではありません。40年以上にわたる日本語教育の成果が今、インドネシアで一番という「数」の実を結んだのです。今後は、この「果実」をいかにおいしいものにするか、つまり、「質」の向上を目標に活動を続けていきたいと思っています。

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