世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)広がれ!にほんご人!~「インドネシア ミニJSキャンプ」~

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター (中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州中等教育機関)
五十嵐裕佳

「にほんご人フォーラム」とは

2012年に始まった国際交流基金とかめのり財団との共催の「にほんご人フォーラム(以下、JSフォーラム)」は、東南アジア5カ国の日本語教師と高校生を対象にした、年に1回2週間程度の教師研修・相互交流プログラムでこれまで日本とマレーシアで開催されてきました。このプログラムは、中等教育における「にほんご人(日本語を話す人)」ネットワークを形成し、若い世代の相互理解の促進とグローバル人材を育成することを目指しています。これまでの5年間でインドネシアからも合計で10名の高校日本語教師と、16名の高校生が参加しました。

「インドネシア ミニJSキャンプ」を開こう

JSフォーラム参加経験のある先生たちのその経験を、どのようにインドネシアの他の先生たち、ひいては生徒たちに共有してもらえばいいだろうか…。」これを国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(以下、ジャカルタセンター)で検討した結果、彼らのうちの7名にファシリテーターを勤めてもらい、防災をテーマにした2日間のワークショップ「インドネシア ミニJSキャンプ(以下、ミニJSキャンプ)」を開くことになりました。

インドネシア各地に散らばる7名のファシリテーターには、2016年8月にジャカルタセンターに集まってもらい、「JSフォーラム2016」で渡日する教師と生徒を対象にした事前ワークショップに参加してもらいました。そのワークショップのファシリテーターはジャカルタセンター所属の日本語専門家と現地講師で成る中等支援チームです。7名には参加者としてファシリテーターの様子を見てもらい、活動のどの部分を誰が担当するか決めてもらいました。つまりは、その事前ワークショップと全く同じワークショップを、ミニJSキャンプとして行ってもらうということです。

その後、各ファシリテーターには自らの高校にて生徒を相手に担当部分を何回か実施してもらい、私たち中等支援チームは実際に授業見学に行ったり、活動報告を読んだりして、内容に対してフィードバックを行いました。また、7名の先生は距離的な問題でなかなか会えないため、主にSNSを使用しての準備ミーティングを行っていたようです。

インドネシアミニJSキャンプの画像
インドネシアミニJSキャンプ

そして、2016年12月に私の担当地域である中部ジャワ州の州都スマランにファシリテーター7名が集い、スマラン近郊の高校教師と生徒を対象にした本番と全く同じ流れのリハーサルを、まず行いました。リハーサル後には7名のファシリテーターと中等支援チームで内容の振り返りを行い、本番がよりよいものになるように準備を進めました。そして、インドネシア各地から集まった高校教師と生徒を対象とした本番が開催されましたが、ファシリテーターたちはリハーサルの反省を活かしたとても素晴らしいワークショップを創り上げてくれました。閉会式でのファシリテーター7名の満足そうな笑顔が忘れられません。

「ミニJSキャンプ」のインドネシア各地域への広がり

そして、現在、ミニJSキャンプはインドネシアの各地へと広がりを見せています。スマランでのミニJSキャンプの参加者はファシリテーターと同じ地域の教師を中心に選んだのですが、それは、中等支援チームの「ファシリテーターと協力して彼らの地域でもミニJSキャンプを開催してほしい」という思いからでした。

事実、その試みはうまく行ったようで、インドネシアの各地からミニJSキャンプの実施報告が中等支援チームへ届いています。私の担当地域でもジョグジャカルタ州教師会と中部ジャワ州のマゲラン地域教師会がミニJSキャンプを開催し、私も準備から振り返りまでコンサルティング面で支援を行いました。

ゴミ袋でカッパを~マゲランミニJSキャンプの1コマ~の画像
ゴミ袋でカッパを
〜マゲランミニJSキャンプの1コマ〜

2017年3月に行われたジョグジャカルタでのミニJSキャンプは1日の日程だったので、4名のファシリテーターはまず2日間のミニJSキャンプの活動のどの部分を行うか決めることから始めました。時期的に高校生の参加が難しく、地域の日本語教育を学ぶ大学生にも参加してもらいましたが、彼らの反応も上々でした。続いて、2017年4月に行われたマゲラン地域でのミニJSキャンプは、トラブルでプロジェクターが使えない時間もありましたが、3名のファシリテーター同士で機転を利かせて乗り切っていたのが印象的でした。

どちらのミニJSキャンプも参加者の反応は上々で、ファシリテーターにとって大きな自信につながったのではないかと思われます。振り返りの際に反省点はあったものの、ファシリテーターが口々に「楽しかったです!またやりたいです!」と言っていたのがこちらも嬉しかったです。

このミニJSキャンプの実施を通じて、ワークショップやセミナーを実施する際には、その成果共有がスムーズに進むように「インドネシア人高校教員が講師を務めるなら」「時間も予算も限られた各教師会で行うには」という視点を忘れてはいけないということに改めて気付かされました。

今後も、広い広いインドネシアの、なるべく多くの日本語教員、ひいては日本語学習者に支援を届けることを意識して、業務に携わっていこうと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター派遣の中等教育機関担当日本語専門家として、中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州を担当し、主として以下の業務を行っている。
  1. (1) 学校訪問
    1. 授業見学と日本語教育に関する指導、情報収集
    2. 校長先生に対する日本語プロモーション活動
  2. (2) 地域教師会支援
    1. 教師会が実施する勉強会、研修等の活動への支援、情報収集。
    2. 教師会会長等、地域の核となる人材の育成
  3. (3) 高校教科書開発とその広報ワークショップの実施
  4. (4) “日本語パートナーズ”派遣事業を含む基金及びセンターが実施する日本語事業への協力
所在地 The Japan Foundation, Jakarta, Summitmas Ⅰ, 2-3 Floor, Jl. Jend. Sudirman Kav.61-62, 12190 Jakarta, INDONESIA
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年
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