世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)スマトラ島での日本語教育支援(3年目)
国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(西スマトラ州地域 中等教育機関)
三本智哉
「WE ARE BORN!『にほんごキラキラ』」
昨年のレポートで私は「新しいカリキュラムに沿った高校生向けの教科書3学年分の原稿がほぼ完成し、いよいよ新学年度に出版される運びとなっています!」と書きましたが、2016年6月に国家カリキュラムの修正版が出たため、新学期での出版はできませんでした。その後のほぼ1年間に我々教科書チームは、修正版に合わせた課の入れ替え作業を行い、新しい写真やイラストを選び、出版社から出てくるゲラの直し作業を重ねてきました。そして、この原稿を書いている今まさにインドネシアの大空の真下に長男(buku1)が生まれ出ようとしていてます! 教科書の名前は『にほんごキラキラ』です。この「キラキラ」には2つの意味があります。1つは、好きなこと興味のあることに接した生徒の瞳が輝いている様子を示す日本語の「キラキラ」。もう1つは、(教師から与えられた知識をそのまま覚えるのではなく)「これは一体どうしてだろうか?」と物事の理由やルール等を推測するという意味のインドネシア語:「kira-kira」です。
『にほんごキラキラ』誕生!
この『にほんごキラキラ』の普及に向けて、高校教師を対象とした全国教科書紹介ツアーを行っていく予定です。まず基本的なコンセプトや使い方のポイントを伝え、生徒としての授業体験や模擬授業をしてもらうことを通じてより効果的な方法を一緒に考えます。そして、生徒も教師もみんなが笑顔になる日本語授業がインドネシア中に広がっていってほしいと願っています。
「NP・CPなかよし物語」
2015年から西スマトラ州、北スマトラ州にも日本語パートナーズ(NP)が来てくれています。受け入れ高校の日本語の先生(CP:カウンターパート)のアシスタントとして、一緒に日本語を教えたり、日本文化を紹介したりしています。日本人がなかなかいない地域ということもあり、関係者にあたえるインパクトはとても大きいです。いてくれるだけでもありがたい存在で、実際大いに活躍しています。
それでも、本人達は自身が考える理想像や、前任者、活躍している他のNPと自分とを比べて、その違いに悩んでしまうこともあるようです。CPの方からも授業中にNPをどう扱ったらいいのか分からなかったり、言語能力や異文化理解の問題でうまくコミュニケーションがとれなかったりという声を聞きます。同じ地域にいる日本語教育専門家(以下、専門家)として、まずはNP・CP双方からの話を聞き、テクニカルなアドバイスもしつつ、今そこにある状況においてより良い変化を一緒に目指すことや、生徒に起こった変化に気づきNPとCPが同じ気持ちで喜びあうことが大切ではないかと伝えていくつもりです。
「急募? スマトラ愛を継ぐ者」
山の町から、海の街へ
2017年1月、朝霧が白金に輝く夜明けに、アザーンが響く高原の町「ブキティンギ市」から、インド洋に沈む夕陽が桃色空の街「パダン市」に引っ越しました。美しい自然や独自の民族文化だけでなく、どちらの場所にも情熱を持って日本語を教えている先生方がいます。そして、それは広大で多様なスマトラ島の他の地域も同じです。この島に派遣されてほぼ3年が過ぎたところですが、やはりジャワ島の主要な都市などに比べて専門家の派遣の歴史が浅く、専門家として日本語教育振興のためにすべきこと・できることがまだまだ沢山あると考えています。もう1年の任期もそれらに全力で取り組んでいこうと思います。そして、今後どうなるかまだ分かりませんが、スマトラへの専門家派遣が継続される場合は、同じようにこの島が好きになってくれる方、スマトラ愛を継いでくれる方が後任として来てくれたらとても嬉しいです。
派遣先機関名称 | 国際交流基金ジャカルタ日本文化センター (西スマトラ州地域 中等教育機関) |
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The Japan Foundation, Jakarta | |
派遣先機関の位置付け 及び業務内容 |
担当地域である西スマトラ州(および周辺地域)における中等教育機関において
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所在地 | SummitmasI Lt. 2/3 Jl. Jend. Sudirman, Kav 61-62 Jakarta, Indonesia |
国際交流基金からの派遣者数 | 1名 |
国際交流基金からの派遣開始年 | 2013年 |