世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)教師会と二人三脚で

国際交流基金ジャカルタ日本文化センター(中部ジャワ州・ジョグジャカルタ特別州中等教育機関)
岡本 拓

中部ジャワ州とジョグジャカルタ特別州は、ジャワ島中部に位置し、あわせて日本の九州地方ほどの大きさがあります。中部ジャワの州都・スマランは国内第5の都市として栄えている一方、ジョグジャカルタ特別州はかつての王朝時代の趣きを今なお残す国の保護地区として有名です。この地域は日本語教育分野においても盛んで、州内には大小10ほどの教師会があり、約200名の日本語教師が在籍しています。2州合同の教師会も設立されており、教師たちはみな日本語能力と教授力の向上に励みながら日々切磋琢磨しています。

勉強会で、めざせ日本語力アップ!

各教師会では、1~2か月に一度、教師向け日本語勉強会を開催しています。多くの教師が日本語能力試験(JLPT)の合格目指しています。教授歴が長い教師たちは旧制度のときに合格した者も多く、新制度導入以降、新しいレベルの勉強に励んでいます。勉強会は教師主体で開かれ、教師同士が問題集を持ち寄って解きあったり、日本語専門家が教師らのリクエストを聞きながら、現在のレベルに合わせた研修案を作成し、勉強会の講師を務めたりすることもあります。

ひとつになる、州合同教師会主催の高校文化祭

中部ジャワ州・ジョグジャカルタ合同教師会が主催するイベントの中で最大級のものが、例年1月ごろに実施される高校文化祭です。2018年は、ボヨラリ第3高校で開催され、ソロ地域の教師会が中心となり準備から運営まで行いました。この文化祭では、弁論大会、書道やマンガなどのコンテストが催され、州内各地から高校生たちが日頃の学習成果を披露します。弁論大会はジャカルタ全国大会の予選をかねているので、生徒も教師もひと際熱が入ります。ほかには文化体験ブースが設けられていて、ゆかたの着付け、書道、折り紙を楽しむことができます。

コンテスト受賞者に賞を授与する写真
合同教師会主催の高校文化祭で、コンテスト受賞者に賞を授与する会長、ユニ先生(写真右)

ワークショップ −多読のすすめ−

去る2月、ジョグジャカルタ教師会では、筑波学院大学の金久保先生を講師にお招きして「多読」のワークショップ(以下、WS)を行ないました。多読とは、単語や文法を気にせず、簡単な文章から読み始めて、楽しくインプットをくり返して身につける外国語学習法です。(NPO多言語多読)このWSに参加したほとんどの教師がこの日初めて多読を体験しました。そしてWS後半では、グループに分かれて多読用教材を作ってみました。初級向けの教材を作るには、使える単語や文法はごく限られてしまいます。そのかわりに、さし絵や写真をたくさん載せて、学習者が楽しく読みすすめられるようにするなど、工夫が必要になります。教材づくりを通して、教師たちは創意工夫しながら普段とはちがった視点から日本語をとらえて使うといういい経験ができたようでした。今後も、定期的にこのような機会を設けて、日本語力の維持・向上をサポートしたり、新しい学習法や教授法の紹介をしていきたいです。

教材を作成するジョグジャカルタ教師たちの写真
多読ワークショップにて、協力しながら教材を作成するジョグジャカルタ教師たち

これからのサポートのあり方

この地域には10年ほど前から日本語専門家のサポートが入っていることもあって、教師会にはすでにノウハウが蓄積されていたり、教師ネットワークが形成されており、組織として成熟期を迎えつつあると感じます。その一方で、次世代を担う人材の育成、自立化の促進が今後の課題として見えてきます。教師会と協力しながら、それぞれの課題解決に向け、サポートしてまいりたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Jakarta
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
中部ジャワ州およびジョグジャカルタ特別州における日本語中等教育の支援、教師会における人材育成とネットワーク構築のサポート、日本語パートナーズ事業への業務協力、ジャカルタ日本文化センターが依頼する事業への業務協力
所在地 インドネシア・ジャカルタ
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2008年
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