世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 希望に燃える新しい学科

ラオス国立大学
小久保ひろし、平岩ゆか

ラオスと日本語

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朝礼

 ラオスはタイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、中国に囲まれた東南アジアの内陸の国です。人口は約5百万人。1960年代から70年代にかけては青年海外協力隊が日本語を教えていました。ベトナム戦争終了後、ラオスは1975年から人民民主共和制となり、しばらくの間日本との交流も下火になりました。1990年代に入り、再び両国の交流が盛んになり、日本留学のための日本語準備クラスができたり、民間で日本語が教えられたりするようになりました。2001年にはラオス国立大学内にラオス‐日本人材開発センターができ、学習者数も次第にふえてきました。その後、2003年には同大学に日本語学科が設置され、本格的に日本語を学ぶ学生を受け入れることになりました。現在、ラオスでの日本語学習者は500人前後と推定されています。最近は首都のビエンチャン以外でも少しずつ日本語が教えられるようになってきました。

ラオス国立大学

 ラオス国立大学は今年創立10周年を迎えます。1996年にラオスで唯一つの総合大学として設立されました。ビエンチャン郊外のドンドックにあった教員養成大学のキャンパスのあとに、建築工学部、医学部、法律経営学部、人文社会学部等の8つの学部でスタートしたのです。それ以前のラオスには専門学校はありましたが総合大学はありませんでした。2000年には人文社会学部が社会学部と文学部に分かれました。日本語学科はこの文学部に所属し、2003年に中国語学科、韓国語学科、ベトナム語学科と同時に開設されました。そのほか、文学部には英語学科、フランス語学科、ドイツ語学科、ラオス語学科などがあります。学生は基礎教養課程と学部で通算5~6年間の大学生活を送ります。

日本語学科

文学部校舎の写真
文学部校舎

 設立の経緯について、日本語学科長の言葉を引用します。

 「日本政府はラオス政府やラオスの人々にいろいろなプロジェクトをとおして援助しています。それらのプロジェクトを効率的に進めるために日本語ができる人が必要です。ラオスには、まだ日本語ができる人材は少ないので、ラオス政府は2002年にその必要性に応えるためにラオス国立大学に日本語学科を設立することを決めました。(中略)ですから日本語学科で、ラオスと日本のかけ橋になる人材を育てることによって、これからラオスと日本がより一層理解し合えることをラオスの政府は期待しています。」

 このようにして2003年10月に日本語主専攻の学生を受け入れはじめてから、そろそろ3年が経過します。学生は1年生から3年生まで全部で50名近くになりました。学生は各県や省庁からの推薦や一般入試で選抜され入学してきます。学生はラオス国立大学に入学すると1年目は基礎教養課程で一般教育科目と外国語科目としての日本語を勉強します。2年生からは文学部日本語学科に進学し、そこで本格的に専攻語としての日本語を学びはじめるわけです。さらに上級学年になると、日本語だけでなく、文化、文学、歴史、経済、社会などの日本事情についても幅広く勉強しなければなりません。

 毎年3月にはラオス日本語弁論大会があります。日本語学科からも毎年学生が参加しています。今年は5人が応募し、そのうち2名が予選を通過して本大会に出場しました。また、本大会のスピーチに出場できなかった学生たちは、大勢の観客の前で日本語の歌や踊りを披露しました。弁論大会の準備の期間は、ちょうど大学の学期末試験や試験休みと重なってしまいますが、それにもかかわらず、スピーチの練習に教員室を訪れたり、歌や踊りの練習に集まったりと自分たちで積極的に取り組んでいました。この弁論大会にはいろいろな学校から出場者が集まっているので、学生たちにとってもよい交流の場になっています。

 また、今年はラオス語を勉強している日本人留学生と日本語学科の学生との初めての交流会が開かれました。教室で日本人の先生から日本語を習う以外に、日本人を話をする機会のほとんどない学生たちにとってとても有意義な出会いになったことでしょう。

 日本語学科は設立されたばかりのため、いろいろな困難をかかえています。例えばカリキュラムが未整備です。教員が不足しています。教材も不足しています。器材もあまりありません。そのため、いろいろな工夫をしています。(1)ラオス人の先生方と勉強会を開いています。(2)お互いに授業を見学して、どうしたらうまく日本語が教えられるか工夫しあっています。(3)ラオス語の辞書がないので、ラオス語と日本語の単語帳を作りました。(4)ラオスにはスーパーもデパートもありません。タクシーも電車も走っていません。ですから、学生たちに日本の社会の様子を理解してもらう努力をしています。(5)文学部の教室が足りないので、日本語の授業には、設備が整っていてビデオやテープレコーダーも使えるラオス‐日本人材開発センターの教室を使わせてもらっています。

 環境や施設に恵まれた国の学生のようには日本語の学習がどんどん進むわけではありませんが、ここラオスの学生たちも、ゆっくりながら日々着実に進歩しています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。専門家・青年教師は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ラオス国立大学
National University of Laos
ハ.所在地 P.O.Box 7322 Dong Dok Vientiane, Lao PDR
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   専攻:2003年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:16名、2年生:21名、3年生:11名
(2) 学習の主な動機 日本語が好き、日本への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだ出ていない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
卒業生はまだ出ていない
(5) 日本への留学人数 なし

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