世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 近隣国のリソースをラオスに活かす

ラオス日本人材開発センター(LJC)
平田 好

インドシナ半島の中心・ラオス

 ラオスは、タイ、ベトナム、カンボジア、中国、ミャンマーに囲まれた内陸国です。首都ビエンチャンを流れるメコン川の向こうにはタイが見えます。中心部から車で30分ほどの場所 にある第1メコン国際橋を渡ればタイです。また、2006年12月には、ラオス第二の都市・サバナケットとタイのムクダハンを結ぶ第2メコン国際橋が開通しました。ラオスとベトナムとの境には、チュオンソン山脈が南北に長く横たわっていますが、インドシナ半島の東西を貫く幹線道路も整備され、タイ-ラオス-ベトナムを結ぶ「東西経済回廊」が完成しています。今後、さらに近隣国との間の往来が激しくなり、経済的関係が深まっていきそうです。
 一方、日本語教育の歴史をふりかえると、ラオスは近隣国に比べて短い歴史しかありません。タイの日本語教育は半世紀以上の歴史があります。ベトナム、カンボジア、ラオスの3国では、1960年代に日本語教育が開始されましたが、戦争や革命によって一時中断したことがあります。そのなかでも、再開がもっとも遅かったのがラオスです。しかし、どのような分野でも、後発国ゆえのメリットを享受する方法はあるはずです。その方法を模索し、現地の日本語教育活動を促進することも日本語教育専門家の役割のひとつでしょう。
今回は、近隣国のリソースをラオスに活かした事例を報告します。

タイ語リソースを活かして

LJCロビーの写真
LJCロビー
LJC日本語コース授業の写真
LJC日本語コース授業

 まず、タイ語とラオス語が近似していることは、ラオス人日本語学習者にとって大きなメリットです。ラオス人の多くはタイ語を理解することができます。もちろん、政治体制が異なるため、文化・情報的に配慮しなければならない点も多くあります。しかし、タイにおける日本語教育の蓄積を、タイ語のまま、ラオスに活かすことができることは明らかです。
 ラオス日本人材開発センター(以下「LJC」)の図書館には、タイ語の一般書籍がたくさんあります。日本語コースの自習室では、タイ発行の日本語教育関連書やタイ日辞書、日タイ辞書も揃えていて、学習者も教員も参考資料として活用しています。
 また、タイの日本語教育関係者との交流が活発になっています。2006年10月には、タイ人講師をバンコクから迎えて、ラオス人教員のみを対象とした現職教師研修会を実施しました。ほぼ100%理解できる言語による講義とワークショップは、日本語学習経験も、教授経験も浅いラオス人教員にとって、大きな学びの機会になりました。

メコン川を越えて

 ラオス語は、ラオス国内だけではなく、メコン川の向こうに広がる東北タイ(イサーン)でも話されています。イサーン語は、文字を持つラオス国内のラオス語と少し違いますが、実際にはラオス語の一種と言えます。ラオス人教員は、日常話す言語で、東北タイの教員と意思疎通をすることができるということです。
 東北タイと連携した教師研修は、2006年10月、ウドンタニ県派遣のジュニア専門家と意見交換を行って以来、いくつかの企画を実施してきました。2007年1月には、「2006年度タイ中等教育日本語教師研修会」(土曜研修)の一部と、タイ国コンケン県のコンケン大学における授業見学に、ラオス人教員を派遣しました。その後、2007年3月、コンケン大学にて開催された「イサーン日本語教師の会」再開記念セミナーにはLJCの教員がそろって参加しました。そこでは、次回、ビエンチャンで教師研修が実施されるときには、東北タイからも参加することが約束されました。
 また、ビエンチャン市内の日本語教育関係者を中心に組織している「日本語教育研究会」の国外メンバーが増えています。2007年5月の勉強会には、東北タイから3名が参加しました。そして、同じく5月には、「土曜研修」参加のタイ人教員6名にLJCの授業を見学してもらいました。授業のあとの意見交換会では、中等教育と一般成人教育の違い、ラオス人とタイ人学習者の学習ビリーフの相違、そして授業の進め方等について、ラオス語で活発に討論がなされました。

近隣国の日本センターとの連携

 ベトナムとカンボジアには、LJCと同様の組織・日本センターがあります。この3国の日本センターは、現地大学の一組織であり、それぞれ日本語コースが運営されています。2006年には、カウンターパート(LJC日本語コース主任)と報告者が、ベトナム・ホーチミン市とカンボジア・プノンペンそれぞれの日本センターを訪問し、日本語コース運営についての情報・意見交換を行い、日本センター及び市内日本語教育機関における授業見学を行いました。
 また、2006年3月、ベトナム・ハノイにて「4日本センター日本語コース部連携プログラム」として現職教師研修会が開催されました。ベトナム人教員を対象としたセミナーに、ラオス、カンボジア、ベトナムの各日本センターに派遣されている日本語教育専門家が出講しました。そして、2007年には、ラオスに近隣国の日本語教育専門家を招聘して教師研修会を開催する予定です。

すべてはラオスのために

 これから、インドシナ半島における人物・物資の動きはますます激しくなっていくでしょう。インフラの整備によって近隣国がますます近くなっていること、日本からの投資が増えていることは明らかです。日本のリソースも近隣国のリソースも、すべてはラオスのために活かされるはずです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス国立大学の付属機関。国際協力機構(JICA)による技術協力プロジェクトとして、日本人専門家団が投入されている。国際交流基金日本語教育専門家は、「日本語教育分野運営指導」を担当し、カウンターパートとともに一般日本語コースの運営にあたるほか、任国の日本語教育基盤向上のためのアドバイザー業務を行う。
ロ.派遣先機関名称
Lao-Japan Human Resource Cooperation Center (LJC)
ハ.所在地 National University of Laos, Dong Dok, Vientiane, Lao P.D.R
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名、日本語教育指導助手:1名

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