世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) あせらず、たゆまず

ラオス国立大学
森西 志保子、 チャンタボン(伊藤) 令

初めての卒業生

 ラオスは、東南アジア諸国の中ではまだ学習者数も少なく、ノンネイティブの日本語教師もそれほど多くありません。現在、高等教育機関としては、ラオス国立大学文学部に国内唯一の日本語主専攻学科があり、5学年計75名の学生が日本語を学んでいます。
  今ちょうど、5年生(第一期生)が卒業論文の制作に励んでいるところで、今年8月には、待望の初めての卒業生が出ます。卒業生が、ここで学んだことを生かし、それぞれの道を力強く歩んでくれることを願っています。

学科を取り巻く環境

教員室での写真
教員室で

 学科では、ラオス人教師4名と日本人教師2名(国際交流基金派遣)の6名が、日本語や関連する科目を教えています。何しろ初めての日本語学科ですので、(当然ですが)日本語学科を卒業したラオス人教師はいません。現在いる4名の教師は全員、立ち上げ後に英語やロシア語、ラオス語などの他の学科から移ってきました。
  学科を取り巻く環境は、このほか、教師の待遇、設備、予算と、いずれも厳しいものがあります。例えば、学科専用の教室がなく、学期初めにはまず教室の確保から始めなければなりません。また、教員室には電話やファクス、ネットなどの通信環境もありません。
  ですが、このような限られた条件の中でも、学生は日々一生懸命日本語を勉強しています。学生の熱意と意欲に応えるためにも、現状を少しでも改善し、学科としての総体的な教授力の強化を図る必要があると考えています。

日本語学科としてのアイデンティティ

 日本語学科は、高度の日本語力と日本に関する深い知識を持つ人材を育成することを目的として、2003年に設立されました。日本語教育をはじめ、各分野における日本語の人材を育成する機関として、重要な役割を担っています。
  カリキュラムでは、設立の趣旨に沿うべく、専攻科目の日本語以外にも、日本の文化、歴史、文学、経済、日本語教授法などが開講されています。日本語のスペシャリストかつ日本学のゼネラリストを、という趣旨自体は説得力のあるものですが、実現はそう容易ではありません。卒業時における日本語力も含めた専門性をどう位置づけるか、具体的に方向付けをし、日本語学科としてのアイデンティティを確立していくことが今後の課題です。

日々の授業

授業風景の写真
授業風景

大学の授業は、朝8時に始まります。1コマ100分。月曜日から金曜日まで各学年のカリキュラムに沿って授業が組まれており、各教員5~6コマを担当しています。現在、文学部では学生の増加により教室が不足しているため、日本語学科の授業の一部は、同じキャンパス内にあるラオス日本人材開発センターの教室を借りて行っています。
 学生たちは授業開始のずいぶん前から、中庭やロビーに集まります。おしゃべりに花を咲かせる女子学生、授業の初めに行われる小テストの準備に余念がない優等生くん、友達から宿題のノートを借りて、ちゃっかり書き写している学生も・・・。

2代目として

 私たちは「2代目」派遣専門家・ジュニア専門家です。現在のところ、主たる業務は、学生に対する日本語の授業ですが、そのほかにも取り組むべき課題は山積しています。
  まず、将来的な現地化に向けて、ラオス人の先生が担当できる科目を増やすべく日本語能力・教授能力の向上に寄与すること。業務環境を整備し、教務・運営面でのシステム作りを行うことなどです。
  しかし、この国で“あせり”は禁物です。まず、体調の維持・管理が、外国人としてこの地に住む者だけでなく、ラオスの人々にとっても存外難しいのです。
  ラオスの人々は概して穏やかで、街中でも目と目が合えば、知らないもの同士でもニッコリ微笑みを交わします。ただ、のんびりしたこの空気感になれてしまうと、毎日が「サバーイ、サバーイ.(気楽にいきましょう)ボーペンニャン.(大丈夫、大丈夫)」と何ともしまりのないものになってしまいます。
  「あせらず、たゆまず」ラオスの日本語教育に少しでも寄与できるよう力を尽くしたいと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。専門家・ジュニア専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ラオス国立大学
National University of Laos
ハ.所在地 P.O.Box 7322 Dong Dok Vientiane, Lao PDR
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   専攻:2003年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   5学年計75名
(2) 学習の主な動機 日本に留学したい、仕事に活かしたい
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだ出ていない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
卒業生はまだ出ていない
(5) 日本への留学人数 2名(2007-2008年度)

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