世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 初めての日本語能力試験

ラオス日本人材開発センター
平田 好

自国で受験できる喜び

 2007年12月2日(日)、ラオスで初めての日本語能力試験(以下、「JLPT」と略す)がラオス国立大学ラオス日本人材開発センター(以下、「LJC」と略す)で実施されました。JLPTは、1984年に第1回が行われて以来、毎年1回、12月第1週の日曜日に世界一斉に実施されています。しかし、これまで、ラオスでJLPTが行われていなかったため、受験希望者は、隣国タイのバンコクやチェンマイの実施機関に出願し、受験旅行にでかけていました。それもごく一部のラオス人が可能なことであり、ほとんどは受験を断念していました。したがって、日本語能力の正式な認定証を持っているラオス人は極めて少数でした。

整然たる実施

 さて、2007年度JLPTには、ラオスから158名が出願し、当日141名が受験しました。12月2日は、ラオス建国記念日のため、パレードによる交通規制等が懸念されましたが、試験会場には、受付時刻よりもだいぶ前から、多くの受験者が緊張の面持ちで集まってきました。マークシートによる回答方式が初めての者も多く、受付で販売する鉛筆や消しゴムを買いに走る受験者もいました。しかし、受験者、監督員ともに初めてであるにも関わらず、関係者の皆様のご協力のもとに整然と試験を実施することができました。2007年12月2日は、ラオスの日本語教育史にとって記念するべき日になりました。そして、ラオス国立大学がラオス教育省、在ラオス日本国大使館をはじめとする関係機関と連携をとって、今後も継続的にJLPTを実施していく基盤ができたと考えます。

試験会場に向かう受験者の写真
試験会場に向かう受験者

3級試験会場の写真
3級試験会場

2年間の準備

 では、この実施までの経緯をふり返りたいと思います。
 2005年12月、大使館の担当官と日本語スピーチ大会の実施について打ち合わせをしたときに、そろそろ、ラオスでもJLPTを開催する時期ではないか、という話になりました。隣国のカンボジアが2006年度新規開催地として申請している、という情報も入りました。そこで、2006年1月に、大使館広報文化班の方々と、当時、ラオス国立大学文学部日本語学科に派遣されていた日本語教育専門家と筆者による意見交換を行い、2007年度における実施可能性を探るための調査を始めることにしました。
 まずは、「各日本語教育機関の学習者数動向」や「各級の受験可能者数」についてデータを収集し、「JLPTをラオスで開催する必要性」や「妥当な受験料」について、日本語教育関係者に意見を求めました。また、LJCでは、過去に独自の日本語能力検定試験を実施し、LJCによる認定証を発行していたので、その受験者数、受験料設定も参考情報としました。さらに、近隣国の実施体制、受験者数、受験料設定についても情報を収集しました。
 JLPTを実施することによって、日本語学習者の目標設定が明確になること、インセンティブになることが当然とみなされますが、認定証が社会的に認知されていなければ、お金と時間とエネルギーをかけて受験するひとはいません。したがって、JLPTの実施については、教育省、大学をはじめとするラオスの諸機関、ならびに在ラオス日本人社会のご理解が必要ということになります。そこで、関係者に対する協力の打診も始めました。
 大使館の担当官から、新規開催にあたっての申請方法、実施体制について、ご指導をいただき、打ち合わせを重ねた結果、6月には「LJCを実施機関とすること」「試験協力委員会を立ち上げること」が決まりました。

キックオフ

 2006年7月7日、LJCにて、試験協力委員会設立会合を開催しました。メンバーは、実施機関代表者としてラオス国立大学副学長、当地日本語教育専門家としてLJC日本語コース主任、文学部日本語学科学科長、そのほかの関係者として、LJC所長、元日本留学生会代表、在ラオス日本人会会長、そして大使館担当官、筆者の8名でした。担当官ならびに筆者より、JLPT実施の目的、内容、スケジュール、予算計画を発表しました。少なくとも100名以上の受験者が毎年見込まれること、受験料収入等により現地での実施経費を賄えること、LJCが試験実施に係る事務処理能力をもっていること、関係諸機関の協力が得られることを確認し、2007年12月の試験実施に向けての合意を得ました。そして、大使館より申請があげられた次第です。

新規開催地に決定、そして実施へ

 2007年2月、朗報が届きました。「2月1日に開催されたJLPT実施委員会にて協議の結果、ラオス(ビエンチャン)での新規実施が承認されました」と大使館を通じて連絡をいただきました。この決定をLJC日本語コース主任とともに喜んだと同時に、責任の重大さを再認識しました。その後、2007年6月に、第1回試験協力委員会を開催して、実行計画、実行予算計画の承認を得て、国際交流基金と契約を締結。その後は、JLPTの広報、願書の販売・受付、試験監督員の手引きのラオス語翻訳、監督員への説明会等々、さまざまな作業を行い、12月2日の朝まで、ありとあらゆる想定をしながら準備を続けました。そして、試験が無事実施され、2008年3月には、LJCにて1級から4級まで各級の認定証が合格者に手渡されるという、すばらしい結果となりました。
 最近、ラオスに進出する日系企業が急増(投資認可申請中も含めれば90社)していることもあり、今後はJLPTを受験して日本語能力の認定証をもったラオス人が確実に増えていくことでしょう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス国立大学の付属機関。国際協力機構(JICA)による技術協力プロジェクトとして、日本人専門家団が投入されている。国際交流基金日本語教育専門家は、「日本語教育分野運営指導」を担当し、カウンターパートとともに一般日本語コースの運営にあたるほか、任国の日本語教育基盤向上のためのアドバイザー業務を行う。
ロ.派遣先機関名称
Lao-Japan Human Resource Cooperation Center(LJC)
National University of Laos
ハ.所在地 Dong Dok, Vientiane,Lao P.D.R
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名、日本語教育指導助手:1名

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