世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 少しずつ芽が・・

ラオス国立大学
森西志保子 チャンタボン(伊藤)令

 立ち上げから5年半。ラオス国立大学文学部日本語学科(以下:日本語学科)も、ようやく、蒔いた種が少しずつ芽を出し始めています。

『漢字 だいすき!』

ノートの写真
『漢字 だいすき!』
授業の様子の写真
きれいに書けるかな

 日本語学科では2007年度より、それまでの「1+4カリキュラム」(教養課程1年+専門課程4年)から、1年次から専門課程に所属する「0+5カリキュラム」に移行しました。これによって、週に3コマだった1年生の日本語の授業が5コマになり、2年生からだった漢字の授業も1年生の後期から始めることになりました。

 以前は、『みんなの日本語』を主教材とした日本語の授業と、漢字の授業がそれぞれ独立して行われていましたが、今後は、主教材で勉強している課を後から追いかけるかたちで漢字を学習するほうが、より教育効果があがるとの考えのもと、漢字教材について見直しが行われました。その結果、自分たちで新しい漢字の教科書を作ろうということになったのです。日本語学科の第一期生で、今年学科の教員として採用されたP先生と昨年8月末から作業を開始しました。

 このP先生、去年卒業したばかりで、一見、まだお尻にカラがついていそうな先生の卵ですが、教室に入れば実に堂々と授業を進め、クラスの雰囲気作りも上手です。そして、仕事がすこぶる速い。「この表を、エクセルを使ってリストにしておいてください」とか、「表紙を何パターンか作ってみてもらえますか」とか次々にお願いしても、すぐに持ってきてくれちゃいます。そのうち私の作業の方が追いつかなくなり、時間かせぎのつもりで「今まで作ったところまでの最終チェックをお願いします。でも、急がなくていいですよ。来週中くらいで・・・」とか言っても、「いいえ、週末にチェックして月曜日にはお渡しします」とキッパリ。

 そして、なんとか2008-09年度後期の開講日までに仕上げることができました。P先生がいなければ、この教科書の完成はもっともっと先になっていたことでしょう。教科書の名前はいくつかの案の中から、「漢字 だいすき!」に決定しました。手塩にかけて作り出した教科書なので、「漢字1」「漢字2」じゃ味気ないのではと相談した結果です。

 現在、1~3年生が「漢字 だいすき!」を使っています。この教科書は、ラオスの学生が漢字学習を抵抗なく始められるよう、音訓や部首に関する導入部はラオス語でていねいに説明し、本編もそれぞれの漢字の意味はすべてラオス語で表しました。また、ただ字形を覚えるのではなく、主教材の復習になるような例文と、学生が興味を持ちそうなことばや表現を取り入れて、語彙として定着させることを心がけました。この教科書で勉強した学生が「漢字だいすき!」と言ってくれると嬉しいのですが・・・。学生や先生方の声を聞いて、今後も改良を重ねていきたいと思っています。

日本語スピーチ大会

 2009年3月 21日、首都ビエンチャンで、第6回日本語スピーチ大会が開催されました。教室の外で日本語を使って表現をする場が少ないラオスの学習者にとって、スピーチ大会は貴重な機会です。入賞すれば日本へ行く機会が得られることもあり、大会への出場、入賞は日本語学習者の大きな目標にもなっています。

 日本語学科は、今回幹事校として大会の準備・実施に携わってきました。そして、当日は7名の学生が出場。スピーチ初級、スピーチ中級、朗読のすべての部門で入賞することができました。

 今回初めて設けられた朗読部門では、出場者が詩や短い話をテンポよく朗読し、聴衆を楽しませてくれました。また、小学生の男の子が参加し、見事2位に入賞。会場を大いに盛り上げました。

 スピーチ部門では、出場者ひとりひとりが自分の経験や意見を力強く発表しました。ちなみに、日本語学科の入賞者のスピーチのタイトルは、道に迷った時の愉快な体験を取り上げた「迷子の田舎者」と、ラオスで初めて開催されるSEA-GAME(東南アジアスポーツ大会)をテーマにした「新しい一ページのために」です。

 さらに、アトラクションでは、各日本語教育機関による合唱や演奏があり、日本語学科の学生も「手紙~拝啓十五の君へ~」を熱唱しました。

 日本語スピーチ大会も6回を数え、出場者の背景やスピーチの内容からは、学習者の多様化と全体的なレベルの向上がうかがえます。ラオスは、中等教育機関や地方都市の大学ではまだ日本語教育が実施されていませんが、若者や年少者に潜在的需要があり、ラオス人教師が育ちつつある今、学習者の広がりに対応すべく、環境の整備に取りかかる必要がありそうです。

『エリンが挑戦!』に挑戦!

 2008年9月、4年生の11名が、DVD教材『エリンが挑戦!—にほんごできます。vol.1,2,3』(国際交流基金)のラオス語訳を完成させました。夏休みを利用し、ボランティアで翻訳に取り組んだもので、現在、番組としてラオス国営テレビで放映されています。

「日本文化」の授業

 「日本文化」という授業では、ラオス日本人材開発センターの文化交流・情報事業部の協力を得て、昨年度より体験学習を取り入れています。これまで、書道、茶道、日本料理、浴衣などのアクティビィティや日系企業の見学、大使館への訪問などが企画・実施されました。写真は書道に取り組む2年生です。学生の真剣な様子をご覧ください。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。日本語教育専門家・ジュニア専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ラオス国立大学
National University of Laos
ハ.所在地 P.O.Box 7322 Dong Dok Vientiane, Lao PDR
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家1名 ジュニア専門家1名
ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   専攻:2003年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤8名(うち邦人3名:1名はJENESYS若手日本語教師)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   5学年計90名
(2) 学習の主な動機 日本に留学したい、仕事に活かしたい
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、日系企業、進学(留学)
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3級と2級の間
(5) 日本への留学人数  

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