世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ボー・ペンニャン

ラオス国立大学
立花秀正 相馬森佳奈

ラオスという国

 東南アジアの国と言うと、立花はかつてマレーシアで6年余、相馬森はベトナムで3年間日本語教育に携わってきた。両名ともこれまでの経験から「南の国の人々はのんびりしている」ということは理解していた。

 しかし、ビエンチャンで生活しているうちに次第に分かってきたのは「ラオスの人々は とりわけゆったりしている」ということだった。仕事をしているうちに様々な場面でこのことを実感させられた。

念願の教室棟が完成

 今年度と今までとの大きな違いは文学部日本語学科の教室棟が2010年8月に完成したことである。これは日本の「草の根文化無償資金協力」により実現した。それまではラオス国立大学の敷地内にあるLaos Japan Human Resource Development Institute(以下LJI) の教室を借りて授業を行っており、教師、学生も移動が大変であった。教室棟が完成したことにより、学生が勉強する拠点ができ、授業時間外にそこで自習をしている学生もよく見かけるようになった。

 また、講師室と教室が隣同士になったため、教師と学生が接する機会が以前よりも格段に多くなった。これは教育という観点からみると非常にいいことである。

教室棟の写真
教室棟

教室棟の表示の写真
教室棟の表示

専門家の役割

 赴任して最初の大きな仕事は2010年12月5日の日本語能力試験の実施であった。受験者総数は123名(N1・5名、N2・17名、N3・40名、N4・21名、N5・40名)と他の国々からみれば微々たるものだが、試験の責任者として指揮を執るのは初めてなので、神経を大分使った。しかし、他校の教員の方々の協力を得て無事に実施することができた。

 2011年3月下旬には「第8回ラオススピーチ大会」が実施されたが、9月から毎月実行委員会の会議が日本大使館で開催された。

 私達の任務としては①大学の日本語学科の教師&学生のレベルを高めること、②ラオスの日本語教育に貢献することなどが挙げられるが、日本語能力試験とスピーチ大会の準備を通して、ビエンチャンにある他の日本語学校の教員の方々との交流を深めることができた。赴任初年度として、これは大きな収穫であった。

日本語学科の紹介

1年生の授業風景の写真
1年生の授業風景
講師室の先生方の写真
講師室の先生方

 新学期は10月から始まる。2010年~2011年は1年生20 名、2年生21名、3年生13名、4年生20名、5年生15 名の計89名が在籍している。教員は日本人3名、ラオス人8名である。

 授業時間は1時限目8:00~9:30、2時限目10:00~11:30、3時限目13:00~14:30、4時限目15:00~16:30となっている。

 教科書は「みんなの日本語初級I・II」「中級へ行こう」「中級を学ぼう」「J.BRIDGE」「新日本語の中級」「漢字だいすき!」(自主開発教材)などを使用している。

 学生たちは皆のびのびとしていて、明るい学生が多い。パーティーの時などは“Beerlao”をよく飲み、いつまでも歌と踊りが続く。

 タイトルの“ボー・ペンニャン”は、ラオスの人々がよく口にする言葉である。直訳すると「問題ない」となるのだが、大抵のことがこの一言で丸くおさまってしまう。しかし、それはそれとして、「勉強の時には“ボー・ペンニャン”精神を捨ててやろうよ !!!」とお願いしたくなる時もある。

日本の大学との交流

 専修大学、麗澤大学、Asia Pacific University、兵庫県の4大学(神戸大学、兵庫大学、神戸市立外国語大学、関西学院大学)等々の学生達の訪問を受け、交流会でテーマ発表、意見交換等々を行った。これにより日本及び日本人に対する理解を深めることができ、日本語学習に対する意欲が高まったのではないかと思われる。

日本語教育上の問題点

 大学を卒業後、「学んだ日本語をどう生かすか」という大きい課題がある。現在ラオスに進出している企業は30社ほどであるが、日本語人材に対する求人はそれほど多くはない。また学生の日本語力の問題もある。教室の外には日本語環境が整っていないので、日本語を話す機会も多くはない。したがって、会話力を伸ばすのに苦労している。

 日系企業に就職する先輩が徐々に増えてくれば、学生達の日本語の勉強に対するモチベーションも高くなると思われる。現時点では高いハードルであるが、実現を目指して、一歩一歩進んでいきたい。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
National University of Laos
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。上級専門家・専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
所在地 POBox:7322, Dongdok Village, Vientiane, Lao PDR
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2003年
国際交流基金からの派遣開始年 2004年
コース種別
主専攻
現地教授スタッフ
常勤11名(うち邦人3名)
学生の履修状況
履修者の内訳   5学年計89名
学習の主な動機 日本に留学したい、仕事に生かしたい
卒業後の主な進路 日本語教師、日系企業、ガイド、留学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3レベル
日本への留学人数 毎年3~4名

ページトップへ戻る