世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ラオスの日本語スピーチ大会

ラオス国立大学
立花 秀正・相馬森 佳奈

驚いたこと

 ビエンチャンに赴任して間もなく、「ラオス日本語スピーチ大会」の実行委員会の会議に出席した。予定されているプログラムを見て、非常に驚いたのはスピーチ以外のアトラクションや飲食店のテントに重点が置かれている内容だったからだ。

 これまでマレーシア、インド、中国でスピーチ大会に関わってきたが、この3国ではスピーチ大会はスピーチが中心だった。日本で経験したスピーチ大会もそうだった。だから、スピーチ以外のアトラクション&イベントに重点が置かれている「ラオス日本語スピーチ大会」には驚かざるを得なかった。

ラオスの日本語教育の現状

 ラオスの日本語学習者数は現在約500名で、横ばい状態が続いている。これは隣国タイと比べると非常に少ない。ラオスに進出している日系企業は約60社と少なく、日本語を勉強してもすぐには就職につながらないと考えているラオス人も多いようだ。

 このような背景があるので、スピーチ大会の時にいかに観客を集めるかに、スピーチ大会実行委員会のメンバーはいつも頭を悩ませている。日本語学習者が少ないのだから、いきなり日本語ではなく、まず日本に興味を持ってもらおうということで簡単な日本食販売のテントを準備したり、スピーチに出られない学生達にも発表の機会を持ってもらおうという趣旨で劇や歌などのアトラクションの時間を設けているというわけである。

運営方法

 ビエンチャンの日本語教育機関はラオス国立大学文学部日本語学科の他にラオス・日本人材開発センター(以下、LJI)など数機関ある。それらの機関の主に日本人教師と在ラオス日本国大使館がスピーチ大会実行委員会のメンバーとなっている。2012年3月24日に行われた「第9回ラオス日本語スピーチ大会」では立花が実行委員長を務めた。

 また、国際交流基金(以下、JF) 、ラオス教育省、ラオス国日本人会、ビエンチャン日本商工会議所、日本在外企業協会、JICAラオス事務所、在ビエンチャンの数多くの日系企業に後援をしていただいている。

スピーチ大会の詳細

 朗読、初級、中級、自由の4つの部門に分かれている。条件は下記の通り。

朗読部門:
年齢、国籍を問わず。まだ初級レベルには達していないがスピーチ大会に参加したいという人のために設けられた。1分程度の詩や文章を朗読する。
初級部門:
ラオス国籍、「みんなの日本語Ⅰ」修了レベル、日本滞在3か月未満。
中級部門:
ラオス国籍、「みんなの日本語Ⅱ」修了レベル以上、日本滞在6か月未満。
自由部門:
国籍、年齢、日本語レベル、日本滞在経験問わず。初級・中級のいずれの部門にも該当しない、在ラオス外国人や滞日期間が長い方たちにもスピーチ大会に出場してもらうことで、学習者の励みになるようにと第9回大会から新設した。

時間は初級、中級、自由の各部門は3分。

出場者一同の写真
出場者一同

選考方法&審査方法

 第8回までは原稿選考のみであったが、第9回からは録音媒体による二次選考を行った。出場者数は朗読10、初級8、中級9、自由4の合計31であった。

 当日の審査は日本大使館、JICAビエンチャン事務所、ラオス国日本人会、ビエンチャン日本商工会議所、ラオス元日本留学生会の方々にお願いしている。第9回大会ではJFバンコク日本文化センターの上級専門家にも審査員をお願いした。

第9回ラオス日本語スピーチ大会

飲食店のテントの写真
飲食店のテント

 第8回大会がスピーチ大会というよりもイベントになってしまい、スピーチ大会が霞んでしまったので、今回はスピーチ大会の参加者が報われるスピーチ大会にしようと、会場選定、諸々の準備を行った。そして、実行委員会メンバー全員の協力により、実りあるスピーチ大会となった。来場者は約500名であった。

 観客を集めるために、審査の時間を利用しての日本語の歌のカラオケ大会、くじ引き、飲食店テントの設置などを行った。

今後の課題 

 スピーチ大会を盛り上げるためにスピーチ以外のアトラクション、イベント等々をどこまで取り入れるかは議論の余地があるが、いずれにしても、現在の実行委員会の体制では人員不足である。「スピーチ大会の形式」と「実行委員会のメンバーをどうやって確保するか」は大きい課題である。

 スピーチ大会に関して、もう一つ気にかかっているのは、準備&運営のほとんどを日本人が行っており、ラオス人が積極的に関わっていないということだ。来年は第10回大会という節目を迎える。「日本語教育の自立化」という点を考慮すると、この点も徐々に解決していかなければならない。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
National University of Laos
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。上級専門家・専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
所在地 POBox:7322, Dongdok Village, Vientiane, Lao PDR
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家1名、専門家1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2003年
国際交流基金からの派遣開始年 2004年
コース種別
主専攻
現地教授スタッフ
常勤10名(うち邦人2名)
学生の履修状況
履修者の内訳   5学年計95名
学習の主な動機 日本に留学したい、仕事に生かしたい
卒業後の主な進路 日本語教師、日系企業、ガイド、留学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3レベル
日本への留学人数 毎年4~5名

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