世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 芽生え始めた年少者の日本語教育

ラオス国立大学
立花 秀正・相馬森 佳奈

ラオスの日本語教育の課題

ラオスはアジアの中では最も日本語教育が盛んではない国のひとつと言えるだろう。日本語学習者数はここ数年500名前後のまま横ばいで、日本語能力試験受験者数も130名前後で変化していない。学習者数が伸びないという悩みを抱えているのがラオスの日本語教育の現状であり、学習者数を増やすことが日本語教育関係者の共通の課題となっている。

そんなラオスの日本語教育学習者の中に、かわいい学習者が仲間入りした。

昨年9月に開校したばかりの私立の小学校で、子どもたちが日本語を学んでいるのである。

小学校の授業見学

建物
教室

さっそく学校を見せていただいた。

現在の在籍児童数は1年生が15名、2年生が4名ということで、まだあまり在籍児童数は多くはないが、とてもきれいな校舎で、教室も日本の小学校の教室のように設備が整っていた。壁には日本語や英語の教材が貼られ、子どもたちが休み時間に自由に見ることができるようになっていた。先生のお話によると、毎日午前中は通常の教科を学び、午後は英語と日本語を学んでいるということだった。

この学校はインターナショナルスクールでも、日本にルーツのある子どもたちを対象にした学校でもない。ラオス人児童のために「日本的な丁寧な指導」を目的として作られた学校だそうだ。学校行事には、運動会など日本人にとっては馴染み深いが、ラオスのほかの学校では見られない行事もたくさん取り入れられているようだ。

授業を行っている教室を見せていただくと、中では子どもたちが、先生が指で指し示す50音表を見ながら「あ」「い」・・・と言っていたり、動物のカードを見ながら口々に動物の名前を言ったりしていた。

普段見慣れている大学生とはまったく違う、小さな子どもたちが、小さな小さな席に座ってとても元気に日本語を学んでいる姿は、見ていてとてもほほえましかった。

協力できることは何か

子どもたちの元気な声が飛び交う教室に座りながら、考えた。「私たち日本語専門家にできることは何だろうか?」と。教えているのは日本語スピーチ大会などでいっしょに仕事をしているビエンチャン市内の私立の日本語学校の先生二人だ。彼らは日本語教師になるための訓練を受けていない。これまで自分で工夫して教えてきた。せっかく新しい小学校で教え始めるのなら、「私たちも陰ながら協力したい !!!」と強く思った。

<1>自分たちが作成した絵教材を提供して、子どもが楽しみながら学習できるようにしてもらう 

<2>私たちが持っている教授法のノウハウで児童対象の授業に使えそうなものをアドバイスする

相手と相談しながら、最初から背伸びはせずに、できるところから少しずつ実行していきたい。

将来への期待

ラオスで年少者を対象にした日本語教育機関は、数年前に日本語教育が始まったインターナショナルスクールに続き2校目である。まだまだ日本語教育が盛んとはいえないこの国で日本語を学び始めた幼い彼ら。周辺の国々に比べればまだまだ日本が「遠い国」であるラオスで、幼いうちから日本や日本語に触れる機会を持った彼らが、将来その経験をどのように活かしていってくれるだろうか。

彼らの将来とラオスの日本語教育の今後がとても楽しみだ。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
National University of Laos
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ラオス国立大学日本語学科は日本に関する専門家を養成するために設立された、ラオスにおける最初で唯一の日本語専攻の教育機関である。卒業生はラオス-日本関係の中核を担う人材となることが期待されている。上級専門家・専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
所在地 POBox:7322, Dongdok Village, Vientiane, Lao PDR
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ラオス国立大学文学部日本語学科
日本語講座の概要
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