世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)初めての教育実習

ラオス国立大学
本多倫子

ラオス国立大学文学部日本語学科は、2003年にラオスで唯一日本語を専門に学べる高等教育機関として創設されました。現在、ラオス全土から集まった70名ほどの学生が学んでいます。学生はだれもが卒業後に日本語を使う仕事に就くことを夢見ていますが、中でも印象深いのは卒業後に地元に帰って日本語を教えたいと語る学生が少なくないことです。

ラオスでは、まだ日本語教師の仕事は多くなく、卒業生の進路は官公庁や日系企業がほとんどですが、今後日本からの投資が増えるとともに、全国的に日本語ができる人材の需要も増え、日本語教師の仕事も増えていくと考えられます。実際、ラオス中部のサワナケット大学で外国語選択科目として日本語の授業が始まったというニュースは、そうした期待感を大きくしています。


授業の様子
実習風景

一方で、ラオス人日本語教師の多くが、駆け出しのときにとまどうのは「どうやって教えたらいいのか?」という問題です。教師養成のセミナーも一般的ではありませんし、まだ日本語を使える人が少ないラオスでは、まわりに教えを請うことのできる先輩教員がいないこともあります。  そこで、日本語専攻の学生に、教え方の基本を学んで実習も体験してもらおうと、今年度、学科創設以来初めてとなる教育実習を実施することになりました。

日本語学科棟外観
日本語学科棟

最高学年である5年生が、「日本語教授法」という授業で理論を勉強した後、実習準備に取りかかりました。教える文型を研究し、教案を何度も書き直し、オリジナルの教材を作り、まさに手作りの授業が完成。

実習前にクラス内でおこなった模擬授業では、笑いがあふれ、リラックスした様子の5年生でしたが、実習当日は、だれもがかなり緊張していました。しかし、いったん授業が始まってしまうと、学習者役を引き受けてくれた後輩たちを前に、堂々とした先生ぶりで先輩の面目躍如といった感じでした。

ラオスの学校教育では分野を問わず講義型の授業が一般的ですが、この日は教師と学習者のやり取りが活発におこなわれました。いつもは優しい先輩たちが、てきぱきと説明したり質問したり指示を出したりする様子に、学習者役の1年生はすっかり引き込まれ、まるで本当の授業のように真剣に耳を傾け、積極的に発話したり、うまく返答できない級友をみなが口々に助けたりする姿が見られました。参加した学生からは、楽しかった、たくさん日本語を話せた、気楽に質問ができたとプラスの評価が聞かれ、5年生の達成感も大きかったようです。

この経験がきっかけとなって、日本語学科の卒業生から日本語を学ぶ小さな輪が生まれ、そうした輪がラオス全土に広がっていくことを願っています。

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