世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ラオス国立大学日本語学科

ラオス国立大学
船本日佳里

ラオス国立大学日本語学科

現在学科には1年生30名、2年生24名、3年生18名、4年生16名の計88名が在籍しています。2003年に日本語学科が設立され、今年の9月には10期生となる学生16名が卒業予定です。

報告者は2016年12月に赴任しました。実はラオス国立大学日本語学科への赴任は今回が2度目の赴任です。1度目の赴任から6年、念願のこの地へ再びやってきました。

インターナショナルフードフェスティバル

インターナショナルフードフェスティバルの画像
インターナショナルフードフェスティバル

12月、赴任後すぐに文学部インターナショナルフードフェスティバルが開かれました。文学部には日本語学科を始め、ラオス語、フランス語、ロシア語など9つの外国語学科があります。毎年開催されるこのイベントでは、学生達が各国の民族衣装を纏い、文化紹介や各国料理の販売を行います。

日本語学科の学生は浴衣や法被を着て、巻き寿司やたこ焼き、焼き鳥を出店しました。調理の時間も先輩後輩相交じって和気藹々。赴任して早々、学生達と教室以外で関わり、彼らの素顔を見られたのはとても幸運でした。

交流会

2月には東京外国語大学、神戸大学の日本人学生との交流会がありました。

東京外国語大学のラオス語学科の学生との交流会では、ラオス人学生×日本人学生混合のグループ3班に分かれ、1週間のグループワークを行いました。ワークの内容は、キャンパスツアー、ラオス語での劇、キャンパス内インタビューです。同世代の日本人と接する貴重な時間。学生達は手を貸さずともあっという間に仲良くなっていきます。普段はとってもシャイな学生達が熱心に話し掛け、真剣に演じ、意見を交わす様子は、見ているこちらも嬉しく何とも言えない気持ちの良い時間でした。

スピーチ大会

3月には「第14回日本語スピーチ大会」が開催されました。日本語学科からは、朗読部門に4名、1分スピーチに3名、3分スピーチに1名が出場し、内4名が見事入賞しました。

ラオスのスピーチ大会は、主に日本語教育機関の日本人教師と在ラオス日本国大使館から成る実行委員会で運営されています。大会の半年前から開かれる実行委員会会議は、日本語教育関係者が一堂に会す貴重な機会となっています。ただ、大会の運営の殆どを日本人が担っているのがこれまでの現状であり、今後は更にラオス人を巻き込んだ形で開かれていく必要性を感じました。

ラオスの結

学科には現在7名のラオス人教師が在籍し、日本語と日本語関連科目を教えています。1名を除き他の全員が元々ラオス語やロシア語、英語が専門の先生方で、2003年の日本語学科設立後に日本語学科へ移って来られました。その苦労を知る者同士、先生方の団結は固く、まるで一つの家族のようです。

専用校舎ができ、ネット環境も整い、この6年で学科を取り巻く環境は随分良くなりました。しかし、教師の待遇面や学科の予算等は未だ厳しいものがあります。この数年は教師不足の問題も深刻です。

日本語の他に、専門であるロシア語やラオス語の授業も受け持ち、加えて大学の事務作業もこなす。

そんな忙しい毎日を送る先生方が唯一一息つけるのが昼ご飯の時間です。

昼休みの様子の画像
昼休みの様子

昼休みになると職員室の向かいの図書室にある大きなテーブルに集います。裏紙や古い包装紙を広げ、それぞれが持ち寄った弁当をシェアします。弁当はどう見ても一人分よりも少し多めの量、分け合うのが前提です。

食事が一段落すると歓談時間。最近の授業の様子や今後の予定、時事問題や身内のトラブルの相談まで。この昼ご飯の時間は日々の小会議の役割をも担っています。ラオスの人々が大切にしている「ヘットナムカン(共に働き)、キンナムカン(共に食べ)、スアイカン(助け合う)」の姿に日々学ぶばかりです。

勿論「自立化」という視点で見ると、まだまだ問題は山積しています。特に学科の教授能力の向上は長年の課題です。ただ、良くないからと急に茅葺きからトタン屋根に替えるようなやり方は当然望ましくありません。先生方と学生達に寄り添い、新たな柱の一つになり得るよう、残り僅かな任期ですが力を尽くしたいと思います。

What We Do事業内容を知る