世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 馬国日本語教育の一層の発展を願って

国際交流基金クアラルンプール日本語センター
浜田盛男、花井慎行、松原理香

地方にも盛んな日本語教育

 1995年に開設されたクアラルンプール日本語センターは、クアラルンプール市内アンパン通りのシティバンクタワーの30階にあります。クアラルンプールの新しいシンボルとも言われる世界一高いペトロナスツインタワーから東の方に歩いて約10分の所です。2002年4月にはクアラルンプール国際空港と市内を28分で結ぶ快速電車KLIAエクスプレスが開通し、空港からのアクセスも大変便利になりました。現在このセンターに私達3名の日本語教育専門家が派遣されています。

先生役の実習生2名が学習者達に会話文のモデルを示しているところの写真
先生役の実習生2名が学習者達に
会話文のモデルを示しているところ

 では、このセンター及びマレーシアを舞台として私達はどのような活動を行っているのでしょうか。以下、その概略をご紹介します。まず、学習者の支援においては、主なものとして一般日本語講座と弁論大会があります。

 一般日本語講座は、月曜日から金曜日までの平日午後6時半から8時まで、中上級レベルの学習者を対象に行っています。4つのレベルの日本語総合クラスと2つのレベルの日本事情クラスがあり、受講生は社会人が多く年齢別に見ると20代と30代が中心ですが、10代後半の学習者も50代後半の学習者もいて、中には大使館の日本語講座時代からずっと学習を続けている人もいます。私達にとっては教えるだけではなく教えることを通してマレーシア事情について教えられる場でもあります。

 弁論大会は、学習奨励の目的で行われていますが、7月下旬から9月末にかけてがマレーシアでの毎年恒例の日本語弁論大会の季節です。2002年度は、コタキナバルの地方大会を皮切りにクアラルンプール、イポー、ペナンの地方大会があり、それから全国大会、予備教育課程弁論大会と続きます。私達は、この中で特にクアラルンプール地区大会、全国大会、予備教育課程の大会で原稿審査員や質問者を担当したり大会の進行を手伝ったりしています。また、2001年度から始まったコタキナバル大会には審査員としても招かれています。

 次に、日本語教師の支援ですが、その主な活動には、マレーシア4地域対象の日本語教育キャラバン(セミナー)の実施、マレーシア中等教育の要となるレジデンシャルスクール(Residential School(RS) 全寮制中高一貫教育校)の日本語教育支援、日本語教師養成実習講座、通信講座等があります。

 日本語教育キャラバンは、2000年度から行われているもので、北部地域、東マレーシア地域、東海岸地域、南部地域の4地域を対象に日本語教育セミナーを行っています。内容は、日本語の文法と教授法をテーマとするものですが、新刊紹介や役に立つウェブサイトの紹介等の情報提供も随時行っています。

マラッカでの日本語教育キャラバンで熱心にメモをとる参加者達の写真
マラッカでの日本語教育キャラバンで
熱心にメモをとる参加者達

 このキャラバンに参加される先生方は大学の先生、民間の学校の先生、RSの先生、マレーシア人の先生、邦人の先生と多様です。そして、この参加者の多様性にどう対応するかが私達にとっての課題です。また、回数が限定されているので、取り扱える項目も限られています。そこで、具体的な一つの事例を通して、見方・考え方を身につけるということが大切になってきます。その意味でも、一方的な情報提供ではなく、グループワーク等を通して参加者が共に考えることがより重要になります。また、このセミナーはお互いのネットワーク作りのいい機会であり、私達にとってはそれぞれの地域の日本語教育事情を知るいい機会でもあります。

 レジデンシャルスクール(RS)の日本語教育支援では、2001年度までアクティビティー集作成ワークショップ、教科書作成ワークショップ、共通試験問題作成ワークショップを行い、RSの先生方に助言を行ってきました。2002年度は共通試験の本試験を行うということで、引き続きワークショップを行っています。

 日本語教師養成実習講座では、2002年度は11名の受講生がこの講座で学んでいます。華人系、マレー系、タミール系の人達がいて、多民族・多言語のマレーシア社会がクラスの中にも反映されていて、日本語教育を多言語・多文化の文脈の中で考え実践する絶好の場となっています。正確には、教師の支援というよりは教師の卵の支援と言った方がいいかもしれませんが、現職教師の参加者もいます。

 最後になりましたが、通信講座は地方にいらっしゃる先生方の日本語能力の維持と向上を支援するため行われています。今は郵便を利用して添削済み答案や講評を参加者に届けていますが、インターネットのインフラが整えば、インターネットを利用した通信講座というのも今後の検討課題ではないかと思われます。

 以上、私達の主な活動をご紹介しましたが、このように日本語センターでは日本語学習者の支援と日本語教師の支援の両方を行っています。それが私達の活動の大きな特徴だと言えるかもしれません。

 もちろん、これで全てというのではなく、この他にも基金の日本語教育事業の現地でのサポート(日本語能力試験、国際交流基金日本語国際センター及び国際交流基金関西国際センターでの研修参加候補者選考等)や外部からの問い合わせ電話や来訪者への対応等もあります。以前、「welcomeを日本語でどう言いますか。」とか「クアラルンプールで浴衣が買える所を知りませんか。」と言った質問の電話もありましたが、マレーシアでの日本語、日本語教育、ひいては日本の窓口の性格も併せ持つ日本語センターの役割を考えると、出来る限りこのような質問にも対応したいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 マレーシアでは、国立の全寮制中高一貫教育校であるレジデンシャルスクール(RS)で日本語が教えられているが、クアラルンプール日本語センターは教育省と協力しRSのアクティビティー集や試験作成のための集中キャンプを年数回実施する。また、マレーシア各地に点在する日本語教師を支援するため、専門家がマレーシア各地に出向いて研修会や情報提供を行う「日本語教育キャラバン」や、通信教育を実施する。中・上級者向け一般日本語講座の運営も行う。ニューズレター:『ブンガラヤ』発行。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Kuala Lumpur Japanese Language Centre
ハ.所在地 Suite 30.01, Level 30, Menara Citibank, 165, Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:3名

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