世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 『日本語センターの仕事って?』

国際交流基金クアラルンプール日本語センター
土井眞美(主任)、松原理香、花井慎行

 マレーシアが、日韓に学べとLook East政策を掲げ20年余、様々な機関で多くの方が日本語を学んでいます。そして、クアラルンプール(以下KL)に国際交流基金の日本語センターが開設されたのは1995年、日本語教育に貢献するための様々な事業を行っています。現在、日本から派遣されている日本語教育専門家は3名、辛くもやりがいのある事業に日々勤しんでおります。

 ここでの事業は、「日本語教育の支援・向上」という観点から、大まかに二つに分けられます。一つは日本語学習者への支援、もう一つは日本語教師への支援で、この二つは表裏一体の関係ですが、日本語教育の現地自立を促すという方針の下、後者に重点をおいた事業が中心となっています。

日本語教育キャラバンで、グループに分かれて活動を作成中の先生方の写真
日本語教育キャラバンで、グループに分かれて活動を作成中の先生方

 日本語学習者への支援として、センターでは平日夜に、「日本語一般講座」と「日本事情講座」を開講しています。これは、中・上級レベルの講座で、他の機関で初級を終えた方、留学経験のある方、趣味で勉強している方など、いろいろな方が集まります。多くは社会人ですが、今年度は、下は13歳から上は50代までの人が机を並べています。週2回のクラスでは、派遣専門家が現地の先生と組んでクラスを担当します。教案や教材作成、授業後の反省などを通じて現地の先生を指導することも、大切な目的となっています。

 「スピーチコンテスト」は、今年で19回目を迎えます。先ず、4つの地域で地区大会が行われ、それぞれの上位入賞者がKLで開かれる全国大会に集まります。出場資格は日本滞在が計1年未満ですが、日本に行ったことのない方のすばらしいスピーチを聞く機会もあり、自分のマレー語が恥ずかしくなることもしばしばです。

 今度は、「日本語教師への支援」の中からいくつか紹介しましょう。最初は、「日本語教師養成講座」です。日本語を教え始める、または教え始めたばかりの方、いわば教師の卵(雛?)を暖かく育てる時間です。今まではマレーシア人の先生のみを対象としていましたが、今年度からは、これからマレーシアで長く教えていこうという日本人の方も受け入れることにしました。この講座で共に学んだ経験が、それぞれの職場で役立ってくれればと思います。また、前期15回の内、数回の講義を公開講座とし、より多くの方に門戸を開くことにしました。

 次は、今年4年目の「日本語教育キャラバン」です。これは、KLに来にくい地方在住の先生のために、マレーシアをいくつかの地域に分け、私たちが出向いて行うセミナーです。東マレーシア地域ともなると、会場の町以外の先生は、みんな飛行機でやってきます。昨年からは、二日間のセミナーに統一テーマを設け、その中で、講義やグループワーク、発表を取り入れるようにしました。それに、最新の教材紹介も忘れてはなりません。遠くから来る先生方に満足していただけるよう、毎回準備には全力投球です。

東マレーシアのRSの授業風景の写真
東マレーシアのRSの授業風景

 「RSへの支援」も主要な事業の一つです。RSというのはResidential School(全寮制の5年制中高一貫教育校)の略で、全国に47校あり、小学校の成績が優秀な生徒だけが入学できます。現在、30校以上で、日本語は第2外国語科目として教えられています。さらに5年後には、9割の学校で日本語を導入する計画です。センターは今までに、いくつもの教育省の事業に協力してきましたが、立派なアクテビティ集も去年完成し、日本語統一試験も昨年10月に第1回を実施することができました。まだ確定してはいませんが、今後は教科書の改訂が、大きな課題になるのではないでしょうか。

 マレーシアの先生方の中でも、特に日本語・日本語教授能力の高い人を対象にした、「日本語プラットフォーム」という事業も始めました。各機関で中心的役割を担っている先生方にさらに研鑽していただく場を提供することで、日本語教育での中核となる人材を育成するとともに、ここでのつながりが、やがてはマレーシアの日本語教師のネットワーク形成の下地にならんことを望んでやみません。

 その他にも、地方の先生方に継続的に日本語を学習してもらうための通信教育、センターの事業を広く紹介するニューズレター「ブンガラヤ」発行、日本語関連セミナーの開催・支援、日本語教育機関の訪問・授業見学・情報収集などなど、センターの事業は多岐にわたります。常にマレーシア全体の現状を把握しながら事業を考え実行し、いつかは現地の先生方の自主的な運営に委ねられるようにする、それが、このセンターに与えられた使命でしょう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
マレーシアの各機関と連携し、日本語・日本語教育に関する幅広い業務を行う。特に、今後のマレーシアでの日本語教育での中核となる人材を育成することが大きな課題である。クアラルンプールでの日本語教育セミナーや教師養成講座とともに、地方在住の教師のために、通信講座や、専門家が出向して研修や情報提供を行う「日本語教育キャラバン」を実施する。また、教育省と協力し、レジデンシャルスクール(中高一貫教育校)の日本語教育にも、様々な支援を行っている。その他、中上級者向けの日本語一般講座運営、スピーチコンテスト実施、ニューズレター「ブンガラヤ」発行などの業務もある。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Kuala Lumpur Japanese Language Centre
ハ.所在地 Suite 30.01, Level 30, Menara Citibank, 165, Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:3名

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