世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等教育から見たマレーシアでの日本語教育支援

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
土井眞美(主任)、下橋美和、根津誠

 クアラルンプールはKLと呼ばれ、多様な文化と、歴史的建造物と緑の合間に摩天楼がにょきにょき生えている、活気にあふれた都市です。そのKL中心部にある当センター(以下JFKL)では、毎日さまざまな日本語教育事業を行っていますが、ここでは中等教育を中心に見てみましょう。

「日本文化の日」、折り紙に熱中する生徒たち
折り紙に熱中する生徒たち
-「日本文化の日」にて

 マレーシアの中・高校レベルの日本語教育は、レジデンシャルスクール(以下RS)と呼ばれる全寮制中等学校を中心に行われています。2005年4月16日に、クアラルンプール郊外のカジャンにあるRSで、全国のRSの教師と生徒の代表数百名が集まる、第5回「日本文化の日」というイベントが盛大に行われました。これは教育省が主催するもので、RSにおける日本語教育振興を目的に2年に一度開催されています。各校から8名ほどの生徒が参加しますが、教室での日本語学習の動機付けの一つとなっています。当日は日本の伝統文化を中心に、折り紙、書道、活花、凧作り、物語りなどのコンテストや、日本とマレーシアの民族舞踊、歌やスキットなどのパフォーマンスが繰り広げられ、生徒達が夜遅くまで熱心に練習した成果を披露しました。JFKLでは企画運営のサポートと、『すしテスト』や国際文化フォーラムによる『であい』を生徒に紹介しました。このイベントはすべてRSの日本語教師からなる実行委員会が運営・進行しており、彼らの日本語力、仕事への打ち込み方は、中・高校レベルの日本語教育が人材に恵まれていることを感じさせてくれます。

現職教師からなるシラバス作成委員会の写真
現職教師からなるシラバス作成委員会

 RSの日本語教育は、1984年に青年海外協力隊JOCV)によって6校で開始され、その後カリキュラムや教科書も整備されました。現在は、日本で日本語専攻の学部を卒業した現地教師によって、43校で教えられています。さらにこの2005年から全日制の一般中等学校13校でも日本語教育が始まり、今後も増える予定です。このような一般校での日本語教師の養成を目的に、タイや韓国で行われたような、他教科の現職教師を対象とした教師養成が、マレーシア教育省によって2006年1月に開始されます。これまで日本の大学に教員を送ることで日本語教師を養成していたのとは異なり、国内において養成を始めるという、大きな一歩です。また、中・高校の学習者のニーズに対応した新しいシラバスの開発が、教育省から任命された現職中等教員からなる委員会の手で進められており、これに合った教科書の改訂も期待されます。

JFKLではこれらのプロジェクトを積極的に支援していますが、それだけではありません。2004年度報告で詳しく述べた「現地教師ネットワークの中心となりうる教師の育成」や、自主的な研究発表会の支援にも力を入れています。マレーシアの現職教師が、こうした国内の研修機会や、日本語国際センターでの訪日研修を利用してステップアップを繰り返しながら、自分たちの手でシラバス・教材を作成し、後輩の教師もサポートしていく。そんな夢のようなサイクルが、少しずつ見えてきています。そのような場に居合わせたことに感謝しながら、私たちは今後も潤滑油として機能していきたいと思います。

(文責:根津誠)

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
マレーシアの各機関と連携し、日本語教育に関する幅広い業務を行う。特に、今後のマレーシアにおける日本語教育での中核となる人材を育成することが大きな課題である。クアラルンプールでの日本語教育セミナーや教師養成講座とともに、地方在住の教師のために、地方に出向して研修や情報提供を行う「日本語教育キャラバン」を実施する。また、教育省と協力し、中等教育機関における日本語教育にも、様々な支援を行っている。その他、プロジェクト対応型コンサルティング、中上級者向けの日本語一般講座運営、スピーチコンテスト実施、関係機関の情報収集、ニュースレター「ブンガラヤ」発行などの業務もある。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Kuala Lumpur
ハ.所在地 Suite 30.01, Level 30, Menara Citibank, 165, Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:3名

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