世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 中等学校の日本語教師が足りない!そこで…

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
坪山由美子・矢沢悦子・レイン幸代

クアラルンプール日本文化センターが力を入れている日本語事業の一つに、中等教育段階での日本語教育支援があります。支援は大きく二つに分かれ、一つはマレーシア教育省の主導のもとに実施されているシラバス制作および教科書制作への協力、もう一つは中等教員の新規養成プログラムへの協力です。ここでは、後者の2006年度から始まった新規養成プログラムについて紹介します。

マレーシア中等学校の日本語教師

1984年に国立全寮制中等学校(Residential School)で日本語が教えられ始めた当時、教師はJOCV(青年海外協力隊)派遣の日本人教師のみでした。その後、日本語科目設置校の増加に伴い、1990年から初等・中等学校教師を日本の大学に留学させ、マレーシア人日本語教師を養成するプログラムが企画され、日本語教師を育てていった結果、1999年からはマレーシア人教師のみでの教育に移行しています。そして、現在日本語教育実施校は国立全寮制中等学校だけではなく国立一般中等学校(Day School)へと拡大し、その数は年々増加しています。その結果、さらなる教師の養成が求められるようになりました。

マレーシア国内での日本語教員養成プログラム

国立一般中等学校への日本語教育の拡大にともなう教師不足を解決する方法として始まったのが、マレーシア国内の国際言語教員養成所(International Languages Teacher Training Institute、略称IPBA)での新規日本語教員養成プログラムです。

国際言語教員養成所(IPBA)の写真
国際言語教員養成所(IPBA

2007年度2期生の写真
2007年度2期生

このプログラムは、5年間で75名の日本語教師を養成するべく企画されました。すでに初等・中等学校で教えている教師(英語、数学、化学などを担当)から参加希望者を募集し、日本語教師として育て上げるプログラムです。2008年6月現在、21名が修了し、3期生10名が受講中です。

プログラムの全体構成は以下の図の通りです。

プログラムの全体構成図

註1)
日本語国際センターが実施している各国の中等教育機関日本語教師を対象とした研修プログラム。
註2)
日本語国際センターの研修プログラム参加者全員に、自身の教育現場をふまえた課題を持って研修に臨み、帰国後報告することを課している。(詳しくは、2006年度「世界の日本語教育の現場から」参照)

日本語教育専門家の関わり

このプログラムは、マレーシア人教師3名と日本人教師1名が実施機関の直接担当者ですが、日本語教育専門家は4名の教師と協議しながらプログラム全体で多岐に亘る協力を行っています。12週コースおよび1年コースにおいては、全体のコースデザイン策定、カリキュラム作成へのアドバイス、試験問題作成および判定、コースを運営する上で有効なさまざまな情報の提供など、また、インターンシップ期間の研修では、コースデザインの策定、自律学習用教材の作成、講義などです。インターンシップは現在2期生が対象ですが、全コースを終えても、コース修了者は、実際に教え始めることでさまざまな課題に直面しています。基本的に1校1名しか日本語教師がおらず、また、日常的に日本語に接する機会がなく、教える上で必要な日本語や日本の情報を容易に得ることができない環境にあって、自身の日本語能力と教授能力を維持、向上することは困難を要しています。コース修了者へのさらなる支援をマレーシア側の担当者とともに模索していくことが課題です。

日本語教育専門家ならではの役割は、他にもあります。新規養成プログラムを動かしているIPBAのマレーシア人教師は、3名とも日本に留学して中等学校の日本語教師になった人たちで、その経験がコース運営や授業実施に生かされています。ただ、直接日本語を教える現場から離れ、IPBA内での仕事が中心になると、マレーシア全体を把握しにくくなります。また、IPBAで養成した教師と日本へ留学して教師になった先輩教師との間には、日本語力で差があり、それだけが問題視されると無力感におそわれます。このプログラムでの日本語教育専門家の関わりを、IPBAの教師との協働の視点で捉えると、教育実習を含む日本語教育教授法を学んだ新規教員の良さを生かす道を共に模索できます。また、マレーシア国内だけでなく、近隣諸国の中等教育における日本語教育の現状や変化を早く詳しく知ることができる立場にいる日本語教育専門家は、IPBA内外、マレーシア全体を眺めた上でのアドバイスが可能です。今後4期生、5期生と続く新規養成プログラムをより充実させていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
マレーシアの各機関と連携し、日本語教育に関する幅広い業務を行う。日本語教育専門家(1992年に派遣開始)は現地日本語教師支援を、ジュニア専門家(2007年に派遣開始)は中上級者向けの日本語一般講座の企画運営を中心に行っている。現職教師支援としては、地域セミナー、クアラルンプールで実施する「マレーシア日本語教育セミナー」や「日本語教育研究会・浦和研修報告会」、訪日前オリエンテーションがある。教師養成講座も実施している。また教育省と協力し、中等教育機関における日本語教育にも様々な支援を行っている。その他、スピーチコンテスト、関係機関の情報収集、ニュースレター「ブンガラヤ」原稿執筆などの業務を行う。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Kuala Lumpur
ハ.所在地 Suite 30.01, Level 30, Menara Citibank,
165, Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:2名、ジュニア専門家:1名

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