世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) Secondary Schoolの日本語は今年25歳!

国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
坪山由美子・矢沢悦子・レイン幸代 

 マレーシアの中等学校で日本語科目が始まったのは、1984年のことです。それから25年の四半世紀が過ぎました。開始当初は国際協力事業団(現国際協力機構、JICA)が、1995年に国際交流基金クアラルンプール日本語センター(現クアラルンプール日本文化センター、以下KLセンター)が設立されて以後は、KLセンターが日本側の支援機関として中等学校の日本語教育にさまざまな支援を行ってきました。

 KLセンターに派遣された日本語教育専門家は、そのときどきの要請に基づいて、セミナーを開催したり、シラバスや教材の開発に協力したり、また、生徒が日本語を使う機会を提供したり、新規日本語教師養成(詳しくは2008年度「世界の日本語教育の現場から」KLセンター報告を参照)にかかわったりしてきました。そうして支援してきた中等学校での日本語教育は、まだまだマレーシアの中等学校全体約2000校の4%、76校(2009年5月現在)で行われているに過ぎませんが、マレーシア政府の国際語教育政策のもと確実に広がってきています。

 派遣専門家の醍醐味の一つは、そのように支援してきた日本語教育の今の姿をつぶさに目にすることができることです。海外の日本語教育がどのような広がりを持ちつつあるのかを、日本語を教えている先生たちがどのように努力しているのかを知ることができます。そして、それらを知ることが新たな支援のアイディアを考える助けとなっています。

 ここでは、私たちが目にした中等学校の先生方のがんばっている姿をご紹介します。

クアラルンプール近郊の学校で教えているA先生の場合

校内放送をしている生徒の写真
校内放送をしている生徒

 クアラルンプール近郊のある中等学校では、A先生のアイディアで生徒に毎朝日本語の校内放送を流し、あいさつなどのかんたんな日本語の表現を紹介しています。聞いているのは生徒だけではなく先生や学校のスタッフも。その結果、日本語を勉強していない生徒や先生まで、A先生に日本語で話しかけることがあるそうです。まちがった日本語を使うこともあるようですが、「日本語を使ってくれることがとても嬉しい。これからも続けていきたい。」とA先生は話していました。

マレーシア北部の州の先生たちの場合

 マレーシアでは日本語は進学にかかわる試験の科目にはなっておらず、また、進学にかかわる試験が終わってしまうと、がくんと勉強意欲が落ち、せっかく習った日本語を忘れてしまう生徒が少なくありません。そこで、習った日本語を使う機会を生徒に与え、学習意欲を刺激しようと始めたのが「がんばろう日本語」という催しです。日本語を使ったいろいろなゲームや、日本についてのクイズなど、生徒が楽しく取り組める企画を考えました。現在5つの学校がこれに参加し、日本語を使った、生徒同士また教師との交流の場になっています。

参加した生徒と教師の写真
参加した生徒と教師

ロールプレイをしている生徒の写真
ロールプレイをしている生徒

マレーシア北部の学校のB先生の場合

 図書館の中に2畳ほどの日本語コーナーを作りました。そこにあるのは、日本の本や雑誌、辞書だけではありません。このコーナーを作ったB先生が日本に留学しているときに取った写真を集めたアルバムが何冊もおかれています。写真を通して、B先生が体験した日本を生徒に感じてほしいという気持ちからアルバムをおいたそうです。ちなみに、このB先生、お茶をたしなみ、ヨサコイも踊れるというかなりの日本通です。

 「生徒には日本語を使う機会がない」というマレーシアの先生は少なくありません。でも、ご紹介した先生のように工夫している先生もいます。このような先生方の活動が日本語教育を支えているのでしょう。

実は…

畳の並べ方を考えている生徒の写真
畳の並べ方を考えている生徒

 KLセンターも日本語を勉強している学習者が日本語を使い、日本を知る機会を提供しています。「JFKL Visit」です。先生に引率されてきた生徒たちは、クイズの答えを図書館にある本の中から探したり、和室を体験したり、名刺を作ったり…。ちょっと変わったアクティビティとしてアルゴリズム行進をしたこともあります。「JFKL Visit」は生徒の学習意欲を高めるだけではなく、日本語を教えている先生たちにクラスアクティビティ例を見せる場でもあります。KLセンターのスタッフともども、私たち派遣専門家もアイディアを搾り出しています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
マレーシアの各機関と連携し、日本語教育に関する幅広い業務を行う。日本語教育専門家(1992年に派遣開始)は現地日本語教師支援を、ジュニア専門家(2007年に派遣開始)は中上級者向けの日本語一般講座の企画運営を中心に行っている。現職教師支援としては、地域セミナー、クアラルンプールで実施する「マレーシア日本語教育セミナー」や「日本語教育研究会・浦和研修報告会」、訪日前オリエンテーションがある。教師養成講座も実施している。また教育省と協力し、中等教育機関における日本語教育にも様々な支援を行っている。その他、スピーチコンテスト、関係機関の情報収集、ニュースレター「ブンガラヤ」原稿執筆などの業務を行う。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Kuala Lumpur
ハ.所在地 Suite 30.01, Level 30, Menara Citibank,
165, Jalan Ampang, 50450 Kuala Lumpur, Malaysia
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:2名、ジュニア専門家:1名

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