世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ミャンマーで増える・拡がる日本語

ヤンゴン外国語大学
佐藤直樹

ミャンマーは東南アジアの最西端に位置し、タイ・ラオス・中国・インド・バングラデシュに隣接している国で、敬虔な仏教徒が多いことでも有名です。現在ミャンマーは軍事政権から民主政権への移行により大きくかわりつつある国で世界中から注目されています。

日本語の波がやってくる

ミャンマーで学校教育として日本語教育が始まったのは1964年(当時の国立外国語学院、現ヤンゴン外国語大学)であり、53年もの歴史があります。ミャンマーの大学はすべてが国立大学であり、日本語を専門に学べる大学は私が籍を置いているヤンゴン外国語(以下、YUFL)とマンダレー外国語大学(以下、MUFL)しかありません。

大学には4年生の学士課程、修士課程の他、ディプロマコースと呼ばれる準学士課程と一般講座の夜間コースがあります。ここ数年、このいずれのコースにおいても学習者が増加しています。

これはヤンゴンだけでなくミャンマーの第2の都市であるマンダレーでも同様であり、MUFLの夜間コースの新入生はなんと500名を超えています。昨年比で200%以上の増加となり、1クラスの学生数を増やすしかないほどです。国際交流基金の日本語教育機関調査の結果からもミャンマーでの日本語の盛り上がりがわかります。

この日本語学習者の増加にはもちろん日本企業のミャンマー進出増も大きく関わっています。また日本での就職機会を得るために日本語を学ぶ人も多く、技能実習制度により日本へ行くミャンマー人も非常に多くなっています。

ミャンマー日本語教師ネットワーク

国際交流基金と在ミャンマー日本国大使館の共催で年2回日本語教育セミナーを実施しています。今年2017年の4月にも実施されセミナーにはヤンゴン87名、マンダレー46名もの日本語教師が参加する大きなセミナーへと成長してきました。日本語学習者の増加はもちろんですが、日本語教育機関の増加も著しく、国際交流基金が2015年度に実施した日本語教育機関調査結果を見ると2012年と比べ機関数は44機関から132機関へと3倍にも上っています。その異なる機関で日本語を教える教師が一堂に会する機会はなかなかなく、その意味でもこのセミナーは大切なネットワーク構築の場となっています。

また、昨年の「世界の日本語教育の現場から」でもお伝えしたとおりミャンマー人日本語教師が中心となって作ったミャンマー日本語教師会と日本人中心のヤンゴン日本語教師会でも毎月学習会が開催されています。日本

教師会のほうでは飲みニケーションも継続しています。今後もセミナーや教師会の学習会などを中心にさらなる教師のネットワークを広げていければと思います。

ヤンゴンでのセミナー風景の画像
ヤンゴンでのセミナー風景

日本文化への興味

マンガ、アニメ、折り紙、コスプレ、着物など日本文化に関心を持つ人が増えてきており、日本に対するイメージも多様化しているように感じます。YUFLでは昨年学生たちの声掛けにより「折り紙クラブ」が発足し、日本語学科だけでなく他学科の学生も多く参加しています。基金のアジアセンターから派遣されている日本語パートナーズ(以下、NP)の存在も大きく、実際に日本人から日本文化を習うことができるのも大きな魅力のようです。

昨年オープンした「Japan Culture House(ふれあいの場ヤンゴン)」基金アジアセンターとミャンマー元日本留学生協会の共催事業)へ来場者も多く、これまで切り紙・折り紙・書道・つかた・いけばななど多くのイベントを実施し、いずれも定員を大きく超える申し込みがあります。

今後もミャンマーにおける日本語への関心は強くなると思います。この多様化する日本や日本語に対する興味にうまく対応できるような支援を続けてゆきたいと考えています。

折り紙クラブ@YUFLの画像
折り紙クラブ@YUFL

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