世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) Meriendaの不思議なチカラ

国際交流基金マニラ日本文化センター
藤光由子

アドバイザーのほんとうのしごと

 この国の日本語教育の現場を豊かにしていくために、教師として共に成長していくために、アドバイザーとしてできることは何だろう。砂漠に一時的な資金を投入して他所から水を運びこみ、シミのような人口池を作ってみても、翌年にはもう干上がってしまうもの。できることなら私は真の水脈を発掘するために働きたい。土地の賢人たちの声に耳を傾け、夢の水脈への道筋を信じて探したい。この2年間休むことなく走りながら、いつも考え続けてきました。アドバイザーのほんとうの仕事とは何だろうかと。幸い、考え続けるために必要な仕事があることは本能的に知っていたような気がします。日本語教師の対話と交流の場をつくり、学びのネットワークを広げるために働くこと。「学び続けるコミュニティの創造」。それが一つの答えかもしれないと今は思っています。

月例交流会

Meriendaを持ち寄って集まるフィリピン人教師たちの勉強会。の写真
Meriendaを持ち寄って集まるフィリピン人教師たちの勉強会。

 マニラ日本文化センターでは、アドバイザーの企画で毎月さまざまな話題提供者を招いて「日本語教育研究交流会」を開催しています。企画の趣旨は、フィリピンの日本語教育、さらに日本語教育と接点を持つ多様な領域における実践および研究成果を、教育関係者・研究者の相互交流を通じて交換する場を提供することでした。会が開かれるのは夕方、フィリピンでは誰もが楽しみにしているMerienda time(おやつの時間)。交流会にMeriendaの用意は欠かせません。毎回15名程度の参加者がありますが、話題提供者のレクチャーのあとも、Meriendaのテーブルを囲んで参加者一人一人が自由に語らい交流していく場になっています。そこから自主的な勉強会活動の呼びかけがなされるなど新しい関係が着実に育っています。

第1回フィリピン日本語教師フォーラム開催へ

 2004年11月、フィリピンにおける日本語教育研究振興の足場作りのため、初の試みとして、研究発表集会(日本語教師フォーラム)を開催しました。掲げたテーマは「Building a Community of Nihongo teachers in the Philippines」 。この会には国内のさまざまな地域から、2日間で述べ100名余りの参加者がありました。プログラムの1日目はフィリピンの日本語教育関係者による調査研究の成果を、発表者と参加者の相互交流を通じて共有、交換する場を提供しました。2日目はアドバイザー報告、参加者の多様な現場の実践報告を通じ、フィリピン日本語教育の全体状況について、コミュニティのメンバーとしての基礎的な認識を共有する機会としました。今後もこうした企画を積み重ね、フィリピン日本語教育の課題について活発な議論が行われるような環境づくりに貢献したいと考えています。今年はフォーラムに参加していたダバオの教師グループが、地元で月例の教師勉強会を立ち上げたという嬉しいニュースもありました。

Meriendaの不思議なチカラ

日本語教師のための情報誌「みりえんだ」。フィリピン人日本語教師を編集スタッフに迎えアドバイザーとの協働作業でDTP発行している。の写真
日本語教師のための情報誌「みりえんだ」。
フィリピン人日本語教師を編集スタッフに迎えアドバイザーとの協働作業でDTP発行している。

 フィリピンの田舎の島に滞在していたときのこと、手作りのお菓子を入れた籠を持って、いつも決まった時間にどこからともなく現れるMerienda売りのおばさんに出会いました。おばさんの運んでくれた滋味あふれるココナツ風味の餅菓子や蒸しパン、素朴な揚げバナナのデザートはどれも作りたてで優しい味がしました。素朴なお菓子を勧めたり、勧められたりしているうちに、旅の仲間の輪も広がり、いつのまにか見知らぬ人とも打ち解けておしゃべりに興じていました。Meriendaには人の輪を作る不思議なチカラがあるようです。マニラ日本文化センターが発行する日本語教師のための情報誌「みりえんだ」も、教師たちが情報やアイデアを交換し、お互いの実践から学びあい、心励まされたりする、そんな交流の場を作っていけたら...という願いを込めて名づけられました。2003年クリスマスの創刊以来、号を重ねる毎に寄稿者の層が広がり、私たちの「みりえんだ」もフィリピン日本語教育をめぐる対話と交流の場そのものへと成長しつつあります。
Merienda はフィリピンの愛すべき素敵な習慣ですが、私にとってはアドバイザーの仕事をめぐる大いなるインスピレーションの素でもあります。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
フィリピンにおいては日本語教育分野の人材育成が求められている。専門家は、マニラ日本文化センター付アドバイザーとして、事務所主催の教師研修会やコンサルティング業務により教師支援を行うほか、研究発表交流会の企画・開催を通じて日本語教育研究振興の足場作りに取り組んでいる。また、現地団体の主催するワークショップやスピーチコンテストなどローカルプロジェクトへの協力や機関訪問を通じて日本語教育関係者のネットワーク構築を図っている。ニューズレター:『みりえんだ』発行(年3回)。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation, Manila
ハ.所在地 12th Floor, Pacific Star Bldg, Sen.Gil J.Puyat Ave. cor Makati Ave. Makati City, 1226 Philippines
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

ページトップへ戻る