世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) フィリピン人はパフォーマンス好き(?)

フィリピン大学、ディリマン校
洲脇 泰

日本語アクティビティの写真
日本語アクティビティ

 フィリピン大学(UPとよく略称されます)デリマン校は、マニラ首都圏ケソン市にあるフィリピンで最初の国立大学(1908年創立)です。名実ともに最高学府として、文化人、政財界の多くの人材を輩出しています。ここでの日本語教育は、言語学科が中心となっておこなわれています。今年の新学期(2006-7年度)では、最初級からはじまり、中上級まで、全部で20のクラスが開講されていて、年間およそのべ500人ほどの学生が日本語を勉強しています。

 世界の日本語教師の7割近くが非母語話者の教師がしめている、といわれますが、フィリピンもその例外ではなく、UPに8人いる講師は報告者をのぞいて全員フィリピン人の先生で占められています。これは、きっといいことなのでしょう。というのは、「日本語を学ぶ」という「痛み(?)と悦び」を一身に体現した先輩でもある先生たちが、未知の言語に臨む学生たちを、ほどよく脅したり、すかしたり(?)、鼓舞したり、いわば日本語学習後の「完成品見本」本人をしめしつつ、道案内してくれる、という雰囲気が授業にあふれ、ある種の興奮すら伝わってきます。

 こんな先生たちを、どうやったらサポートできるか、を考えることが専門家の仕事です。先生たちが自分たちだけで日本語の問題を解決していくための方法を考え、資料や素材を用意し、どう活用していくか、それを一緒に考える勉強会を、先生達全員があつまって(週一回)つづけています。日本語そのもののブラッシュアップも必要ですし、純粋に日本語学的学習もまだまだ、であることは、もちろんのことなのですが、でも、どうやったらフィリピンの学生たちが喜んで日本語を勉強できるか教えてくれるのは、いつもそうしたフィリピン人の先生であり、また学生たちでもあるのです。また、国際交流基金マニラ日本文化センターでは、フィリピン人教師のための講座を開設しており、報告者も講師をつとめています。UPの先生たちは、この講座にも参加して、より専門的な知識をみにつけるようにしています。

発表会を終えての写真
発表会を終えて

 さて、フィリピン人の学生の特徴は、というとまずなんといってもそのパフォーマンス好きをあげなければならないでしょう。というと、何かいつも躁状態で、騒がしいように聞こえますが、実は、意外と恥ずかしがりで、人前であんまり話しをしたがらず、ちょっと自意識過剰気味のところがあるせいかな、とも思われるのですが、いざパフォーマンスをくりひろげる、となった瞬間、異常なまでのエネルギーをそこに注ぎこみ、自分の時間を削ってまで準備に没頭してしまう、という、そんなところがあるのです。そんな学生たちの晴れ?の場が、学期末に行われる発表会です。学生たちが自分でつくったビデオ作品(結構本格的)や、日本語劇(ほとんどコミックショーにしかみえないのですが)、風呂敷の使い方パフォーマンス、などなど、期末試験の準備もここまでやらなかっただろう!と思わず言いたくなるほどの準備周到ぶりのパフォーマンスが一日くりひろげられるのでした。

 言語学科以外の学生は、必須選択科目である外国語6単位をとりおえると日本語から離れる人が多いのですが、最近その先の日本語を、卒業に必要な単位じゃないのにとる人が増えてきました。「かじるだけ」の日本語以上のものを求める学生が増えてきたことは、やはりうれしいことです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
フィリピン大学は1908年、国立大学としてはフィリピンで始めて創設された、フィリピンを代表する高等教育機関であり、学生の質も、卒業生の影響力もトップクラスにある。日本語教育に関しても比較的歴史は長く、1960年代から現在に至るまで言語学科で継続して日本語科目を開講している。1998年からは日本語が専攻に近い形(言語学と日本語の両方を専門科目として同単位ずつ履修する二重専攻)で学べるようになっており、フィリピンにおける日本語教育の中核機関の一つである。専門家は言語学科での日本語教育、カリキュラムに対する助言、教材作成、現地教師の育成等を行う。
ロ.派遣先機関名称 フィリピン大学デリマン校
University of the Philippines, Diliman
ハ.所在地 Diliman, Quezon City, Metro Manila, Philippines
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
社会科学哲学科言語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   日本語講座開始
1964年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1972年
(ロ)コース種別
言語学科の言語学と二重専攻(プランC)
選択第二外国語
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人0名)
非常勤4名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択外国語250名程度
言語学日本語専攻30名程度
(2) 学習の主な動機 日本語・日本文化に対する興味、将来の仕事
(3) 卒業後の主な進路 日系企業、大学院進学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~3級
(5) 日本への留学人数 毎年2名~10名

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