世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) デ・ラ・サール大学における派遣専門家の活動

デ・ラ・サール大学
坂本まり子

1.名門デ・ラ・サール大学

ある日のキャンパスの写真
ある日のキャンパス

 デ・ラ・サール大学は1911年フィリピン初のキリスト教系学校としてマニラ旧市街に創設されました。現在では、国立フィリピン大学、私立のアテネオ・デ・マニラ大学並んでとフィリピンの名門大学の1つとなっています。

 フィリピンでも1,2を争う裕福な大学ということで、他大学に比べて施設は整っています。各教室にはエアコンが完備している上、多数の掃除夫が絶えず構内を掃除して回っているため、きれいに整備され、学生の服装もこざっぱりしています。また学内の環境・設備ばかりでなくセキュリティーが厳しいことでも有名です。3カ所あるゲートにはそれぞれ複数のセキュリティーガードが立ち、入校者のIDをチェックします。来訪者は2日前までに、名前と所属を届けておき、メインゲートでIDを預けた上でないと入校できません。そのため、学内での危険や不安はほとんど無く、日本人の持つ「マニラ」のイメージとはまったく違います。

 専門家が派遣されている日本研究プログラム(Japan Studies Program)は、1983年に地域研究専攻の一つとして開講されました。当時、経済成長著しい日本に対する社会・文化的側面への関心から、人気があったようです。1990年に、ヨーロッパ研究、アメリカ研究のプログラムとともに教養学部国際学科(International Studies Department, College of Liberal Arts)に統合されました。日本研究プログラムが、語学科目よりも日本文化・政治等の科目で充実しているのは、このような経緯によるだろうと前任者も報告しています。語学科目が充実するためには、各科目担当者とそれらを統合するシラバスが整っていることが必要ですが、少数の非常勤講師しかいないデ・ラ・サール大学では、なかなか困難な状態です。日本語の単位は24単位(約330時間)とフィリピン大学についで多いのですが、フィリピンでは英語が広く浸透し何もかも英語で事足りてしまうため、他の語学学習を尊重する気風や関心があまりないことが残念です。

 さらに、フィリピンの教育は6歳で入学する初等義務教育が6年で日本と変わりませんが、その上の中等教育(日本の中学・高校にあたる)が4年間のため、高等教育機関である大学には16歳で入学します。日本の教育制度に比べて大学に入る年齢が2歳若いことになります。このことが、日本の大学との交流を難しくしている要因のひとつでもあります。

2.デ・ラ・サール大学での派遣専門家の仕事

現地教師の授業の写真
現地教師の授業

 デ・ラ・サール大学では日本語講座は大きく二つに分けられます。専門家が派遣されている国際学科日本研究プログラムの中での日本語講座と、コンピューターサイエンス学科から頼まれる毎学期3単位だけの最初級の日本語コースです。授業を担当する以外に、報告者と重なっていないフィリピン人教師の授業を参観して、できるだけ細かい点までコメントを書いて渡しています。また、各課で作ったプリント、クイズ、宿題、中間・期末テストなど授業に必要な作成物を現地教師と協力して残していくことに力を入れています。いずれ派遣制度が終わり、フィリピン人のみで日本語プログラムを運営していくための自立の下支えになる物を残していく必要性を強く感じるからです。

 通常授業以外には、日本語能力試験対策の自主講座や、日本滞在が長く日本語能力が高い学生への個別指導なども行っています。

 また、学生サークル「日本研究会」の顧問として、国際学科と共催でイベントを行っています。「日本研究会」には290人ものメンバーがいて、ほとんどは日本語があまりできませんが、日本のアニメやポップカルチャーを通して日本に興味を持っている学生たちです。日本語を身近に感じてもらい、日本語学習へのモチベーションを高めたいと思い、今年度は月に1度の日本映画祭、日系企業訪問、学内日本語スピーチコンテストなどを企画し実施しています。

3.学外の活動

 デ・ラ・サール大学以外の活動もあります。基金マニラ日本文化センターの「日本語教育研究コース」では土曜日の授業とその運営のためのミーティング、受講生が行うプレゼンテーションのための指導などをしています。当初に決定された4段階のうち、現在第2段階まで終了しました。教師養成および教師のスキルアップと、日本語の問題を自分で解決できる能力を身につけるための講座です。初級レベルの学生に対する指導が中心の大学での業務とはまたちがった、現地教師指導という派遣専門家本来の仕事でもあり、これからも力を入れていくつもりです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
デ・ラ・サール大学は1911年フィリピン初のカトリック系学校として、創設された。現在では有名私立大学の1つとして政財界に人材を送り出している。日本語教育は「日本研究プログラム」の中で開講され、3年間で計340時間行われている。専門家は学内でのコースシラバス、カリキュラム整備やスケジュール管理などコース運営のほか、教材作成や教師育成を行っている。
ロ.派遣先機関名称 デ・ラ・サール大学
Japan Studies Program, International Studies Department, De La Salle University
ハ.所在地 2401 Taft Avenue, Manila City, Metro Manila, 1400 Philippines
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
教養学部 国際学科 日本研究プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1983年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2003年
(ロ)コース種別
専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤0名(うち邦人0名)、非常勤2名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   2年生25名、3年生11名 1年生(未定)
(2) 学習の主な動機 日本留学、日本への関心
(3) 卒業後の主な進路 自営業、日系企業など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
3級,4級
(5) 日本への留学人数 1名(2005年)

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