世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) フィリピンの日本語教師たちとともに

フィリピン大学
洲脇 泰

フィリピン大学は

 フィリピン大学は(以下UP)フィリピンで最初につくられた国立大学で、来年2008年、創立100年を迎えます。国内にいくつかのキャンパスがあり、日本語教育専門家(以下「専門家」)が派遣されている言語学科は、マニラ首都圏の北、ケソン市にあるデリマン校、UPのなかでも最大のキャンパスで、代々木公園ほどの敷地に30以上のカレッジや研究センターが「散在」する中にあります。このキャンパスには学生寮や、職員用宿舎、はてはショッピングセンター、さまざまなタイプの食堂のかずかずが、どこまでが大学の敷地なのか境界がわからなくなるほど野方図に広がっていて、ひとつの村を形成している、という感じで、キャンパス内を、フィリピンで最も利用されている交通機関ともいうべきジプニーが縦横に走り回っています。

派遣先での任務

UPの先生たちの写真
UPの先生たち

 UPに派遣される専門家の任務はまずUPの言語学科の日本語プログラムでの日本語科目の授業です。およそ9単位から12単位を1学期に担当します。UPの日本語プログラムは全部で、39単位で構成されています。全学に公開されていて、終了レベルとしては中級の前半というところで、一年の日本留学をへて日本語能力試験2級に合格して卒業していく、というものが多いです。中でも重要なのが、UPで教えているフィリピン人の教師たちのサポートです。母語話者の講師は専門家のみで、あとはすべて非母語話者の講師で構成されています。従来は初級をフィリピン人の講師が担当、専門家が中級を担当する、という形でしたが、フィリピン人の先生にできるだけ中級のクラスを担当してもらい、専門家はその支援にまわるようにしました。毎週勉強会を開き、最初の2年は文法項目の整理、日本語力向上のための読書会などを行い、今後中級以降の科目についてのカリキュラムをいっしょに明確化していこうと思っています。

UPでの言語学科以外の活動

 UPにおける言語学科の日本語プログラム以外の活動として、日本との文化交流を進めるイベント、組織への参加・支援などがあります。たとえば、日本への興味から日本文化を理解しようという学内サークル「ともカイ」(日本語の「友」、とタガログ語の「友達=カイビガン」の合成)の顧問をつとめています。また彼らとともに、UPにスタディツアーなどで訪れる日本の大学生のグループのサポートをすることも毎年何回かあります。2007年度には、日本語を勉強しているアジアの学生(台湾、韓国)と日本の学生、UPの学生が共同で行う「アジアを知るためのフィールドワーク」なども予定されています。

UP以外での活動

 UP以外での活動として、国際交流基金マニラ日本文化センターが行う様々な日本語教育関連の催しものへの参加・協力があります。なかでも重要なのは2005年度から始まったフィリピン人講師のための教師養成講座です。これは新たに日本語教師になる人のための講座というより、現役の日本語教師の質的向上を目指すもので、この講座のカリキュラム作成、講義の担当も重要な活動となっています。ここにはUPの講師にも参加してもらっています。

 フィリピンでは、ほかの東南アジアの国々と同様に日本語教師の多くが非母語話者です。この国を誰よりもよく知っている教師たちを支援しながらも、しばしばこちらが多くを教えられる、そうした関係をつくるのが大事なのだなあ、と痛感する日々なのです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
フィリピン大学は1908年、国立大学としてはフィリピンで始めて創設された、フィリピンを代表する高等教育機関であり、学生の質も、卒業生の影響力もトップクラスにある。日本語教育に関しても比較的歴史は長く、1960年代から現在に至るまで言語学科で継続して日本語科目を開講している。1998年からは日本語が専攻に近い形(言語学と日本語の両方を専門科目として同単位ずつ履修する二重専攻)で学べるようになっており、フィリピンにおける日本語教育の中核機関の一つである。専門家は言語学科での日本語教育、カリキュラムに対する助言、教材作成、現地教師の育成等を行う。
ロ.派遣先機関名称 フィリピン大学デリマン校
University of the Philippines, Diliman
ハ.所在地 Diliman, Quezon City, Metro Manila, Philippines
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
社会科学哲学科言語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   日本語講座開始
1964年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1972年
(ロ)コース種別
言語学科の言語学と二重専攻(プランC)
選択第二外国語
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人0名)
非常勤4名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択外国語250名程度
言語学日本語専攻30名程度
(2) 学習の主な動機 日本語・日本文化に対する興味、将来の仕事
(3) 卒業後の主な進路 日系企業、大学院進学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級~3級
(5) 日本への留学人数 毎年2名~10名

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