世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) さらに広がる日本語の輪!

国際交流基金マニラ日本文化センター
雄谷進 大舩ちさと 松井孝浩

 2010年、フィリピンの日本語教育に多くの新たな命が生まれました。それは、地方の教師ネットワークです。なんと5つの新たな教師ネットワークが、その地域在住のフィリピン人日本語教師を中心に2010年から2011年にかけて立ち上げられたのです。2009年から教育省主導の下、導入された高校における日本語教育も順調に拡大を続けています。今日は、国際交流基金マニラ日本文化センター(以下、当センター)より、このホットなフィリピンの日本語教育事情をお伝えしたいと思います。

1. 地方ネットワークの誕生

日本語教師ネットワークの写真
日本語教師ネットワーク

 フィリピンにはマニラ首都圏の日本語教師を中心に構成される「フィリピン人日本語教師会(AFINITE)」があり、月例会の実施や、「日本語教師フォーラム」の当センターとの共催など、活発な活動を行っています。これらの会合・催しは全国のフィリピン人日本語教師に開かれていますが、地方の教師が参加するのはやはり簡単なことではありません。7,000以上の島々からなるこの国では、物理的な距離は離れていなくても、山や海に隔てられ、お互いの行き来が困難であることが多々あります。地方で日本語教育に従事する教師は、限られたリソースの中で孤軍奮闘しているのが現状でした。

 当センターはこのような現状を鑑み、地方在住の教師支援とネットワーク形成を重点事項に掲げ、教授法講座の地方開講などに力を入れてきました。その結果、既に活動を開始していたビサヤ地域日本語教師会(ANT-V、セブ中心、2007年10月) に続き、新たに生まれたのが、以下のネットワークです。

  • 北ルソン日本語教師会(ANT-NL、バギオ中心、2010年10月)
  • 北部ミンダナオ日本語教師会(ANT-Nor Min 、カガヤンデオロ中心、2010年11月)
  • ボホール日本語教師会(BANT、タグビララン中心、2010年12月)
  • ネグロス日本語教師会(ANT-Negros、バコロド及びドゥマゲッティ中心、2011年2月)
  • ビコール日本語協会(BNS、レガスピ中心、2011年1月)

現在、当センターで行われている教師研修の様子の写真
現在、当センターで行われている教師研修の様子

 フィリピンでは年に2回、「フィリピン日本語教師フォーラム」を実施していますが、2011年5月には「ネットワークの強化」をテーマに掲げ、地方に生まれた新たなネットワークをどのように全国規模のネットワークにつなげていくか、どんな活動ができるかを合宿形式で考えました。今後、このネットワークがどのように活き活きと動き出すのかが楽しみです。

 当センターでは、マニラ首都圏での教師研修、教授法講座を継続すると共に、地方に生まれたネットワークと共にできることを積極的に考えていきたいと思っています。

2. 拡大する中等日本語教育

 2010年9月22日国際交流基金とフィリピン教育省(以下、教育省)との間でフィリピンの高校における日本語教育に関し、Memorandum of Cooperation(以下、MOC)が取り交わされました。これにより、中等教育機関への日本語授業の導入事業が、2008年から2012年までのパイロット事業として正式に承認されました。MOCには、教育省が掲げる教育目標に基づき、国際労働市場に参加していくための日本語力とコミュニケーション能力の育成、日本文化に対する理解が目標として記述されているほか、マニラ首都圏に続きセブ地域への展開計画が記されています。

「そこで、アクションプランを考えました。」ポスター発表に挑戦するE2コースの写真
「そこで、アクションプランを考えました。」
ポスター発表に挑戦するE2コース

 この事業の一環として4月13日から5月27日までの24~5日間(計106~8時間)、英語科や社会科の現役高校教師を対象とした研修(以下、コンバート研修)をマカティ・サイエンス高校で実施しました。この研修は、日本語の学習経験のない高校教師に学習機会を提供し、日本語教師を養成するものです。今年度は、新たに日本語を教える教師のための1年目のコース(E1コース)と昨年度コンバート研修を受けた教師に対する2年目のコース(E2コース)が並行して行われました。両コースとも、教材は当センターにて高校生向けに開発した『enTree-Halina! Be a NIHONGOJIN!!』(Vol.1 & 2)を使用しています。今年度のE1コースは初めてRegion IのパンガシナンとRegion Ⅶのセブからも参加者を迎えることができました。着実に根付き始めているマニラ首都圏での日本語授業の導入に加え、今後は地方の高校での導入が進んでいくことが期待されます。

 高校における選択外国語科目導入事業は、日本語だけでなく、西語、仏語、独語、中国語など(※1)が、同時に進められています。日本語と同様、各国言語で夏季休暇を利用した教師養成が実施されていますが、高校における外国語教育の地方展開を視野に入れると、夏季休暇を利用した教師養成では需要に対応できません。そこで、当センターでは教育省、インスティテュート・セルバンテス(西)やアリアンス・フランセーズ(仏)、ゲーテ・インスティテュート(独)などとも協力し、高校と大学の外国語教育の橋渡し、大学における教員養成課程の立ち上げなどにむけた働きかけを開始しています。

※1 その他、アラビア語が導入予定。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Manila
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
フィリピンでは日本語教育分野の人材育成が求められている。日本語教育専門家は、マニラ日本文化センター付アドバイザーとして、事務所主催の教師研修や日本語教師フォーラム(年2回)、全国スピーチコンテストなどの企画・開催、現地団体の主催する日本語関係のプログラムへの協力などを行っている。また、本年度の最重要課題である中等教育における日本語教育導入・展開プロジェクトの下、現役高校教師対象教師養成講座や教材作成、巡回指導などを行っている。ニューズレター『みりえんだ』発行。
所在地 The Japan Foundation, Manila
12th Floor, Pacific Star Bldg, Sen.Gil J.Puyat Ave. cor Makati Ave.
Makati City, 1226 Philippines
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:1名、指導助手2名(うち専門家1名はセブ島に派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2000年

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