世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)「3つのチームで日本語教育支援―多様化しているフィリピン日本語教育の今―」

国際交流基金マニラ日本文化センター
講座・教師養成チーム: 中込 達哉・早川 直子
EPA研修チーム: 青沼 国夫・森 美紀・鈴木 恵理
中等教育・教師養成チーム: 大舩 ちさと・桑野 幸子・高須こずえ

2012年度日本語教育機関調査で日本語学習者数第10位になったフィリピンでは、3つのチーム(講座・教師養成、EPA研修、中等教育・教師養成)に分かれて業務を行っています。それぞれのチームから最新情報をお伝えします。

第19回フィリピン日本語教師フォーラム

2014年5月17日、第19回フィリピン日本語教師フォーラムを開催しました。タイトルは、「A day to get to grips with MARUGOTO:『まるごと』をまるごと!」 です。

国際交流基金が開発した日本語テキスト『まるごと 日本のことばと文化』(以下『まるごと』)について学ぶためのフォーラムです。執筆者の一人八田直美先生を招き、『まるごと』とは?と「Can-doから教室活動を作ろう!―<聞いて、話せる>をめざして―」について講義・ワークショップを実施しました。

八田先生の講義に先立ち、まず『まるごと』のデモ授業を見ながら、『まるごと』のテキストや授業について考えました。そして、『まるごと』のテキストの特色や授業の特徴などを話し合い、発見を共有しました。

ワークショップでは、can do statement に基づいたアクティビティー作りをグループに分かれて体験しました。そして、フォーラムの最後には、当センターで作成してきた「まるごと教師」のためのガイド「まるごと×マニラ・マニュアル」のウェブサイトでの公開も発表しました。(http://www.jfmo.org.ph/marugoto-teaching-materials/

フィリピン全土から集まった75名の教師たちが、新しい教科書『まるごと』について学んだ一日でした。

今後は、『まるごと』を教えるためのテクニックについて、実践的に学ぶ教師研修も企画し、マニラだけでなく地方でも開催していく予定です。

第19回日本語教師フォーラムの写真
<第19回日本語教師フォーラム>

看護師・介護福祉士候補者のための日本語研修 -教室を離れた活動-

2011年から日比EPA(経済連携協定)に基づいた看護師・介護福祉士候補者に対する日本語予備教育を実施しています。今回は4回目で、看護師候補者36名、介護福祉士候補者150名、計186名を対象に、2013年11月から6か月間マニラ首都圏内の研修施設で実施しました。

本研修では来日後の研修、就労を効果的に行うための準備として、語学学習だけでなく、「自律学習支援」と「社会文化理解」を取り入れています。「社会文化理解」の中には、これまで学習したことを使ってみる「日本語運用と異文化理解」という時間があり、朗読発表、調べ学習、日本語コンテストを実施しました。

日本語コンテストでは普段のクラスとは違うチームで、漢字クイズ、日本事情クイズ、ロールプレイに挑戦しました。ロールプレイでは場面と課題が与えられ、候補者は役割、談話の流れ、セリフを考えて発表します。日本の職場で遭遇しそうな場面が設定されているので、言葉だけでなく、患者さんや利用者さんのことを考慮した行動がとれるかどうかも大切です。候補者は皆、患者さんや看護師、師長などの役になりきって熱演しました。普段の授業ではどうしても座学になってしまうので、本研修ではこのような活動を通して、学んだことを活かせる機会を設けています。

研修の様子その1
<バスが事故にあい、電話で連絡>

高校日本語教師向け研修で新コースがスタート!

当センターでは2010年から、フィリピンの高校生向け教材『enTree‐Halina! Be a NIHONGOJIN!!-』(以下『enTree』)を用いて、現職高校教師を対象に日本語教師を養成する研修を実施してきました。今年は、2010年、2011年から『enTree』を用いた研修に参加した教師のうち、21名を対象に日本語力向上のためのコースを新たに設けました。4月、5月には6週間の集中研修を行いました。

enTree』を用いた3年間のコースでは、聞く・話すの技能を中心に扱っていましたが、新コースでは4技能をバランスよく扱い総合的な日本語力の向上を目指しています。新コースの設置の背景には、フィリピン教育省が日本語教師の更なる日本語力向上を掲げていることがあります。文法や漢字などを学ぶのは参加者にとって新しい挑戦ですが、高校での授業に活かそうと頑張っています。

研修の様子その2
<日本語力向上を目指して、猛勉強中!>

第3回日本語教育会議 in セブ

セブでは昨年に引き続き、ヴィサヤ地域日本語教師会(ANT-V)の主催で「第3回日本語教育会議」が3月に開催されました。2012年に初めてダバオで開催された「日本語教育会議」ですが、第2回、3回はANT-Vが主催者に名乗りを上げてくれました。今回は「企業内日本語教育の課題と展望‐求められる人物像とその育成‐」をテーマにワークショップが行われました。フィリピンでさかんな企業内日本語研修の現場では、企業側の期待値と学習者(従業員)の学習意欲との狭間で日本語教師が悩むことが多く見受けられます。そこで今回の会議では、企業内日本語研修を統括している社員、研修を担当している教師が集まり、実際に企業内で交わされている日本語の会話をやさしい日本語に言い換えてみる作業等を通じて、どのように企業、学習者(従業員)、教師が目標や状況を共有し、より研修の実施のために協力し合えるのかについて、話し合われました。今後も地方発でさまざまな企画が生まれていくことを期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Manila
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
フィリピンでは日本語教育分野の人材育成が求められている。日本語教育専門家は、マニラ日本文化センター付アドバイザーとして、事務所主催の教師研修や日本語教師フォーラム(年2回)、一般向けの日本語学習講座、全国スピーチコンテストなどの企画・開催、現地団体の主催する日本語関係のプログラムへの協力などを行っている。また、本年度の最重要課題である中等教育における日本語教育導入・展開プロジェクトの下、現役高校教師対象教師養成講座や教材作成、巡回指導などを行っているほか、EPAに基づくフィリピン人看護師・介護福祉士候補者日本語予備教育事業にも取り組んでいる。ニューズレター『みりえんだ』発行。
所在地 The Japan Foundation, Manila
23rd Floor, Pacific Star Bldg, Sen.Gil J.Puyat Ave. cor Makati Ave.
Makati City, 1226 Philippines
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:4名、専門家:4名、指導助手1名(うち専門家1名はセブ島に派遣)
国際交流基金からの派遣開始年 2000年

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