世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ヴィサヤ地域の日本語教育支援

国際交流基金マニラ日本文化センター(セブ)
新谷 知佳

3年目を迎えた中等教師研修 in Cebu

2009年度から始まったフィリピンの中等教師研修ですが、マニラ会場に加えて、4期目となる2016年度からセブ会場での研修が開始されました。本研修は、4、5月に行われる5週間の夏季集中研修と、毎月のフォロースルー研修(計10回)があり、3年間に渡って実施されます。3年目の夏季集中研修には、10日間の訪日研修も含まれています。研修では、フィリピンの中等教育用教材『enTree‐Halina! Be a NIHONGOJIN!!‐』を生徒モード、教師モードで学ぶ他、『まるごと かつどう』の入門A1、初級1A2を使用した、日本語力アップのための授業、21世紀型スキルや評価法について学ぶ教授法の授業などがあります。

授業している写真 詳細は以下
enTree』を用いた模擬授業の様子 

セブ会場では、セブ島・ボホール島エリアから現在計9校17名の教師が参加しています。英語、フィリピン語、理科、社会、体育など様々な科目の教師ですが、20代の教師も多く比較的若いことから、毎回の研修はとてもにぎやかに楽しく行われています。自宅から研修会場まで、3時間あるいはそれ以上かかる教師もおり、毎月の研修への参加は教師たちにとって簡単なことではありませんが、教師同士の友好な人間関係が、研修への出席を後押ししています。3年目を迎えた現在では、異なる学校、異なる教科から集まっているとは思えないほどのチーム力があり、お揃いのポロシャツを作成したり、JLPT前に自主的に集まって勉強会を行ったりと、同じ目標に向かってお互いに助け合いながら学んでいます。

フィリピンの中等教育における日本語教育では、現在教育省による新カリキュラム作成が行われており、今後教師にはより高い日本語力が求められるようになります。教育省においても、JLPT取得が日本語力を示す指標となっており、JLPT合格へ向けた日本語学習にも意欲的に取り組んでいます。昨年の12月のJLPTではセブ会場の教師5名がN5に合格しました。4期生は今年度中にN5全員合格を目指して頑張っています。

ANT-V(ヴィサヤ地域日本語教師会)のbenkyoukai

日本語教師たちが集う勉強会の写真
毎月セブの日本語教師達が集う勉強会

ANT-V(ヴィサヤ地域日本語教師会)は2008年に発足し、今年でちょうど10年になります。フィリピン人の日本語教師を中心とした組織で、2017年度に新幹部での活動が始まりました。ANT-Vでは、月1回日系企業のオフィスを借りて、benkyoukai(勉強会)を開催しています。勉強会では、毎月担当者を決めてレクチャーが行われており、テーマはシラバスや教授法などの日本語教育に関するものから、日本語レベルアップシリーズと称した日本語の文法について考えるもの、将棋などの日本文化を紹介するものまで、多岐にわたります。参加を強制するものはなく、すべて自主性に任せられていますが、多いときで15名ほどの教師が参加しています。ANT-Vのメンバー数名には、中等教師研修に講師として関わっていただいており、ヴィサヤ地域の高校教師との関わりも生まれています。セブ地域での日本語教育カンファレンスの開催や、セブで行われる盆踊り大会の中のカラオケコンテストを担当するなど、勉強会以外の活動も活発に行われており、今後のヴィサヤ地域の日本語教育をリードするメンバーが集まり、精力的に活動しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Manila
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
セブ島を中心としたヴィサヤ地域の日本語教育支援
(1)中等教育における日本語プログラム支援
 -新規教師研修の実施
 -巡回指導の実施
 -現地日本語教師の日本語能力向上についての指導 等
 
(2)ヴィサヤ地域における日本語教育活性化の支援
 -ANT-V(ヴィサヤ地域日本語教師会)の活動支援
 -スピーチコンテスト等のイベントへの参加 等
 
(3)マニラ日本文化センターがヴィサヤ地域で実施する日本語事業の支援
 -専門家・講師の実施する教師研修の支援等
 
(4)基金の日本語事業の実施・協力
 -日本語パートナーズ派遣事業等
所在地 23/F Pacific Star Building, Sen. Gil Puyat Avenue corner Makati Avenue, Makati City, 1226 Philippines
国際交流基金からの派遣者数 専門家 1名
国際交流基金からの派遣開始年 2011年
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