世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語教育専門家の役割

シンガポール教育省語学センター
小野明美

シンガポール教育省語学センター

教育省語学センターの写真
教育省語学センター

専門家の軸足は、派遣先であるシンガポール教育省語学センターにあります。ここでは小学校卒業試験で上位10%に入った優秀な学生(中学生・高校生)が、放課後、第三言語として「日本語」「ドイツ語」「フランス語」を学んでいます。

日本人日本語教師の比率、約82%(2003年海外日本語教育機関調査より)、100%が日本人教師という学校も多いシンガポールにおいて、当センターは、シンガポール人教師が60%を占めるという特徴を持っています。さらに、当センターのシンガポール人教師の多くは、選ばれて日本へ国費留学した優秀な人たちです。初対面の誰もがシンガポール人だと気づかないくらいすばらしい日本語力を持つ先生もいらっしゃいます。

このように優秀な先生方ですが、専門家の意見を非常に尊重してくださいます。それは、ありがたいことではありますが、その結果、専門家に影響されすぎるという傾向もあるようです。ですから、私の語学センターでの最も重要な使命は、先生方が自信を持ってセンターの日本語教育を担っていけるように協力していくことだと考えています。

今、語学センターに最も必要なのは、中学1年から高校1年までを見通した授業方針の確立だと感じています。最終到達目標をGCE試験合格におくならば、達成のために各学年で何を押さえるべきか、まずそこをしっかりさせなければ、一生懸命授業をしても努力が実を結びません。また、媒介語の使用程度、授業の組み立て方なども、ある程度の統一方針が必要でしょう。

専門家が講師を務め、定期的に開催している日本語学科勉強会では、学科長と相談しつつ、上記の点に重きを置いた内容で講義・ワークショップを続けています。

動き始めた教師会

2003年11月、「シンガポール日本語教師の会」は新たな執行部で再出発しました。教育省語学センター、大学、ポリテクニック(高等専門学校)の教師を中心とした執行部メンバーは、2ヶ月に1度定例会を開き、会の運営に関して活発に意見を交わしています。

2004年5月現在の会員数は93名、昨年の同じ頃に比べると倍以上になりました。人数が増えただけでなく、大学、ポリテクニック等の公的機関以外に、民間の日本語学校の先生方の入会が増えたのは大変うれしい現象です。

専門家と教師会の関わり

シンガポールに派遣される専門家は、派遣先機関だけでなく、シンガポール全体を視野に入れた活動も求められています。その一環として、昨年、日本語教師のネットワークの確立と「シンガポール日本語教師の会」の自立化を目指し、3年計画を立てました。

1年目の昨年、教師会の認知度を高め、存在意義を明らかにし、会員の獲得、会の組織化を図るという目標は、予想以上の達成率でした。教師会執行部に就任してくださった方々、快くセミナー講師を引き受けてくださった丸山敬介教授(同志社女子大学)、講演会講師を務めてくださった宮崎里司教授(早稲田大学)、教育省語学センター、スリーエーネットワーク、AJALTの方々のおかげだと感謝しています。

今年の目標は、執行部の自立です。第一段階は、今まで専門家が引き受けてきた業務、定例会の議案決定、議事録作成、新入会員の受付、会員名簿管理・印刷・郵送、ホームページ管理、セミナー参加者の名簿作成などを、教師会執行部に引き継ぐことでした。皆さんお忙しい方々ですので心配しましたが、うれしいことに5月の定例会で快諾を得、無事引き継ぐことができました。

語学センターの同僚達学期末の持ち寄りパーティーにての写真
語学センターの同僚達
学期末の持ち寄りパーティーにて

第二段階は、セミナーの企画、国際交流基金など日本語教育関係の団体との連絡・交渉、ニュースレター・お知らせの発行、そして、会の運営方針の決定を、専門家主導ではなく、執行部主導に変えることです。執行部の方々のお考えや負担を考慮しながら、これも今年の終わりまでに徐々に移行していくつもりです。

そして、私の任期最後の年となりますが、来年の目標は教師会会員による勉強会、ワークショップの定期的な開催です。現在、学校訪問などをしながらせっせとネットワークを作り、準備を整えているところです。執行部の方々と相談を重ねながら、焦らず、しかし着実に教師会の活動を活発にしていければと思っています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
シンガポール教育省語学センターは教育省直轄の公的機関として、中学生・高校生を対象に第三言語としての日本語教育を行っている。第三言語(日本語、フランス語、ドイツ語)を選択できるのは、小学校卒業試験の上位10%以内の生徒だけである。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う他、シンガポール全体の日本語教育発展のため、日本語教師会への助言・協力、日本語教育セミナーの企画・実施などを行っている。
ロ.派遣先機関名称 シンガポール教育省語学センター
Ministry of Education Language Centre
ハ.所在地 11, Bishan Street 14 Singapore 579782
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1987年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1987年
(ロ)コース種別
課外活動
(ハ)現地教授スタッフ
常勤14名(うち邦人 6名)、非常勤3名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   中1:600名、中2:300名、中3:160名、中4:120名、高1:40名
(2) 学習の主な動機 日本文化への興味・関心、親の勧め、職業上有利だからなど
(3) 卒業後の主な進路
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
中学4年生 JLPT3級程度
高校1年生 JLPT2級程度
(5) 日本への留学人数

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