世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 北部タイの中等教育機関における日本語と中等教員の研修会

教育省スーパーバイザリーユニット
稲葉和栄

 2002年現在、タイの北部地域ではおそよ30弱の中等教育機関が日本語を開講しています。ここでの北部とは教育省Regional Supervisory Unit 8 (以下、R.S.U8)が管轄する地域でチェンマイ県、チェンラーイ県、ランパーン県、ランプーン県、メーホンソーン県、パヤオ県、プレー県、ナーン県の8県を指します。現在、中等全体のカリキュラムの見直し進んでいますが、中等教育で「日本語」」に触れるケースは大まかに次の3つがあります。

北部金曜研修会風景の写真
「北部金曜研修会風景」
研修生を激励する教育省
Resional Supervisory Unit 8 のソムサック局長と受講生(開会式にて)
受講生はタイ中等日本語教員
2002年6月

  1. 1)外国語として週に約6コマ(1コマは50分)、3年間で700時間弱ぐらい勉強する。
  2. 2)基礎職業教育の選択科目として、週に3~4コマ、計200時間強ぐらい勉強する。
  3. 3)クラブとして、週に1,2コマ学生が興味を持っている内容について活動をする。

 タイでは98年から大学入試の科目として日本語を選択できるようになり、2001年には約2千人が試験を受けました。入試の内容は初級全般です。中等での日本語教育が広がり学習時間が増えるにつれて、高等教育で初めて日本語の勉強を始める学生と中等教育で日本語教育を学んだことがある学生をそれぞれどのように伸ばしていくとか、という中等教育と高等教育の橋渡しも課題の1つになってきています。また、初級全般の指導に十分なだけの日本語力を養成したり保持する中等教員の自己研鑚の場作りが求められています。

 さて、2001年度より中等支援のために青年教師がR.S.U8に派遣されるようになりました。主な活動内容は、地域で学校訪問や日本語開講状況の基礎調査を行う、巡回指導で実際に中高校生に日本語を教える、日本語に関する相談を受け付けたりやセミナーを開催する、そしてタイ人中等日本語教員のための日本語研修会を行ったりすることです。この研修会は教育省と国際交流基金バンコック日本語センターが共催しているもので「北部タイ中等教育日本語教師金曜研修会」(略称「北部金曜研修」)といいます。北部金曜研修は2001年度より隔週金曜日にR.S.U8にて開催されおり、受講者は年度始めにプレイスメントテストを受けます。対象者は非常勤や私立学校で日本語を教えている教員を含む北部地域の現職中等タイ人日本語教員で、今年度は約18名が受講しています。日本語力の向上やブラッシュアップを目的に読解、文法、会話、聴解、日本語能力対策など年間およそ70時間弱学習します。

タイの高校生日本語授業風景
タイの高校生
日本語授業風景(高校1年生)
日本語クラスの平均的な
人数は40人前後。
(プレー県 ロンクワンアヌソーン高校)

 タイ全体の中等日本語教員を見ると「中等学校現職教員日本語教師新規養成講座(略称、新規研修)」の修了生の割合がとても高いのですが、基礎調査などから北部ではそれ以外の教員割合の方が高いという逆転現象が起きていることがわかりました。しかし、いずれのケースでも高等教育機関などで日本語を専門的に学んだ教員がほとんどいないという点は共通しています。新規修了生以外のタイ人教員が日本語を教えている学校には、私立学校、非常勤日本語教員を採用している学校、日本に行ったことがあったり日本語を少し勉強したことがある教員が日本語も教えている学校などがあります。その為、教員の日本語力や教授経験もまちまちで、北部金曜研修では日本語能力試験の2級、3級程度の内容を扱う初中級クラスと、4級レベルを学習する初級クラスの2つを開講しています。また、これまで新規修了生以外の教員間では、情報を共有する機会が少なく孤軍奮闘で日本語を教えている教員も多くいました。北部という地域を単位としたコミュニティーの中で、このような様々な中等日本語教員同士の横の交流を図っていくことも北部金曜研修の大きな目的の1つです。さらに、今年度は青年教師だけでなく、北部を代表する高等教育機関であるチェンマイ国立大学のタイ人講師も授業を担当してくださいます。これによって、中等教育と高等教育の情報交換や縦の連携がさらに深まることでしょう。

 このように北部金曜研修を通じてタイ人教員の縦や横の交流が活発化してきています。この交流をさらに発展させていきながら、将来的には自主的な教員研鑚の場としての役割を果たすことができるような土台作りが期待されています。

 この他にも北部地域には「北部タイ日本語教師の会」があります。こちらは、北部で日本語教育に携っている日本人・タイ人教員の相互交流の場とし1995年に設立され、様々な機関からの参加者がいます。2001年度は「タイで教えるにあたっての問題点」や「生教材の利用法」などのトピックで5回の例会を開催しました。参加者比率は日本人教員の方が高く、タイ人教員の参加をどのように促進させていけるかが今後の課題の1つです。

 日本語教員の多様化が進んでいる中で、細分化されたニーズを個々に掘り下げていくミクロな視点と、全体の連携を図るマクロ的なネットワーク作りが求められています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
RSU8には、各教科のアドバイザー的な教師が在籍しており、青年教師も日本語教育コンサルタントを行っている。他に、日本語開講校調査や巡回指導で中高校生にも実際に日本語を教えている。01年度より教育省との共催で「北部金曜研修」がRSU8でも開始され、青年教師がこれを運営・担当している。当研修は新規研修修了生だけでなく、北部のタイ人中等日本語教員全体を対象としており、教員のブラッシュアップや交流の場となっている。02年度には高等機関のタイ人教員を講師に招いており、中等と高等教員のネットワーク作りも期待される。RSU業務とは別に北部タイ日本語教師会(日・タイ人対象)の運営にも自主的に参加している。
ロ.派遣先機関名称 タイ教育省普通教育局第8教育区スーパーバイザリーユニット
Regional Supervisory Unit 8R.S.U.8), Department of General Education, Ministry of Education
ハ.所在地 2 Huaykaew Road, Tambol Changphuak, Amphur Muang, Chiang Mai 50300 Thailand
ニ.国際交流基金派遣者数 青年日本語教師:1名

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