世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バンコック日本語センターは「扇の要」!(2002)

国際交流基金バンコック日本語センター
主任 上野栄三

暁の寺の写真
暁の寺

 バンコック日本語センター(以下、センターとする)の業務は多岐にわたっております。まずは、業務の全体を概観してみましょう。センターの業務は以下のように大きく四つに分けることができます。

  1. 1.研修事業
  2. 2.一般講座の運営
  3. 3.教材制作事業
  4. 4.情報交流事業

先生を育て、先生を助ける

 では、まず、研修事業について紹介します。研修事業の中でもっとも大がかりな事業は、中等学校(日本流に言えば、中学1年から高校3年までの6年制学校)の日本語教員を養成する事業です。私たちはこれを「新規研修」と呼んでいます(正式名は「中等学校現職教員日本語教師新規養成講座」です)。現在、タイ国中等学校で、日本語はとても人気があるのですが、先生の数がそれに追いつきません。そこで、センターはタイ国教育省と共同でこの研修事業を1994年から始めました。候補者は現役の中等学校教員です。もともと、英語やタイ語や数学などを担当していた先生方を新たに日本語の教員に仕立てていくわけですから、いかに大変かはご理解いただけるでしょう。この研修期間は1年、毎年、20名近くの先生方が猛勉強、猛特訓を受けます。

 この「新規研修」を修了した先生方は、自分の学校に戻り、日本語の授業を担当します。ところが、研修はこれで終わりではないのです。バンコックおよびその近郊に住んでいる先生方は、翌年「バンコック金曜研修」に参加しなければなりません。これもセンターと教育省の共同事業です。期間は1年間。毎週金曜の午前9時から午後4時までセンターの教室に通うことが義務付けられています。また、「バンコック金曜研修」に参加できない地方の先生方は、「通信教育」が義務付けられています。一か月に3回、センターから指定の学習課題が郵送されます。読解、文法、作文、聞き取りなどなど、目いっぱいの課題が届きます。研修期間は1年間です。

 こうして、「新規研修」+「バンコック金曜研修」[1]および、「新規研修」+「通信教育」[2]の2年間の研修を修了した先生方は、3年目の春に浦和の日本語国際センターで7週間の研修を受けます。そして、帰国後、翌年の3月まで引き続き「バンコック金曜研修」または「通信教育」を受けます。こうして3年間の長い長い研修の旅が終わり、一人前の日本語教師として自立します。現在のところ、132名の新人日本語教員を世に送り出しました。

北と南の研修会

 昨年、地方で大きな動きがありました。北のチェンマイと南のソンクラーで新たに北部金曜研修」[3]南部金曜研修」[4]が始まったのです。北と南で約30名の先生がこの恩恵に浴することができます。「新規研修」修了生はもちろんのこと、それ以外の先生も、この研修に参加することができます。中には片道二時間かけて通ってくる先生もいます。地方というハンディキャップに負けないで、大いに研修の実を挙げてもらいたいと思います。

 これ以外の研修事業としては、「集中研修」[5]と「土曜研修」[6]があります。前者は4月、10月の年二回の開催です。期間は一週間。場所はセンターです。これは大学、ラジャパット(地域総合大学と呼ばれています)、職業学校、中等学校などすべてのタイ人日本語教師に門戸が開かれています。ただ、その年の「新規研修」修了生にはなるべく参加するように促しています。

 後者もすべてのタイ人日本語教師を対象にした研修会です。毎週土曜日、センターの教室で行います(但し、2002年度は10月の「集中研修」と「土曜研修」はお休みです)。

 以上が、研修事業の概要です。

アラカルトでクラスを選べます

 次に、一般講座[7]を紹介します。

 一般講座はもともと在タイ日本国大使館付属の日本語講座をセンターが引き継いだものです。対象は中級以上の日本語能力を持つ学生、社会人です。現在、16クラス開講、定員は310名です。読解、時事日本語、翻訳、ガイドの日本語、通訳入門等々、非常に興味をそそられるクラスが目白押しです。民間の日本語学校には中・上級のクラスが非常に少ないので、センターの一般講座は中・上級の日本語を学ぼうとする人々にとって、非常に魅力のある講座になっています。

中等教育用日本語教科書作り、世界の先駆け!

 三つ目の大きな事業は教材制作事業です。

 センターでは現在、タイ国教育省との共同事業で、タイ国中等教育用日本語教科書を開発・作成しています。これは後期中等教育(日本流に言えば高校1~3年生)用の日本語教科書で、メインテキスト、練習帳、教師用指導書、聴解テープの四点セットです。

 開発・作成に携わっているのは、派遣専門家1名、センターの講師1名、大学日本語教員3名、中等学校日本語教員6名です。派遣専門家以外はすべてタイ人教員です。日本人とタイ人、大学と高校とセンターの教員という混成部隊です。このような形の事業はほかにあまり例がないでしょう。編集会議は月二回。議論百出、壮烈なタイ語・日本語バトルが展開します。どんな教科書ができるか、世界が注目しています。

ネットワーク作りもぬかりなく

 さて、最後の事業は情報交流事業です。

 センターでは現在二つの情報交流誌を発行しております。一つは「タワン」、もう一つはセンターの「紀要」です。タワンはタイ国内の日本語教育関係者のネットワーク作りの一環として作られたものです。内容はセンターの事業紹介、タイ国日本語教育事情、教材の紹介など多岐にわたっています。紀要はタイ国内の日本語研究者、日本語教師に研究成果や論文、授業の実践報告、調査等々、発表の機会を提供しています。これ以外にも、コンサルタント事業、日本語教材ライブラリーの運営、また、日本語弁論大会と日本語能力試験をタイ国元留学生協会と共同で行っています。

 以上がバンコック日本語センターの業務のあらましです。

バンコック日本語センター創立10周年記念セミナー

 最後に、2001年はバンコック日本語センター創立10周年の年でした。それを記念してセンターでは「創立10周年記念セミナー」を開催したことを付け加えておきます。

(注意)
  1. [1].正式な名称は「バンコック中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  2. [2].正式な名称は「通信教育講座」です。
  3. [3].正式な名称は「北部タイ中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  4. [4].正式な名称は「南部タイ中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  5. [5].正式な名称は「日本語教師日本語集中研修会」です。
  6. [6].正式な名称は「日本語教師土曜研修会」です。
  7. [7].正式な名称は「一般講座・渡日前講座」です。
派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金バンコック日本語センターは、タイ教育省との共催による、他教科の現職中等教育機関教員を日本語教師として養成するプログラムを実施する他、金曜研修、土曜研修など定期的な教師向研修会を実施。また、北部や南部に派遣されている派遣専門家、青年日本語教師と連携をとりながら、各地で研修会を行ったり、地方在住者のための通信教育も実施。現在、教育省と協力し、中等教育機関向け教科書を作成しており、試用段階に入っている。中・上級者向け一般日本語講座の運営も行っている。ニューズレター:『タワン』発行。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Bangkok Language Center
ハ.所在地 10th Fl. Serm-Mit Tower, 159 Sukhumvit 21, Bangkok 10110
ニ.国際交流基金派遣者数

専門家:3名

ページトップへ戻る