世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語コース、大盛況

ランパーンカラヤニー高校
木村 智

配属校における日本庭園
配属校における日本庭園の写真
 タイの人は教室などをきれいに飾りつけるのが好きですが、ランパーン・カラヤニー・スクールでは、教室だけでなく、階段や廊下のちょっとした空間を利用して小さな庭園を造っています。この写真は日本語コースの教室の前に造られた庭で、特に正式名称はないのですが、皆から「スアン・ジープン(日本の庭)」と呼ばれています。デザインはタイの造園業者が行いました。これがタイ人のイメージする「日本庭園」なのかもしれません。

 「先生、日本語クラスの生徒は今、何人ですか。」

 そう言いながら日本語学科の職員室にまた一人、生徒が入ってくる。これで何人目だろうか。同僚のタイ人教師と思わず顔を見合わせる。

 私が赴任したランパーン・カラヤニー・スクール(日本の中学1年~高校3年)は、この5月から新しいカリキュラムとして日本語コースが設置された。コースは日本語専攻コースと日本語選択コースがあり、専攻コースは新学期が始まる前に希望者を募り、すでに受講する生徒を決定したが、選択コースの生徒には最終決定までに1週間の猶予期間が与えられている。その間、生徒たちは自分自身が実際に授業を受けてみたり、他の授業を受けた友人たちから話を聞いたりして情報を集め、自分の選択科目を決める。

 選択科目は日本語の他に英語などもあるが、1クラスの定員は55名なので、登録は「早い者勝ち」であり、他の選択コースから変更する生徒は定員に空きがあれば受講できる。したがって、人気のあるコースに入りたければ、少しでも早く登録を済ませなければならない。そのようなシステムがあるために、冒頭の生徒のように日本語クラスの現在の登録者数を確認しに来る者が後を絶たないのである。

 選択コースはM1(日本の中学1年)~M3(日本の中学3年)までのそれぞれの学年に用意され(M3は2クラス)、新学期当初の登録者は各クラス30人ほどだった。同僚のタイ人教師は1クラスをせめて30名程度にしたいという考えだったので、この数字に内心ホッとしていたようだった。しかし、日に日に日本語選択コースへの変更希望者が増え、1週間後には、とうとうほとんどのクラスで定員一杯になってしまった。

 ちなみに、はじめに日本語クラスに登録をしていて、後に他の選択コースに移った生徒は一人もいなかった。専攻コースとあわせると日本語コースの生徒数は4学年で約250名。大盛況である。

 では、どうして日本語の人気が高いのか。実際、生徒に尋ねてみた。

 「日本のマンガが好きだから」「日本人タレントのファンだから」「カラオケで日本の歌が歌いたいから」など答えは様々で、その他、日本語コースが新しく始まったコースであること、同僚のタイ人教師の人柄が良いこと、日本人教師がいることなどの理由もあるようだった。日本語を選択することに対して、強い動機を持った生徒は少ない。

 それでも多くの生徒が選択科目として日本語を選び、理科系の生徒や先生までが「日本語を勉強したい」と言っている現状をある人が冗談交じりに「日本語ブーム」と呼んだ。確かに、実体のない、雰囲気のようなものが生徒たちを日本語コースへ向かわせているとは言えるだろう。しかし、イメージ先行であろうと何であろうと、日本や日本語に目を向けてもらえるのは日本語教師として有難い。

 新しい教師が新しい教室で新しい科目を教える、今はそれが彼らの目には新鮮に映っていることだろう。しかし、ブームはやがて消える。その後に、本当に日本や日本語に魅せられた生徒をどれだけ残せるか。そこが勝負である。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ランパーン・カラヤニー・高校は、ランパーン県(タイ北部)の中心校で、日本語コースを開設することによって、周辺地域の日本語教育に対する関心・興味を高めることが期待される。青年教師は、ティームティーチングを行い、現地の先生に教授法のアドバイスを行いつつ、生徒にネイティブの授業を受ける機会を与える。また、チェンマイで行われているタイ人日本語教師向け研修会の講師も務める。
ロ.派遣先機関名称 ランパーン・カラヤニー・スクール
Lampang Kanlayanee School
ハ.所在地 224 Paholyothin Rd.,Amphur Muang,Lampang,52100,Thailand
ニ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2002年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2002年
(ロ)コース種別
M4(高校1年):専攻 M1・2・3(中学1~3年):選択
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   M1 50名、
M2 55名、
M3 109名、
M4 38名
(2) 学習の主な動機 漫画や音楽、ファッション、ハイテクなども含めた日本文化への興味他 
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 なし

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