世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 学校派遣から教育省派遣へ

教育省スーパーバイザリーユニット
木村智

1 はじめに

 私は2002年4月にタイへ赴任し、1年目はタイ北部の街、ランパーンにある高校で日本語を教えました。そして、2年目となる今年5月からは、チェンマイにあるタイ教育省普通教育局第8教育区スーパーバイザリーユニットへ異動となりました。
 この異動は赴任当初から予定されていたもので、1年目の学校派遣は2年目の教育省派遣への準備期間という位置づけでした。

 ここでは、学校派遣と教育省派遣の業務の違い、また、教育省派遣でのメイン業務となる北部金曜研修の問題点について考えてみたいと思います。

2 学校派遣

 学校派遣での業務は、授業の実施・教材作成といった日常業務が中心でした。実際に、教室に入り、生徒に日本語を教えるのが毎日の仕事です。その他には、カリキュラム・シラバス作成への協力や同僚教師への日本語指導などのアドバイザー的な業務もありました。
 学校派遣では、外国人教師であろうと、校内では一教員として扱われる場合が多く、大変な部分もありましたが、それによって見えてくるものも多くありました。タイ人教師の多忙さ、教師と生徒の関係、生徒の日本語への期待などは、一人の教師として日々、そこに身を置かなければ実感できないことでした。この1年で、実際の学校現場を知り、タイ人教師を取り巻く状況や生徒たちの学習環境を目の当たりにできたことは非常に有意義だったと思います。

3 教育省派遣

金曜研修初日に教育区局長の話を聞く受講者たちの写真
金曜研修初日に教育区局長の話を聞く受講者たち

 現在の派遣先では、スーパーバイザーという役職を与えられています。スーパーバイザーの仕事は、教育区内の教育機関や教員へのコンサルティング業務ですが、日本語担当スーパーバイザーとしての私の業務は、タイ人日本語教員のための研修(北部タイ中等教育日本語教師金曜研修会 略称「北部金曜研修」)が中心となります。
 スーパーバイザーは、その教育区全体を管轄としているため、その地域内の学校や教員への支援はしても、直接、学習者を支援することはそれほど多くありません。

4 学校現場から見えてきた北部金曜研修の問題点

 この1年、学校の一教員として勤務した中で、スーパーバイザーの業務、特に、北部金曜研修のあり方について考えさせられた点がいくつかありました。
 例えば、北部金曜研修への参加はタイ教育省から公務として認められていますが、平日に日本語教員だけが学校業務から離れることは、ある種の特別扱いと感じ、快く思わない人たちが多くいることがわかりました。また、このような研修方法に対して、学校内だけでなく、教育省内部にも批判の声があることも知りました。実際に、これまで研修に参加してきた教員の中で、今年度は学校の許可が得られず、参加できない教員も出てきています。
 また、研修の内容についても、これまでは教員の日本語能力向上に重点を置いてきたために、教師支援ということでは効果があっても、その効果と学校現場での学習者支援とがうまく結びついていないということもよくわかりました。この他にも、教員の参加資格の問題や、参加継続年数の上限の設置などの問題があります。

 このように、難しい問題も抱えている北部金曜研修ですが、参加しているタイ人の先生たちの学習意欲は旺盛で、授業はいつも活気に満ちています。また、北部金曜研修は、私立高校の教員や非常勤の教員も受け入れているので、多様性があるのも特徴です。こうしたよい点を活かしながら、参加者とともに、先に触れた問題の解決に向けて努力し、研修の未来図を描いていくのも、スーパーバイザーとしての大切な役割の一つだと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
配属先である第8教育区は、タイ北部8県(チェンマイ県、チェンライ県、ランパーン県、ランプーン県、メーホーンソーン県、パヤオ県、プレー県、ナーン県)を管轄している。教育区スーパーバイザリーユニットには各教科のコンサルタント業務を行うスーパーバイザーがおり、青年教師も日本語担当のスーパーバイザーとして勤務している。具体的な業務は、タイ人日本語教員研修の運営、学校訪問・巡回指導による教員・学習者支援、現地教員ネットワーク支援、地域の日本語教育事情調査などである。
ロ.派遣先機関名称 タイ教育省普通教育局 第8教育区スーパーバイザリーユニット
Regional Supervisory Unit 8 (R.S.U.8), Department of General Education, Ministry of Education
ハ.所在地 2 Huaykaew Road, Tambol Changphuak, Amphur Muang, Chiang Mai 50300 Thailand
ニ.国際交流基金派遣者数 青年日本語教師:1名

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