世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) バンコック日本語センターは「扇の要」!(2003)

国際交流基金バンコック日本語センター
上野栄三、今枝亜紀、野畑理佳

 バンコック日本語センター(以下、センターとする)の業務は多岐にわたっていますが、大きく分けて、研修事業、一般講座の運営、教材制作事業、情報交流事業の四つになります。

先生を育て、先生を助ける

暁の寺の写真
暁の寺

 はじめに、研修事業について紹介します。研修事業の中でもっとも大規模なものは、中等学校(日本流に言えば、中学1年から高校3年までの6年制学校)の日本語教員を養成する事業です。私たちはこれを「新規研修」と呼んでいます(正式名は「中等学校現職教員日本語教師新規養成講座」です)。現在、タイの中等学校では、日本語はとても人気があるのですが、先生が不足しています。そこで、センターはタイ国教育省と共同でこの研修事業を1994年から始めました。受講者は英語や仏語などを担当している現役の中等学校教員です。研修期間は1年。毎年、20名近くの先生方が猛特訓を受けます。「新規研修」を修了した先生方は、翌年、自分の学校に戻り日本語の授業を担当します。更に、バンコック在住の先生方は「バンコック金曜研修1に参加しなければなりません。期間は1年間。毎週金曜にセンターで研修を受けます。また、地方の先生方には、「通信教育」が義務付けられています。一か月に3回、センターから指定の学習課題が郵送されます。研修期間は1年間です。
 2年間の研修を修了した先生方は、3年目の4月に浦和の日本語国際センターで7週間の研修を受けます。そして、帰国後、翌年の3月まで引き続き「バンコック金曜研修」または「通信教育」を受けます。こうして3年間の長い長い研修の旅が終わり、一人前の日本語教師として自立します。現在までに、149名の新人日本語教員を世に送り出しました。

北、南、そして東北の研修会

 2001年に北のチェンマイと南のソンクラーで「北部金曜研修と「南部金曜研修が、そして、2002年には東北のウボンラチャタニーで「東北部金曜研修が始まりました。三地域で約40名の日本語の先生が研修を受けています。「新規研修」修了生はもちろんのこと、それ以外の先生も、この研修に参加することができます。
 これ以外の研修事業としては、「集中研修」と「土曜研修」があります。

アラカルトでクラスを選べます

 次に、一般講座を紹介します。対象は中級以上の日本語能力を持つ学生、社会人です。今年度は17クラス開講、定員は335名です。総合日本語2・3、文法、読解、聴解、発音トレーニング、現代日本事情、ビジネス日本語、日本語コミュニケーションなど、非常に興味をそそられるクラスが目白押しです。バンコック市内には民間の日本語学校がたくさんありますが、中・上級のクラスは少ないので、センターの一般講座は中・上級の日本語を学ぼうとする人々にとって、非常に魅力のある講座になっています。

中等教育用日本語教科書作り、世界の先駆け!

バンコック新名所 スカイトレインの写真
バンコック新名所 スカイトレイン

 三つ目の大きな事業は教材制作事業です。
 現在、センターではタイ国中等教育用日本語教科書を開発・作成しています。これは後期中等教育(日本流に言えば高校1~3年生)用の日本語教科書で、第1分冊から第6分冊まであります。各分冊ともメインテキスト、練習帳、教師用指導書、聴解テープの4点からなっています。
 開発・作成に携わっているのは、大学日本語教員3名、中等学校日本語教員6名、センターの専任講師1名、派遣専門家1名です。派遣専門家以外はすべてタイ人教員です。日本人とタイ人、大学と高校とセンターの教員という混成部隊です。このような形の事業はほかにあまり例がないでしょう。編集会議は月2回。議論百出、壮烈なタイ語・日本語バトルが展開します。
 現在、第5分冊まで試用版が完成しています。今年度中にすべての試用版を完成し、2004年度には市販を開始する予定です。また、この事業はアドバイザー派遣、教材支援などの面で、国際交流基金日本語国際センターの支援・協力を受けています。

ネットワーク作りもぬかりなく

 さて、最後は情報交流事業です。センターでは現在二つの情報交流誌を発行しております。一つは「タワン」、もう一つは「紀要」です。タワンはタイ国内の日本語教育関係者のネットワーク作りの一環として作られたものです。内容はセンターの事業紹介、タイ国日本語教育事情、派遣専門家の日本語教育情報、教材の紹介、日本文化紹介などなど、多岐にわたっています。概ね年に2~3回発行されます。紀要はタイ国内の日本語研究者や日本語教師に、研究成果、授業の実践報告、調査等々の発表の場を提供しています。年1回の発行で、現在第6号を作成中です。

 これら以外にも、コンサルタント事業、日本語教材ライブラリーの運営、また、日本語弁論大会と日本語能力試験をタイ国元留学生協会と共同で行っています。
以上がバンコック日本語センターの業務のあらましです。

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(注意)
  1. 正式な名称は「バンコック中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  2. 正式な名称は「通信教育講座」です。
  3. 正式な名称は「北部タイ中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  4. 正式な名称は「南部タイ中等教育日本語教師金曜研修会」です。
  5. 正式な名称は「東北部タイ中等教育日本語教師研修会」です。
  6. 正式な名称は「日本語教師日本語集中研修会」です。
  7. 正式な名称は「日本語教師土曜研修会」です。
  8. 正式な名称は「一般講座・渡日前講座」です。
派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
国際交流基金バンコック日本語センターは、タイ教育省との共催による、他教科の現職中等教育機関教員を日本語教師として養成するプログラムを実施するほか、集中研修、金曜研修、土曜研修など定期的な教師向け研修会を実施。また、北部、南部、東北部に派遣されている派遣専門家、青年日本語教師と連携をとりながら、各地で研修会を開いたり、地方在住者のための通信教育も実施。現在、中等教育機関向けの日本語教科書を作成しており、試用段階に入っている。また、中・上級者向けの一般日本語講座も開講、ニューズレター「タワン」、研究誌「紀要」も発行している。そのほか、現地機関と共催で、日本語弁論大会や日本語能力試験も行なっている。
ロ.派遣先機関名称
The Japan Foundation Bangkok Language Center
ハ.所在地 10th Fl. Serm-Mit Tower, 159 Sukhumvit 21, Bangkok 10110
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:3名

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