世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 学校派遣と教育省派遣

ユパラート・ウィッタヤライ・スクール
木村智

今年度から、タイの青年日本語教師(以下 青年教師)の派遣形態が変わりました。これまでの教育省派遣が学校派遣となり、私も現在は、チェンマイにあるユパラート・ウィッタヤライ校に勤務しています。
 これを読んで、「あれっ?」と思った方もいるかもしれません。
 実は、タイの青年教師は以前、学校に派遣されていましたが、2001年から教育省派遣に変わりました。つまり、数年前に今回とまったく逆の変更があったのです。
 ですから、それをご存知の方は「また学校派遣?元に戻したの?なぜ?」と思ったのではないでしょうか。

 実は、今回の変更は派遣形態を単純に元に戻したものではありません。
 学校派遣から教育省派遣への切り替えは、日本語開講校の増加により、青年教師が一つの学校ではなく、地域のいくつかの学校を同時に支援する必要性に迫られたからでしたが、この状況は今も変わっていません。
 しかし、昨年度、教育省内で組織の再編成が行われ、その結果、数県をまとめて管轄していたスーパーバイザリーユニットが解体され、青年教師がそれまで所属していた教育事務所も消滅してしまいました。
 その後、青年教師は県の地域教育事務所というところへ異動できることになりましたが、この事務所は以前のものと違い、管轄地域が非常に狭く、一つの県を更にいくつかに分割した地域のみを担当するものでした。したがって、私たちが目指す「広範囲での支援」とは相容れない部分があり、そうした状況から、今回、「新たな形での学校派遣」という派遣形態が選ばれたのです。
 それでは、派遣形態の変更により、青年教師の業務が具体的にどのように変わったのでしょうか。

1.タイ北部中等教育機関の日本語教育支援

金曜研修の写真
金曜研修

 これが青年教師のメイン業務となります。派遣形態が変わっても、青年教師にとって、担当地域内のすべての日本語開講校を支援していくことが最重要であることに変わりはありません。
 これまで同様、タイ人日本語教員を対象とした教師研修会(通称:金曜研修会)で教員のレベルアップを図り、学校訪問・巡回指導を通じて学習者である中学生・高校生を支援していきます。
 タイ北部の場合は、現在も新たに日本語を開講する学校があり、学習者も増加傾向にあります。また、昨年度からチェンマイ大学のクォータ試験(北部の受験生用に優先枠を設けたテスト)が日本語で受験可能となったことから、大学入試をより意識した指導も必要となり、タイ人教員は今まで以上に高いレベルの日本語能力・教授能力を求められています。
 青年教師が金曜研修会を始めてから約3年が経ち、教員の能力はレベルアップしてきていると感じていますが、未だ十分とは言い難い状況です。教員たちにもそのような自覚があり、金曜研修会への参加者は毎年増え続けています。
 その他、地域のタイ人教員が連携して自主的活動を行ったり、情報を共有したりできるように協力していくことも重要な業務の一つです。

2.派遣先機関支援

高校1年生(ユパラート校)の写真
高校1年生(ユパラート校)

 この業務が昨年度と異なるところです。
派遣先機関であるユパラート・ウィッタヤライ校は、今年度から日本語教育を始めました。同僚のタイ人教員が1名いますが、教授経験がほとんどないため、学校内に日本語教育に精通した人が一人もいないという状態です。
 したがって、青年教師は、新しい日本語コースが順調に軌道に乗るように、あらゆる面で協力していかなければなりません。
 先ほども述べた通り、青年教師は担当地域全体の支援を優先しなければならないので、派遣先機関で、タイ人教員と一緒に授業を行うのは1週間に4コマ程度ですが、コースデザインやシラバス決定、教材・教具の選択など、多くの場面で助言を行い、タイ人の同僚教師を側面から支えていくことで派遣先機関の日本語教育に貢献していきたいと考えています。

 このように、昨年度までの業務であった「タイ北部中等教育機関の日本語教育支援」はそのままに、新たに「派遣先機関支援」を合わせたのが今年度の業務と言えます。
 異なる二つの業務を両立させ、かつ、支援の質を落とさないということは非常に難しいことですが、今後は、学校派遣と教育省派遣の両方を併せ持つ役割を上手に活かし、個々の学校現場と地域全体がしっかりつながるような支援を目指していきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県の中心校で、日本語コースは今年度からの開講である。将来的には日本語コースも地域のリーダー的役割を担うことが期待される。青年教師は、この派遣先機関に勤務しながら、これまで同様、タイ人日本語教員のための教師研修会(金曜研修会)運営や学校訪問・巡回指導、教員ネットワーク形成支援といった地域全体への支援を行う。また、それと平行して、派遣先機関に対し、チームティーチングによる授業や日本語コース全般への助言などの支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ・スクール
Yupparaj Wittayalai School
ハ.所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
ニ.国際交流基金派遣者数 青年教師:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
第2外国語グループ
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
M4(高校1年):専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   52名
(2) 学習の主な動機 漫画や音楽、ファッション、ハイテクなども含めた日本文化への興味他
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 なし

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