世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) タイ北部における日本語教育事情

ユパラート・ウィッタヤライ・スクール
鈴木由美子

 ホームページをご覧の皆さん、こんにちは。2005年5月からチェンマイ県ユパラート・ウィッタヤライ高校にジュニア専門家として派遣されました鈴木由美子と申します。

 2004年度の調査によると、私の担当地域で日本語教育を実施している中等教育機関は40校でしたが、現在(2005年6月25日)、今年度に5校開講した学校があることを確認しています。これからも中等教育における日本語教育の需要はますます増えることが予想されます。
 昨年度同様チェンマイ旧市街にある高校に派遣されています。この学校は前任者である木村智青年教師が一年間在籍していたため、業務も非常にスムーズに行うことができます。
 以下、業務について簡単に説明したいと思います。

タイ北部教師研修会(金曜研修)運営

金曜研修の写真
金曜研修

 2001年度から開始された金曜研修も今年で5年目を迎えました。参加者18名のうち、新規研修出身者が半数を割り、チェンマイ大学やラチャパットチェンマイ大学などで日本語を主専攻で卒業してまもない若い日本語教員が多くなりました。
 参加者からは日本語運用能力の向上にとても熱意を感じます。一方で教授法についても「このままではいけない」という危機意識は持ちながらも「どのように教えればいいのか分からない」という声も聞くので、経験の長い先生方の知恵と新米教師のアイデアをうまく融合した研修ができるよう計画を立てています。
 また、遠方から来る先生方にも「来て良かった!」と思ってもらえるよう、有益な情報を提供するための情報収集や図書の貸し出しなどを行うための閲覧教材の管理も業務のうちです。

タイ北部日本語中等教育支援

 上記の金曜研修もこのカテゴリーに入ります。金曜研修以外に、ジュニア専門家がタイ北部にある高校に行って指導を行うことも業務の一つです。(巡回指導)
 この活動は、普段は孤軍奮闘していらっしゃるタイ人日本語教員に授業について助言もできますし、日本人と接する機会の少ない学習者に少しでも日本語で話してもらう機会を設けるものでもあります。
 直接学校を見させてもらうことで、どのような授業を行っているのか把握できますし、何校も巡回指導することで、タイ北部全体の日本語教育事情について把握できるかと思っています。
 先生方の悩みは「学生は日本の歌手に興味を持っており、CDで聞きたいと言われるが、どこで入手したらいいのか分からない」といったものから「授業コマ数が毎年増え続けており、自分一人でまかないきれないので、日本人のボランティアの人に教えに来てもらいたい」というようなものです。
 このような悩みを解消するために、ネットワーク形成は非常に大切であると思います。
 各先生の得意分野を活かし、音楽だったらあの先生、日本人ボランティアに詳しいのはあの先生、などキャラクターが際立つようなグループにしていけたらと願っています。

派遣先機関日本語教育

M4(高校一年生)の授業風景の写真
M4(高校一年生)の授業風景

 昨年度から開講した日本語コースも今年度は400名以上が登録する大人気ぶりとなりました。彼らの多くは「日本語を勉強することがかっこいい」という動機で勉強しており、日本についてあまり興味がない学生も少なくありません。
 同僚のタイ人教師は2人とも若く、経験も少ない人たちです。
 今年から勉強を始めたM4(高校1年生)がなかなかひらがなを覚えないため、どうしたら彼らにひらがなを覚えさせることができるか、タイ人教師である同僚とミーティングを行いました。
 ミーティングの際、決してこちらが答えを用意するのではなく、彼らに答えを見つけてもらおうと気をつけています。次の日、授業で同僚は森山直太郎氏の「さくら」をひらがなで入力したものを学生に配り、曲を聞かせました。普段は全然集中力のない学生が必死に文字を追いかけていました。曲が終わった後にはみんな笑顔で、なぜだか拍手が起こりました。もう一度聞きたいと言って、ひらがなを読みながら歌っている学生の姿を見て、同僚が自分で答えを見つけることができたことに、深く感動しました。この仕事をやっていて本当によかったと思えた授業でした。
 この高校は校長先生をはじめ教頭先生や第二外国語部の主任の先生などみなさん好意的で、将来この学校にタイ北部の中心的な役割を担う日本語センターを作る構想があるとおっしゃっています。そのためにも、タイ人日本語教員の日本語及び教授能力向上は不可欠なので、なるべく多くの時間彼らと過ごすようにしています。彼らの考えていることや感じていることを知り、それに対して自分ができることが明確になるからです。

 あっという間に一日が終わってしまいますが、充実した毎日です。
 前任者の方々の蒔いた種がようやく芽を吹いてきたような印象を受けています。今後は「タイ北部全体への日本語教育支援」と「派遣先機関での日本語教育支援」の両方が花開くことを信じて業務に励みたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県では伝統のある有名な学校で、将来的にはタイ北部における日本語センターとしての役割が期待されている学校である。授業コマ数は昨年度から約4倍に増え、新たに若いタイ人日本語教員を増員した。ジュニア専門家は昨年度同様、タイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といった地域全体への支援を行う。また、それと平行して、派遣先機関に対し、チームティーチングによる授業や日本語コース全般への助言などの支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ・スクール
Yupparaj Wittayalai School
ハ.所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
第二外国語グループ
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
教師研修、選択必修:高校1,2年、選択:中学2,3年
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   教師研修20名、選択必修100名、選択300名程度
(2) 学習の主な動機 日本の芸能人やマンガへの興味など。
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 なし

ページトップへ戻る