世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) タイの大学初の日本語教員養成課程

コンケン大学教育学部
坪根由香里

コンケン大学教育学部にタイ初の日本語教員養成課程

大学正門の写真
大学正門

 「コンケンはバンコクのどこにあるの?」と聞かれたことがありますが、ここコンケンはバンコクから飛行機で約1時間のタイ東北地方にあります。コンケン大学は別名「赤土の大学(モー・ディンデン)」と呼ばれる東北地方の唯一の総合大学で、学生数17,000人、敷地面積900ヘクタール(東京ドーム193個分)の広大なキャンパスを有する大学です。この大学にタイで初めての日本語教員養成課程(日本語教育プログラム)ができたのは昨年(2004年)のことです。
 タイで公立中等教育機関の教員になるためには、大学の教育学部を修了しなくてはいけないのですが、これまで教育学部に日本語教育専攻はありませんでした。そのため、他教科の教師が研修を受けるなどして日本語を教えているのが実情です。そのような状況の中で、昨年、コンケン大学教育学部に日本語教員養成課程が開設されたことは画期的なことと言えます。2004年に入った学生たちは、実習を含め5年間の大学生活を経て、タイで初めての日本語教育を専門とした中等教員となるのです。

専門家派遣開始

 そのコンケン大学に日本語教育専門家を派遣することが決まり、2005年4月末に私が着任しました。日本語教育プログラム開設後間もないため、授業を担当する教員の確保が第一の課題です。現在、日本語教育を専門とする現地教員(タイ人、日本人)はおらず、日本で学位を取って帰国した他の専攻のタイ人教師が一部授業に携わってはいますが、日本語に関する授業はほぼ私ともう1名の日本人教員(1年契約)が行っています。今後、毎年新入生が入り、また、日本語教育の専門科目も入ってくるため、日本語教育を専門とした教員を採用することが必要となります。

担当業務

2年生の会話クラスの写真
2年生の会話クラス

 日本語教育プログラムの定員は25名で、現在1年生21名、2年生23名が在籍しています。担当科目は、1年生の「日本語音声学」、2年生の「会話」、「読解と作文」の計11コマです。学生たちは礼儀正しく、前向きに学習に取り組んでおり、彼らの態度からはタイの学校教育が人間形成にも非常に重要な役割を果たしていることがうかがえます。
 授業を担当することの他に、現在設定されているカリキュラムの検討も行っています。タイ国内の他大学、他国の大学の教育学部、日本の大学のカリキュラム資料を収集し、昨年作成された当大学のカリキュラムと時間数、単位数、科目内容等を比較・検討しています。当大学には人文社会学部日本語科(2005年度より主専攻)もあり、教育学部の学生も人文社会学部の日本語科目を履修するシステムになっているため、そちらの科目との関係も考えながら改定作業を進めることになります。
 その他、所蔵図書のデータベース化に向けて現在、準備を行っているところです。

今後の課題

 赴任後間もないため、現在は上記が主な業務になっていますが、今後、現地教員が採用されれば、現地教員研修も行っていくことになります。また、大学内だけでなく、学外に業務を広げていくことも今後必要になってきます。近隣の日本語教育機関と連携し、東北地方の教師会を活性化させるための支援を行うことも課題の一つです。
 近年、タイの中等教育における日本語学習者数はかなりの増加傾向にあります。コンケン大学教育学部への中等教育機関からの期待は大きいと聞きます。そのニーズをしっかり見極め、現場の先生方の声も聞きながら未来の日本語教員たちが立派に育つ手伝いができればと思います。「日本が好きです!」という学生たちがさらに日本を、日本語を好きになってくれることを祈りながら。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
コンケン大学は1964年にタイ東北部で最初に設立された大学で、17学部および大学院を有するタイ東北部最大の総合大学である。教育学部、人文社会学部で日本語教育を行っており、専門家は現在、教育学部日本語教育プログラムにおける日本語教授、カリキュラム改定への助言を主な業務としている。
ロ.派遣先機関名称 コンケン大学
Khon Kaen University
ハ.所在地 123 Mitraparp Highway, Khon Kaen City 40002 THAILAND
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
コンケン大学教育学部日本語教育プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   選択:1995年~   
主専攻:2004年~
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2005年
(ロ)コース種別
主専攻、選択
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻:1年生21名、2年生23名、選択:25名
(2) 学習の主な動機 日本・日本人・日本語・日本文化への興味、日本語教師希望
(3) 卒業後の主な進路 まだ卒業者なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
同上
(5) 日本への留学人数 現在はなし

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