世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 地域につながっていく日本語教育の実現に向けて -北部タイ日本語教育支援-

ユパラート・ウィッタヤライ校
鈴木由美子

 タイ北部の中心県であるチェンマイ県へ派遣されて2年目を迎えました。ジュニア派遣専門家としての業務は、「1.タイ北部中等教育機関の日本語教育支援」「2.派遣先機関支援」に加え、2005年3月の専門家撤退後は「3.地域支援」も求められるようなってきました。
それぞれの支援の内容は多岐に渡りますが、ここでは昨年度1年間の主な支援活動を振り返ってみたいと思います。

1.タイ北部中等教育機関の日本語教育支援

1-1.北部タイ日本語教師研修会

 金曜日に行われる北部タイ日本語教師研修会は今年で6年目を迎えました。この研修会は当初、国際交流基金バンコク日本文化センター主催の「中等学校現職教員日本語教師新規養成講座(以下「新規研修」と略す)」を修了した教員のフォローを目的にしたものでしたが、現在では新規研修出身の教員に加え大学で主専攻を修了した若手の教員も参加しています。
この研修会の参加メンバーが中心となって2004年に「北部タイ中等教育日本語教師会(以下「中等教師会」と略す)が発足しました。

1-2.北部タイ中学・高校日本語コンテスト

 先に述べた「中等教師会」主催による「第2回北部タイ中学・高校日本語コンテスト」が2006年2月10日に行われました。会場は昨年同様ジュニア専門家派遣先機関であるユパラート・ウィッタヤライ校です。今年が2回目で、昨年度はスピーチと朗読の2部門でしたが、今年は硬筆とクイズ部門を合わせた4部門のコンテストを実施しました。
参加者は出場者だけで25校240人にのぼり、チェンマイ県だけではなく、チェンライ、ランプーン、ランパーン、スコータイ各県からの参加がありました。
 報告者は参加する各学校の学生のために巡回指導を行い、また開催に向け後援団体と主催者である教員たちとの橋渡し役を行いました。

2.派遣先機関支援

 派遣先で同僚のタイ人教員にシラバスデザインやテスト作成、日々の授業についてアドバイスを行うほかに、8年間続いている派遣先機関と京都にある高等学校との文化交流プログラムのお手伝い、日本祭では浴衣の着付けや日本料理、外国語グループの発表会では日本語での劇指導、大学や民間の日本語学校で行われる様々な日本語関係のコンテスト参加のための指導などが主な支援活動です。とにかく次から次へとイベントが目白押しです。
 派遣先機関には高校1年生から3年生までの日本語プログラム以外にも中学生対象の選択コースがあります。それぞれのコースのカリキュラムデザインや学習環境ついて学校側と協議を重ね、改善を図ってもらえるようにしました。

3.地域支援

3-1.北部タイ・日文化交流祭

派遣先機関での文化祭の写真
派遣先機関での文化祭

 専門家がいない現在、地域全体への支援の役割も担うようになりました。今年から在チェンマイ総領事館の呼びかけで、北部タイにおける初の大学スピーチコンテストが行われました。本来は中等教育における日本語教育支援が報告者の業務ですが、お手伝いをさせていただきました。北部タイで日本語を開講している10大学から多数の応募があり、当日は選ばれた30人がスピーチを競いました。
 この催しはチェンマイの日本人会主催の「第2回北部タイ・日文化交流祭(以下「交流祭」と略す)」の一部として開催されました。
 交流祭ではチェンマイの中心部にある広場で書道や剣道などのデモンストレーション、盆踊りなどが行われ、フィナーレは日曜歩行者天国を阿波踊りで練り歩くという日本に関心のないタイ人までも巻き込む一大イベントでした。

3-2.北部タイ日本語教師会

北部タイ中等教育日本語教師会のメンバーでJFバンコク日本文化センター主催の写真展見学の写真
北部タイ中等教育日本語教師会のメンバーでJFバンコク日本文化センター主催の写真展見学

 今年度から北部タイ日本語教師会の運営委員になりました。地域のリーダー的役割の日本語教育関係者らとともに、北部タイの地域課題を取り上げていこうと考えています。北部タイは長期滞在者が多く、日本語学習者にとってコミュニケーションの機会は多いはずなのですが、教育機関と日本人コミュニティーの連携がうまくいっているとはまだ言えない状況です。また、バンコク周辺以外では比較的多いと言われる日系企業への就職もどのような日本語能力が求められるのか現地で教えている日本語教師らが把握しているとは言えません。北部タイの特色である長期滞在者と日系企業、これらの関係者らを巻き込んだ会にして北部タイの日本語教育をさらに盛り上げていきたいと考えています。

4.さいごに

 以上、昨年1年間の活動とこれからの活動について述べました。北部タイにおける日本語教育熱をひしひしと感じながら、今後も地域社会に還元できる日本語教育支援を行っていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県の伝統ある有名校で、将来的にはタイ北部における中等教育日本語センターとしての役割が期待されている学校である。ジュニア専門家は昨年度同様、タイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といった地域全体への支援を行う。また、それと平行して、派遣先機関に対し、チームティーチングによる授業や日本語コース全般への助言などの支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ・スクール
Yupparaj Wittayalai School
ハ.所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
第二外国語グループ
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
選択必修:高校1,2,3年 選択:中学2,3年 高校2,3年
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択必修、選択で各40名程度(全体で339名)
(2) 学習の主な動機 日本の芸能人やマンガへの興味など。
(3) 卒業後の主な進路 卒業生はまだいない
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 なし

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