世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) コンケン大学:タイの大学で唯一の日本語教員養成課程(2006)

コンケン大学教育学部
坪根由香里

1. コンケン大学教育学部日本語教育プログラム

大学正門の写真
大学正門

 「コンケン」という地名を聞いたことがありますか?バンコク、チェンマイ、プーケットなどのような観光地ではないため、日本人にはコンケンという地名はなじみが薄いかもしれません。コンケンはバンコクから飛行機で約1時間のタイ東北地方にあります。コンケン大学は東北地方唯一の総合大学で、学生数17,000人、敷地面積900ヘクタール(東京ドーム193個分)の広大なキャンパスを有する大学です。この大学に2004年、タイで初めての日本語教員養成課程(日本語教育プログラム)ができました。そして、2005年には日本語教育専門家の派遣が開始されました。

 タイで公立中等教育機関の教員になるためには、大学の教育学部を修了しなくてはいけないのですが、これまで教育学部に日本語教育専攻はありませんでした。そのため、他教科の教師が研修を受けるなどして日本語を教えているのが実情です。そのような状況の中で、2004年、コンケン大学教育学部に日本語教員養成課程が開設されたことは画期的なことと言えます。2004年に入った学生たちは、実習を含め5年間の大学生活を経て、タイで初めての日本語教育を専門とした中等教員となるのです。今年2006年には3期生が入学しました。当大学は人文社会学部にも日本語科(2005年度より主専攻)があり、東北地方の日本語教育の中心だと言えるでしょう。

2. 担当業務

作文クラス:日本の大学生に電子メールを送るの写真
作文クラス:日本の大学生に電子メールを送る

 日本語教育プログラムの定員は25名で、現在1年生34名、2年生20名、3年生23名が在籍しています。2006年前期の担当科目は、1年生の「日本語音声学」、2年生の「読解と作文」、3年生の「読解と作文」「社会言語学」「日本語の構造」です。語学以外の科目はタイ語での説明が必要であるため「日本語音声学」「社会言語学」はタイ人教員とのティームティーチングを行っています。コンケンで日本人に会うことは稀で、生きた日本語を使う機会がないため、日本人留学生にクラスに来てもらったり、日本の大学と合同でメール交換プロジェクトを行ったりして、学生たちの動機付けにしています。その他、時間的に可能な場合は、一般人対象の夜のコースも開講しています。学生たちは礼儀正しく、前向きに学習に取り組んでおり、彼らの態度からはタイの学校教育が人間形成にも非常に重要な役割を果たしていることがうかがえます。

 授業を担当することの他にも日本語教育に関する様々な業務を行っています。まずカリキュラムの改定作業です。タイ国内の他大学、他国の大学の教育学部、日本の大学のカリキュラム資料を収集し、2004年に作成された当大学のカリキュラムと時間数、単位数、科目内容等を比較・検討、それを複数の外部の先生にチェックしていただき、改定案を作成しました。また、各科目の新シラバスも作成しています。

 当プログラムは主専攻ができてまだ2年であるため、学生が日本に留学するルートがあまりありません。そのため、様々なルートを使って学生が日本に留学できる道を模索しています。いくつかの大学と交換協定を締結したり、合同プロジェクトの形で日本の大学院生のインターンシップとしての受け入れと、タイの学生の日本への送り出しを行ったりと、その成果が見えはじめています。こうして学生が少しずつ日本に行くのを見て、そのチャンスをより多くの学生に与えてあげたいという思いを強くしています。

今後の課題

 現在の大きな課題の1つとして、授業を担当する教員の確保があります。現在、日本語教育を専門とするタイ人教員はおらず、他の専攻のタイ人教員が一部の授業に携わってはいますが、日本語に関する授業はほぼ私ともう1名の日本人教員が行っています。今後2年は学生数が増え続けることになり、また、日本語教育の専門科目もさらに入ってくるため、日本語教育を専門としたタイ人教員を複数採用することが必要となります。特に地方の大学で教員を探すのは非常に難しく、組織として完成するにはまだ時間がかかりそうです。

 現地教員が採用されれば、現地教員研修も行っていくことになります。また、学内だけでなく、東北地方全体の日本語教育への支援も必要です。昨年来、懸案事項となっている教師会の活性化も課題の一つです。周辺の日本語教師からも、教師会復活を期待する声を聞きますが、現在、タイ人教員が中心となって継続的に開催可能なものができるよう模索しているところです。

 今はまだ卒業生も出しておらず、今後越えていかなければならない山がいくつもあると思いますが、将来花が咲くように、種を蒔くところには蒔き、芽が出たところには水やりをして、育てていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
コンケン大学は1964年にタイ東北部で最初に設立された大学で、17学部および大学院を有するタイ東北部最大の総合大学である。教育学部、人文社会学部で日本語教育を行っており、専門家は現在、教育学部日本語教育プログラムにおける日本語教授、カリキュラム改定、新シラバス作成等を主な業務としている。
ロ.派遣先機関名称 コンケン大学
Khon Kaen University
ハ.所在地 123 Mitraparp Highway, Khon Kaen City 40002 THAILAND
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
コンケン大学教育学部日本語教育プログラム
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   選択:1995年~   
主専攻:2004年~
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2005年
(ロ)コース種別
主専攻、選択、一般人対象コース
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻:1年生34名、2年生20名、3年生23名、選択:30名
(2) 学習の主な動機 日本・日本人・日本語・日本文化への興味、日本語教師希望
(3) 卒業後の主な進路 まだ卒業者なし
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
同上
(5) 日本への留学人数 5名程度

ページトップへ戻る