世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語教育の地域格差を少しでも少なく

ユパラート・ウィッタヤライ校
内田 陽子

1.赴任先はどんなところ?

 「タイで生活していて、何か必要なものはない?日本から送るから。」日本に居る友人にそう言われても、特に思いつくものがない、それが私の赴任先、チェンマイです。少々大げさかもしれませんが、日本食材を扱う店も、日本の本を扱う店も、日本人が経営するケーキ屋もあり、なんとダイソーまで進出している、それがチェンマイなのです。
 ただし、正確に言えば、それはチェンマイ県のごく一部、チェンマイ市周辺だけの話です。
 このチェンマイ市のほぼ真ん中に位置するのが、現在私がいるユッパラート・ウィッタヤライ校です。既に2代にわたって、この学校にはジュニア専門家が派遣されており、昨年度は日本語コース初の卒業生が巣立っていきました。機材、教材も少しずつ整いつつあり、将来的にこの学校に日本語教育センターが設置されるという構想も少しずつ現実味を帯びてきています。

2.赴任先の学校で何をしているの?

M4(高校1年)の日本語授業風景の写真
M4(高校1年)の日本語授業風景

 現在ユパラート・ウィッタヤライ校で一緒に働いているタイ人日本語教師は、前任のジュニア専門家と活動をしてきたことで、コミュニケーションもスムーズにとれ、自分で創意工夫をしながら授業をしています。現在、高校1年~3年の「選択必修科目」(週6時間)と中学2~3年の「選択科目」(週1時間)が開講されています。彼らと共に授業を改善し、カリキュラムを調整していくのが私の仕事だと言えるでしょう。指導的立場というより、よき協力者として活動していきたいと考えています。
 今後、京都の高校との文化交流プログラム、日本祭、外国語グループ発表などイベントが続いていきます。これらの手伝いで忙しくなりそうですが、楽しみでもあります。

3.なぜその学校に派遣されたの?

 私の大切な業務の一つがタイ人日本語教師のための教師研修の運営、実施です。2001年より開始され、地域の先生の協力もあってこれまで6年にわたって教師研修会が続けられてきました。
 現在の教師研修の実施会場が、赴任先であるユパラート・ウィッタヤライ校です。ユパラート・ウィッタヤライ校は創立102年を迎える伝統校であり、チェンマイ県公立中等教育機関の中心校と言えます。それと同時に、チェンマイ県の中心に位置し、近隣の学校から集いやすい場所でもあるのです。
 しかし、それでも遠い他県から来るには車やバスで数時間かけなければなりません。それでも、自分の日本語のブラッシュアップを行いたい、情報交換を行いたいという情熱を持って、先生方は毎回集ってきます。長い時間かけてきて良かったと思われるよう、そして長年参加してきた先生に飽きられないよう創意工夫が必要です。

4.日本語の先生ってどんな人たち?

「先生の日」に向けて飾りを作る学生たちの写真
「先生の日」に向けて飾りを作る学生たち

 タイの中等教育機関で教えている先生のほとんどはタイ人の教師です。
 元は他の科目を教えていたが、国際交流基金バンコク日本文化センター主催の「中等学校現職教員日本語教師新規養成講座」を修了することで、日本語も担当するようになった教員。
 大学で日本語主専攻を修了し、日本語を教えている教員。
 日本語学校で学び、日本語を教えている教員。
 大別するとこのようになります。また日本語能力も日本語能力試験4級レベルから2級レベルまで様々です。このように様々なバックグラウンドの先生がいますが、北部タイの教師研修会では互いにバックグラウンドを認めつつ良い協力関係が築かれていると感じます。
 2004年には、その教師研修会から北部タイ中等教育日本語教師会が発足。さらに、このメンバーが中心になって実施する「北部タイ中学・高校日本語コンテスト」も昨年度で3回目を迎えました。先生方は、このような日本語イベントの開催に非常に熱心です。それぞれ学校独自のコンテスト・イベントも数多く開催されており、これらを支援していくことが期待されています。

5.北タイで日本語を教えている学校って多いの?

 昨年度、北部タイ中等教育機関の日本語クラス開講が確認できたのが46校です。先日北部タイ8県にある280近くの中等教育機関に開講状況を確認するためのアンケートを出したのですが、更に何校か今年開講したとの情報が入っています。
 これらの学校には、チェンマイから日帰りでは行ってこられないような遠い地にある学校も含まれます。教材がない、教師研修に行きたいけどチェンマイまで行けない、日本語を使う機会がない、・・・という話が聞こえてきています。また地方だけではありません。一人で何百人もの学生を抱えている先生、日本語力に不安を抱きながら1年間かけてひらがなを教えている先生など、「日本語クラス」という名の下に様々な形態の問題がかくれています。
 私の任務の1つに日本語開講校の巡回指導がありますが、1年の中で何回も巡回できるものではありません。それでも、0よりは1と、回っていきたいと思います。また少しでも多くの学校や先生に、中央部に集まってきている先生方の知識、経験を伝え、広げるにはどうしたらいいのか。これからいろいろな学校に足を運びつつ、考えていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県の伝統ある有名校で、タイ北部における中等教育日本語センターとしての役割が期待されている学校である。今年初めて、日本語講座から卒業生を出し、多くの学生が地元有名大学に進学した。ジュニア専門家は昨年度同様、タイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といった地域全体への支援を行う。また、それと平行して、派遣先機関に対し、チームティーチングによる授業や日本語コース全般への助言などの支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ校
Yupparaj Wittayalai School
ハ.所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
第二外国語グループ
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
選択必修:高校1,2,3年 選択:中学2,3年
(ハ)現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択必修:138名、選択:123名
(2) 学習の主な動機 日本の芸能人やマンガへの興味など。
(3) 卒業後の主な進路 大学進学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 なし

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