世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 北部タイ中等教育の現場から

北部タイ中等教育機関(ユパラート・ウィッタヤライ校)
内田 陽子

1.北部タイの日本語関連イベント

 北部タイ中等教育機関(以下、中学高校*1)担当としてチェンマイにあるユパラート・ウィッタヤライ校に赴任して2年がたちました。タイの中学高校を訪問し、週末研修を重ねて感じるのは、校内、校外ともにイベントが大変多いということです。もちろん、日本語関連のイベントも数多く行われています。タイの高校で行う日本語イベントって、どんなことをするのでしょう?今回は、2つのイベントをご紹介したいと思います。

(1)ユパラート・ウィッタヤライ校 日本語開講5周年記念祭

日本語プログラム5周年の記念の写真
日本語プログラム5周年の記念写真

 私がデスクを置くユパラート・ウィッタヤライ校は、昨年度で日本語開講5年目を迎え、これを記念して昨年10月、日本語プログラム主催の5周年記念祭が行われました。記念祭では、料理、折り紙や書道などの文化紹介、歌、劇、ダンスなど日本に関する様々なアクティビティが行われ、卒業生も駆け付けて応援してくれました。

 実は、このとき司会をした学生の一人は、日本語に対して消極的な男子学生でした。そして、記念写真(掲載写真をご覧ください)をとった一人も、同じく授業になかなか来ない男子学生だったのです。しかし、このような活動では、その彼らが大活躍。もう少し、日本語に力を入れてくれれば万々歳ですが、まずはこのような活動を通して、日本語プログラムの一員になってくれたことを嬉しく思いました。

 今回は5周年記念祭をご紹介しましたが、他にも日本祭や日本語キャンプなど教員と学生が協力しつつ作り上げるイベントが、各学校で行われています。

(2)北部タイ中等教育日本語教師会 日本語教育セミナー

中等教育の教師が作り上げた日本語教育セミナーの写真
中等教育の教師が作り上げた
日本語教育セミナー

 次は、教師のイベントです。北部タイには、中等教育の日本語教員で構成される「北部タイ中等教育日本語教師会」(以下、中等教師会)があります。

 中等教師会は、毎年北部タイ中学高校日本語コンテストを開催しています。昨年度で5 回目を迎え、今回は開催資金集めのために日本語教育セミナーを開催し、その参加費用をコンテストの運営資金に充てました。セミナーには、幸いにしてJFバンコク日本文化センターから講師を呼ぶことができ、北部タイから30名以上の教員が集まりました。午前は講義「書くことを教える」、午後はコンテスト準備会議を行いました。この会議は、実施要項の確認と、学生にどんな準備をさせたらいいかを、経験ある教員がアドバイスする場となりました。

 このように資金集めに端を発して始まった日本語教育セミナーですが、普段会えない教員が一堂に会したこと、そしてコンテストのために共通の認識を持ち、準備のノウハウを共有でき、タイ北部の日本語教育を支援する意味ある会議になったと思います。1回限りで終わらせず、ぜひ第2回も開催してほしいと考えています。

 そして、コンテストは、セミナー開催時の参加費と、チェンマイ日本人会からの寄付のおかげで、無事実施することができました。

2.北部タイにおける日本語教師の課題

(1)タイ人の若手教員の問題

 北部タイでは、毎年、日本語開講校及び教員が増え続けています。昨年度の私の調査では、北部タイ上部8県で86名の教員が日本語を教えていることがわかりました。内訳は、タイ人教員が60名、日本人教員が26名です。このように多くのタイ人教員が日本語教育を担っています。

 タイ人の教員ですが、公立高校で働く公務員(23名)、公立校契約講師(23名)、私立校契約講師(14名)に分けられます。

 公務員教員の多くが、JFバンコク日本文化センターで実施されている「中等学校現職教員日本語教師新規研修養成講座」の修了生です。2009年度で12期生までが修了し、タイ全国で活躍しています。

 一方で、大学の日本語主専攻を卒業したものの、公務員の採用枠がないために、公務員ではなく契約講師として働く教員が増えています。

 北部タイの場合、現在公立校で働く20 代の教員であれば、ほぼ契約講師です。契約講師には、昇給、保険などの保障がなく、毎年教員入れ替わりが多く起こり、そのたびに新たな教員を探さなければなりません。この問題は、タイの教員採用システムに関わる問題ですが、今後も動向を追い続ける必要があると感じています。

(2)日本人教員の受け入れのために

 日本語を教えている学校を訪問すると、日本人の先生に来てほしいとよく言われます。北部タイは在住日本人が多い地域ですが、交通の不便な地方の学校になると、来てくれる日本人がなかなかいないというのが実情です。

 では、日本人がいれば問題解決かというと、そうではありません。日本とタイの仕事の仕方の違い、考え方の違いなどから、双方がストレスを抱えている場合が多く見られます。

 JF バンコク日本文化センターでは、年2回、タイ人の日本語教員を対象に「集中研修」という1週間集中型の研修を開催しています。2009年4月の同研修において、私は「日本人の先生に対するオリエンテーション」というテーマで研修を行いました。もし、日本語がほとんど話せない状態で、タイ語の教員として日本の学校に配属されたら、どう感じるか。まず学校のシステム、仕事の仕方などの情報を説明してもらいたいのではないか・・・。このような問いかけから始め、オリエンテーションの必要性を感じてもらい、オリエンテーションを日本語で行う練習をしました。この集中研修の内容は、北部チェンマイでも実施しました。

 今後も、タイ人の教員と日本人の教員が協力しながら働けるような環境づくりが必要だと考えています。

*1 タイの中等教育は、前期3年、後期3年の6年制で、ここでは中学高校と記述している。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県の伝統ある有名校で、タイ北部における中等教育日本語センターとしての役割が期待されている学校である。日本語コースは今年度コンネンドで6年目で、ジュニア専門家派遣も6年目に入る。ジュニア専門家はタイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といった地域全体への支援を行う。また、それと平行して、派遣先機関に対し、チームティーチングによる授業や日本語コース全般への助言などの支援を行う。
ロ.派遣先機関名称 タイ北部中等教育機関(ユパラート・ウィッタヤライ校)
Yupparaj Wittayalai School
ハ.所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
第二外国語グループ
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   2004年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2004年
(ロ)コース種別
選択必修:高校1,2,3年 選択:中学1,2年
(ハ)現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   選択必修:139名、選択:115名
(2) 学習の主な動機 日本の芸能人やマンガへの興味など。
(3) 卒業後の主な進路 大学進学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
(5) 日本への留学人数 1名

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