世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 時は今!

ウドンピッタヤヌクーン校
太原ゆか

タイ東北部での地域支援活動

 昨年に引き続き、タイ東北部のウドンタニ県にあるウドンピッタヤヌクーン校に拠点を置き、タイ東北部の日本語教育の発展のために、活動しています。

 タイ東北部はその広さと公共交通の脆弱さのため、学校訪問や教師研修などの教員支援が難しい地域です。また、教員同士の連絡もあまり密ではありません。そこで、新たな試みとして、Eメールをつかった通信研修を行うことになりました。今年は、日本語力の維持向上を目標とした初中級レベルの1コースのみを開講します。また、年4回程度、タイ東北部の各地でスクーリングも行う予定です。スクーリングでは教え方を中心に扱いますが、一方的な講義ではなく、教員同士が課題を持ち寄り、みんなで改善策を模索する方法をとります。今、現場で差し迫った課題を抱えている教員にとって、経験豊富な先輩教員の知恵とIT技術や若者文化に詳しい若い教員との交流のほうが、より効果的で実効性のある改善方法を生み出せると思うからです。こうした交流が根付き、タイ東北部の日本語教員ネットワークへと発展していくことを願ってやみません。

 タイ東北部は大きく北地域と南地域に分けることができます。

 南地域にはウボンラチャタニ県内の中等教員を中心とした小規模な教員グループが定着しています。ウボンラチャタニ県は、県中心部にタイ人・日本人合わせて10人以上の日本語教員がおり、教員密度が高く、連絡を取りやすいためです。この教員グループが中心となって、10年ほど前から毎年、合同日本語キャンプも開催しています。それに対し、北地域では、それぞれの街に1人ずつ程度で、あまり交流もありません。また、日本語を教えている学校数自体に差はないのですが、南地域では日本語専攻コースを開設している高校が多いのに対し、北地域では専攻コースを持つのは3校のみで、あとは選択コースやクラブのみです。日本語専攻コースは大学受験を目標に各学年週5コマ以上教えていますが、選択コースでは各学年週2、3コマ程度で、3年間勉強しても簡単な挨拶ができる程度。必然的に教員の意識も違ってきます。

ウドンピッタヤヌクーン校での取り組み

 当校に専門家が常駐するようになって4年目。カウンターパートのタイ人教員も、タイ東北部北地域の中心としての自負を持つようになりました。そして、中心として恥ずかしくないよう、より具体的な環境整備に意欲を見せはじめたのです。いくら専門家の支援があるとはいえ、当人のやる気に勝るエネルギーはありません。こうしてあっという間に劇的な変化が起こりました。その一例をご紹介しましょう。

日本すきすきコーナーの写真
日本すきすきコーナー

①日本すきスキコーナー
 国際交流基金からの寄贈図書など、日本語や日本に関する書籍類は、職員室の一隅に大切に保管されていました。教室には鍵のないオープンな本棚がありましたが、日本語クラス専用の教室ではなく、他教科の授業も行われるため、管理が難しく、傷みや紛失を恐れたカウンターパートのタイ人教員が本棚にしまいこんでおり、当人さえどんな本が何冊あるのか分からない状態でした。そこで、鍵のかかるガラス扉の本棚を教室の後ろの空きスペースに設置しました。この本棚に教師向けの書籍や教材を除くすべてを収納して、生徒に貸し出しできるように整えました。

自学自習コーナーの写真
自学自習コーナー

②自学自習コーナー
 階段の踊り場を利用したスペース。生徒が宿題などをする場所にしようと、カウンターパートが自腹を切って整備しました。この本棚には今年度、日本語教育専門家が辞書類を整備する予定です。1冊何百バーツもする辞書は高校生には買うことができません。教科書にないことばに出会ったとき、辞書がなければ、先生に聞く以外の方法がないのです。これでは興味もうせてしまいます。勉強したい生徒がいつでも勉強できるように自学自習コーナーを充実させていくつもりです。

③日本語発表会
 卒業を控えた高校3年生が日本語でスピーチをします。日本語があまり得意ではない学生にとっても日本語を勉強したこの3年間がよい思い出になるように、と始められました。初めはいやいやだった生徒たちも、最終的には一生懸命練習していました。近隣県在住の日本人にも審査員をお願いして、雰囲気作りに努めました。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
本校は国立の6年制中等学校である。1998年に選択科目として開講、現在は専門科目として開講されている。ジュニア専門家は日本語クラスをタイ人教師と協力して運営している。それ以外の業務として(1)タイ東北部の日本語教育実施中等教育機関への学校訪問および情報収集、(2)同地域のタイ人日本語教員に対する研修、(3)同地域、隣国ラオス間のネットワーク構築への協力、などがある。
ロ.派遣先機関名称 ウドンピッタヤヌクーン校
Udonpittayanukoon School
ハ.所在地 77 Srisuk. Rd., A. Muang, Udonthani 41000 Thailand
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
外国語部
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1998年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2006年
(ロ)コース種別
専門科目(週5コマ)、クラブ活動(週1コマ)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤2名(うち邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   高1:51名、高2:48名、高3:45名
(2) 学習の主な動機 日本のポップカルチャーへの興味
(3) 卒業後の主な進路 大学進学
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験3級受験可能
(5) 日本への留学人数 ほとんどなし

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