世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 必要な時に必要とされる専門家に

ユパラート・ウィッタヤライ校/北部地域
高塚 直子

 サワディーチャーオ。(チェンマイ弁で「こんにちは」です。)先月、タイのチェンマイに日本語専門家として赴任しました高塚直子と申します。この一カ月で感じたチェンマイの第一印象は、チェンマイ弁の音がかわいくてのんびりしているということです。そして、その言葉のようにチェンマイの人々もとても穏やかで優しく、チェンマイで日本語教育に関わることができることを嬉しく思います。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、私の仕事の内容と最近のタイの中等教育における日本語教育の動きについてお話しします。

1.私がデスクを置くユパラートウィッタヤライ校

 ユパラート・ウィッタヤライ校は、今年で創立105年を迎える伝統校であり、チェンマイ県公立中等教育機関の中心校です。日本語専門家(旧ジュニア専門家)の派遣は、今年で7年目を迎えました。同僚のカウンターパートの3人のタイ人の先生方とはとてもスムーズに日本語でコミュニケーションが取れ、親切にしてもらっています。日本語教育関連の図書や教材の所蔵に関しても、ユパラート所属のものだけではなく、代々の専門家から受け継いだ国際交流基金所属のものや中等教育日本語教師会所属の図書もあり、充実した内容になってきていると思います。日本語教育のリソースセンターとしても近隣の日本語教育機関に大きく貢献している学校です。

2.専門家としての業務内容

 私の業務内容は大まかに分けて以下のようになります。

  1. 1.現地タイ人日本語教員のための教師研修の実施(隔週の金曜日と土曜日)
  2. 2.派遣先であるユパラートウィッタヤライ校での日本語プログラムの支援
  3. 3.北部タイ中学・高校日本語コンテスト(次回の第7回目のコンテストは2011年2月を予定。)など、タイ北部における日本語に関するイベントの実施や支援活動
  4. 4.北部タイ8県(チェンマイ県、チェンライ県、メーホンソン県、ランプーン県、ランパーン県、パヤオ県、プレー県、ナーン県)の中等教育機関への日本語巡回指導
  5. 5.北部タイ中等教育機関の日本語教育とタイ国教育システムに関する情報収集
  6. 6.北部タイ日本語教育機関のネットワーク構築と強化支援
    実は明日からがユパラート校の新学期で、その他の業務もまさにこれから始まるところです。私の方が生徒達よりドキドキしているかもしれませんが、精一杯頑張っていきたいと思います。

3.最近のタイの教育システムと中等教育における日本語教育の動き

 今年度(タイの仏歴で2553年度)から、全国のタイの中等教育機関500校において、世界の国際化に対応できる国際人を育てるという趣旨から「World Class School カリキュラム」が試験的に実施されます。このカリキュラムの内容は基本的には9年前に作られたものと同じだそうですが、以下の教科が新しく設けられます。

  • Theory of knowledge(情報の得方、知識の使い方)
  • Extended Essay(テーマ研究)
  • Global Education(環境、地球問題の学習)
  • Creativity-Action-Service(アイディア実践活用)

ひらがなの書き方の指導の写真
ひらがなの書き方の指導
(高校1年生の日本語選択のクラス)

このカリキュラムでは国際化に対応できるカリキュラム展開が求められており、その詳細は各校に委ねられています。私の赴任先のユパラート校もこのカリキュラムの先行試行に明日から(!!)参加します。これに伴うユパラート校での時間割の変更点を以下に示します。

  1. 1)高校1年生から3年生までの理数系クラスにおいて、週2時間の第二外国語の選択科目が増設される。日本語、中国語、フランス語の中から選ぶことができる。
  2. 2)上記の「World Class Schoolカリキュラム」の新教科導入により、高校1年生から3年生までの英語と第二外国語専門クラスにおいて、第二外国語の時間が週8時間から週6時間に減少する。
  3. 3)どの年に作られたカリキュラムを使用するのかは学年によって異なります。
  • 中学3年、高校3年 仏歴2544年(2001年)カリキュラムで運用
  • 中学2年、高校2年 仏歴2551年(2008年)カリキュラム(昨年度から試行中)で運用
  • 中学1年、高校1年 仏歴2553年(2010年)カリキュラム(World Class School カリキュラム)で運用

ひらがなの発音の指導の写真
ひらがなの発音の指導
(高校1年生の日本語選択のクラス)

上記1)と2)に見られるように、例えばユパラート校では選択科目としての日本語の時間が増えるのと、第二外国語専門クラスの日本語の時間が減ることで、現場の日本語教師にはより柔軟な対応が求められることになります。このカリキュラムの試行状況については、また次回のレポートでお話できればと思います。

 先月、バンコクに着いたばかりの時、基金の現地事務所の先生の言葉がとても印象的でした。「この仕事はいろいろなことをしなくちゃいけないんだけど、最終的にね、現地の先生が相談したい、助けて欲しいと思っている時に相談されるような専門家になれれば大成功だからね!頑張ってね!」  一つ一つの出会いを大切にしながら、一生懸命仕事をしていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ユパラート・ウィッタヤライ校
Yupparaj Wittayalai School
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関はチェンマイ県の伝統ある有名校で、タイ北部における中等教育日本語センターとしての役割が期待されている学校である。日本語コースは今年度で7年目で、日本語専門家(旧ジュニア専門家)派遣も7年目に入る。日本語専門家はタイ人日本語教員のための教師研修会運営や学校訪問、巡回指導、教員間のネットワーク形成支援といた地域全体に対する支援と、派遣機関に対する日本語教育全般における支援を行う。
所在地 238 Praplokkloa Rd,. T.Sripoon, A.Muang, CHIANGMAI 50200
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
第二外国語グループ
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2004年
国際交流基金からの派遣開始年 2004年
コース種別
選択必修 高校 1,2,3年  選択 中学2年 高校1年
現地教授スタッフ
常勤4名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   選択必修 138名
選択 203名
学習の主な動機 日本の芸能人やマンガへの興味など。
卒業後の主な進路 大学進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
初級終了を予定
日本への留学人数 1名

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