世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「さくら」でほかの機関の先生方も巻き込んで自分たちのネットワークを作りましょう

国際交流基金バンコク日本文化センター
三浦多佳史 渋谷実希 松井玲子

ウボンラチャタニーでの研修会の写真
ウボンラチャタニーでの研修会

 午前中は国際交流基金バンコク日本文化センター日本語専門家の日本語による教授法の研修、午後はJTAT(タイ国日本語日本文化教師協会)所属タイ人講師のタイ語による日本語学習法の研修。これが土曜と日曜の二日間続く。場所はタイ北部チェンマイの大規模高校の教室、参加者はチェンマイを中心に周辺の地域から27名のタイ人と15名の日本人日本語教師、多くは中等教育で日本語を教えている人たちだが、一部大学や民間日本語学校の先生たちもいる。

 日本人専門家の研修は「話すことを中心とした教授法」について。教える上でのさまざまなテクニックやアイデアが紹介される。参加者はみんな真剣だ。講義は日本語で行われるが参加者は日本人とタイ人が混ざったグループを作り、それぞれに助け合いながら研修を進めていく。

 午後のタイ人講師による研修は「聴解学習法」に関するものだった。いろいろな教材が紹介され、さまざまなタイプの問題に全員で取り組んでいく。講義はすべてタイ語で行われたが、熱心に参加している日本人参加者も少なくない。

 夜は市内のレストランで懇親会が開かれた。同じ地域で働いているといってもこれだけたくさんの日本語の先生が一度に集まる機会はなかなかない。あちらこちらで、話に花が咲く。チェンマイ料理もなかなかおいしい。ビールも進む進む。食事のあとでカラオケに流れていく人たちも、、、。

グループワークの様子の写真
グループワークの様子(チェンマイ)

 こういった研修会の目的は二つあると思う。ひとつは文字どおりの研修。お勉強だ。そしてもうひとつ大切なのが、個人的なネットワークの形成であると思う。日本人専門家との研修でタイ人と日本人の入り混じったグループに分かれて話す。午後の時間では日本人の参加者が難しいタイ語を同じグループのタイ人参加者に尋ねる。コーヒーブレークの時間や研修後の懇親会ではいろんな話に花を咲かす。個人的ネットワーク形成のプロセスである。

 こうした個人的つながりのネットワークはいろんな学会や教師会などの大きな組織よりも、さまざまな場面で大きな力を発揮することがある。明日の授業の準備で困ったとき、学生の質問に答えられないとき、学校内の人間関係に悩んでいるとき、いったい誰に相談するだろう。わたしだったら友だちだ。それも悩みを共有できる友だちだ。できれば同じ日本語教師がいいかもしれない。

 タイの日本語教師は2006年の国際交流基金日本語教育機関調査で約1600人、そのうちのかなりの人数が地方に在住していると思われる。タイの地方では、日本語の先生は学校の中で自分一人、市内でも一人、県内でも少ししかいないという人は珍しくない。私たちがはじめた「さくら中核ネットワーク地方研修会」はそんな先生方のそばにできるだけたくさん、いろんな人といっしょに、出かけていこうという試みだ。国際交流基金所属のわれわれだけでなく、同じ「さくら中核メンバー」であるほかの4機関の先生方にも声をかけ、快く賛同していただいた。この研修会にできるだけたくさんの地方在住の先生方に参加していただき、一人でも多くの個人的ネットワークが形成されるのを期待している。

「さくら中核ネットワーク地方在住の高校日本語教師を育てるプロジェクト」
(通称:さくら中核ネットワーク地方研修会)

 2010年1月から開始。タイ国JFさくらネットワーク中核メンバーである国際交流基金バンコク日本文化センター、チュラロンコン大学、コンケン大学、タマサート大学、JTAT(タイ国日本語日本文化教師協会)の5機関共催事業。バンコク首都圏以外のタイの地方を6つの地域にわけ、それぞれの地域で2010年は1年間に2回ずつ、合計12回の2日間にわたる研修会を実施するものである。各機関はこの研修会に日本語、日本語教育の専門家を講師として派遣する。国際交流基金バンコク日本文化センター派遣の専門家は、このプロジェクトの企画立案、運営、講師の派遣など、多岐にわたって活動している。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
タイ国全土及び近隣諸国(ラオス、カンボジア、ミャンマー)の日本語教師・学習者支援のためさまざまな事業を行っている。教師支援としては各種の研修(集中、水曜、土曜、新規養成)や半日または1日のセミナーを企画・実施している。学習者支援としては一般講座の開講、高校教科書『あきこと友だち』の副教材の制作など。また、コンサルタント業務、紀要やニューズレターの発行を通して情報センターとしての機能を果たしている。
所在地 Serm Mit Tower, 10F, 159 Sukhumvit 21 (Asoke Road) Bangkok 10110, Thailand Tel:66 (2) 260-8560~64   Fax:66 (2) 260-8565
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:2名、専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1994年

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